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スポーツ  投稿日:2014/10/2

[瀬尾温知]【一発勝負のワイルドカードゲーム】~29年ぶりプレーオフ進むロイヤルズ・青木の活躍に期待~


瀬尾温知(スポーツライター)

執筆記事プロフィール

メジャーリーグは162試合のレギュラーシーズンが終了し、ワールドチャンピオンを目指しての10月の戦い・ポストシーズンに突入した。

現地9月30日、地区優勝以外の勝率上位2チームによる一発勝負のワイルドカードゲーム、ア・リーグのロイヤルズ対アスレティックスの試合でポストシーズンは幕を開けた。

プレーボールの1球目、ロイヤルズの先発シールズが151キロの速球を投げると、ロイヤルズの地元・カンザスシティーのコーフマンスタジアム全体から喜びの声が沸き上がった。ロイヤルズにとっては、ワールドシリーズを制覇した1985年以来、29年ぶりのポストシーズン。一戦に重みがある痺れる戦いに、地元ファンは待ち焦がれていた。私もこの一戦に期待をかけていた。

期待の的は、ポストシーズンに勝ち進んだ唯一の日本人選手、青木だった。青木は9月の打率3割7分9厘と調子を上げ、「まずはこの1試合にすべてをかけたい」と意気込み、自身初めてのポストシーズンに乗り込んできた。

ロイヤルズが3対2とリードして迎えた6回、無死一二塁となったところで、ロイヤルズのヨースト監督はシールズを諦め、継投策に出た。シールズの球数は88球だったが、負けたら終わりの一発勝負なので、早めの継投は納得できるものだった。しかし、2人目に送り込んだ投手は、レギュラーシーズンでは先発で投げていたベンチュラだった。ドミニカ共和国出身で2年目の右腕は、いきなりアスレティックスの4番打者に逆転3ランを浴び、さらにヒットと暴投でピンチを招いて降板。3人目の投手も打たれて、この回5失点して3対7とリードを許してしまった。

ロイヤルズは「スモールベースボール」と呼ばれる攻撃が特徴で、出塁した走者を犠打や進塁打で進めるなど、機動力や小技を絡めて着実に得点に結びつける。その得点を投手力で守り抜いて勝ち上がってきた。そのチームが4点差をつけられて、試合は終盤に入っていた。

8回、ロイヤルズは足を使った攻撃で相手の投手に重圧をかけ、4盗塁を絡めて効果的なタイムリーヒットを2本打ち、3点を奪って1点差に迫った。そして9回、1死二塁で青木に打席が回った。

ヒットが出れば、代走で出た二塁走者のダイソンの足ならばホームにかえってこられる。4球目、ダイソンがスタートを切った。ヘッドスライディングして間一髪セーフ。勇気のいる場面で単独スチールを三塁に決めたダイソンは、ベース上でダンスを披露して、チームと観衆を鼓舞した。スタジアムが一体となって打席に立つ選手に声援を送った。その直後の球を、青木がライトへ犠牲フライを打ち、土壇場で同点。試合後、「本当にすごい試合だった。こういう雰囲気で野球をやりたかった」と、青木は感激を言葉にした。

試合は延長に入り、ロイヤルズは12回表に1点を勝ち越されたが、その裏、2点を奪って9対8で逆転サヨナラ勝ち。劇的な勝利で地区シリーズ進出を決めた。

2012年から導入された、負けたら終わりのワイルドカードゲームは、1試合で勝敗を決するスリルが魅力だ。そのスリルを体感した青木は、メジャーリーグの醍醐味を味わったことだろう。

ロイヤルズの地区シリーズの相手は、西部地区優勝のエンジェルス。この先の戦いでも、青木の活躍に期待したい。

 

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