[Japan In-depthニコ生公式放送リポート]<徹底討論!絶望のテレビ報道>どうなる?未来のメディア~
Japan In-Depth編集部|Japan In-depthチャンネル 2014年7月23日(土)放送
編集長安倍宏行が上梓した『絶望のテレビ報道』を取り上げた。
フジテレビ時代には書けなかったテレビ報道の真実を語り、これからのメディアの行く末を考える内容だ。今回は社会保障経済研究所代表の石川和男氏と議論した。
まず安倍が、テレビ局の報道力が落ちている、と指摘。
原因の一つに、ニュースがVTR中心の構成になり、記者の出番が少なくなっているということがあるという。昔のテレビ記者は現場からリポートをすることが多かったが、現在は民放では少なくなっている。
VTRを使って見せた方が視聴率が上がるため、そのような手法がメインとなり、結果、記者の取材力、レポート力が下がってしまっている。視聴率を上げることが目的化され、記者の取材力を向上させることは二の次となってしまっていると安倍は懸念を示した。
また、関西テレビのやらせ問題がきっかけで作られたBPO(放送倫理・番組向上機構)により、テレビ番組は絶えず監視されるようになった。結果、テレビ局は必要以上に委縮し、オリジナリティやクリエイティビティが失われ、どのテレビ局も同じような番組を作るようになってしまったことも、テレビの魅力が薄れている原因の一つであると指摘した。
また、インターネットの台頭で、テレビのニュースの視聴率はどんどん下がっている。インターネットはとにかく情報の伝達が速い。ツイッター等のSNSでどんどん最新のニュースが流れてくる時代だ。テレビのニュース番組は、インターネットで見たニュースを繰り返し放送するだけで、視聴者にとっては新鮮味がない。
ネットニュースの最新事情について、安倍はバイラルメディアと呼ばれるインパクトのある映像を集めたサイトや、キュレーションアプリと呼ばれる、ニュースを様々なところからとってきてまとめたアプリの乱立を指摘。これらは低コストで開設することができる。つまり、誰でも情報の発信者になれるが、結局はつぶしあいになるのでは、と予測した。
「誰でもソーシャルメディアを使って情報を発信できる時代に、これから報道機関はどうなっていくのか」という石川氏の問いに対して、「何も変わっていないのが日本の問題だ」と安倍は指摘。アメリカではテレビや新聞の人気記者が独立し、データジャーナリズムなどを駆使した新たな自分のメディアを立ち上げている。日本では、あまりその動きはみられていない。
フジテレビを退職した安倍が始めたサイト「Japan In-Depth」の知名度について番組内でアンケートを取ったところ、なんと6割の人がサイトを見たことがないという結果に。サイトとニコ生は連動しているので、是非どちらも見てほしい。
「テレビの生きる道は速報ではない」と安倍は断言する。ニュースの内容を掘り下げ、独自の分析を加えていくことが、これからのテレビの生きる道なのではないだろうか。『絶望のテレビ報道』はテレビを一方的に批判するものではない。テレビの未来に提言を与える前向きな内容となっており、テレビ局側の反応を見てみたい。
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