.社会  投稿日:2014/10/20

[大平雅美]【 「ふるさと名物」、百花繚乱 】〜政府・自治体は売るための工夫と後押しを〜

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大平雅美(アナウンサー/大正大学客員准教授)

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景気回復が遅れる地方に対し、安倍政権は地方創生に重点をおいている。先日の所信表明演説で、地方視察を重ねてきた安部首相は、具体的な町おこしの成功例を挙げた。例えば鳥取、大山の地ビールや島根、海土町のサザエカレーなどを紹介し、「ふるさと名物」を全国区の人気商品へと押し上げる支援を強化するとしている。さらに地域ならではの資源を生かした、新たな「ふるさと名物」の商品化、販路拡大を後押しするとした。

10月初旬、鳥取県で人気の「ピンクカレー」が首都圏でお披露目となった。鳥取県産ビーツをふんだんに使ったピンク色のカレーで、お菓子のような色鮮やかさに目を奪われる。このビーツは「飲む輸血」と言われるほど、鉄分やカルシウム、マグネシウムなど栄養分が豊富でボルシチには欠かせない食材として知られるが、日本ではあまり食卓に上ることが少ない。主な産地は長野県や滋賀県などだが、鳥取県も栽培に適していることから県の特産品として売り出そうとしている。そのビーツを使ったピンクカレー、味はカレー風味で美味しいが、見た目と味覚の違いから食べると少し脳が混乱する意外性がある。鳥取県では珍しさも手伝って人気の味になっているらしい。

このピンクカレー、先頃新橋にオープンした鳥取県と岡山県共同アンテナショップ、「とっとり・おかやま新橋館」で購入できる。(鳥取名物の「梨」と岡山名物の「桃」で“ももてなし”がコンセプト)店内を覗くと、さすがに総務省家計調査「カレールウ」の世帯購入量で何度も全国1位になっただけあり、ご当地カレーが多種販売されている。

梨を使ったカレーもある。合同ショップの岡山には白桃カレー、ニューピオーネカレー(岡山市瀬戸町の葡萄(ピオーネ)を使ったカレー)も存在する。首相も所信表明でサザエカレーを例に出したくらいだから、ご当地カレーの現状はどうなのかと調べたら、ピンクカレーはすでに山形県の「さくらんぼカレー」がネットショップで人気だった。もはや「ふるさと名物」のカレーは、都道府県ごとに何十種類も存在する超激戦食品だったのである。

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地方創生に向けて「ふるさと名物」の商品化や販路拡大の後押し等を表明している政府。すでに銀座や新橋には地方のアンテナショップが溢れんばかり。日本橋の三重テラスなどはおしゃれスポットとして休日も賑わっているが、地方がさらに元気になるためには「ふるさと名物」の商品化だけではなく別の一手も必要なのではないか。

例えば、今回の鳥取県・岡山県のように共通項が多い県が合同でショップを出す方法。新橋には、香川県と愛媛県が合同で開いたアンテナショップ「せとうち旬彩館」もある。2館共通の福引抽選会も開催していたが「3本の矢」ならぬ「4本の矢」で勝負といったところか。消費者にとっては手早くたくさんの商品に触れられる良さがあり、ショップ側は高い賃料や諸経費が折半できるメリットがある。しかしアンテナショップは一過性の客が多いため売上げ面を含め課題が多い。

私の故郷香川県で言えば、最近「希少糖(注1)」という商品に注目が集まっている。だが研究成果や成長戦略はすごいが、残念なことに商品化したセールスがうまくいっているようには見えない。ぜひアンテナショップでテストマーケティングをして商品パッケージやサイズ、価格の変更をしてほしいと思う。消費者の目は厳しい。「良いものだから売れる」時代ではない。「ふるさと名物」がこんなに町に溢れている今、政府や地方自治体による商品化の後押しも必要だが、サービス力や営業力、PR力など「伝える技」を磨き、リピーターファンを作る知恵が今、求められている。

 

(注1)希少糖

自然界に微量にしか存在しない単糖(糖の最小単位)で、50種類以上ある。香川における産学官連携の成果として、平成21年に、D-プシコースなどの希少糖を約15%(残りの85%はブドウ糖と果糖)を含むシロップが商品化された。その後このシロップを活用した商品の開発が進められ、ケーキやドーナツ、ゼリーなどのスイーツ、レストランの料理やうどんのつゆに使用する試みも始まっている。平成25年7月には、シロップの製造工場が宇多津町で竣工し、全国への供給が可能となった。

「かがわ希少糖プロジェクト」 http://www.pref.kagawa.lg.jp/kisyoto/

 

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