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.経済  投稿日:2014/9/16

[神津多可思]【地方創生、必要なのは多様性】

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神津多可思(リコー経済社会研究所 主席研究員)

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第2次安倍改造内閣がスタートした。その政策の目玉の1つは「地方創生」だ。「地方創生大臣」が設けられ、「まち・ひと・しごと創生本部」も立ち上がった。経済発展は全国に行き渡ってこそ意味があるのだから、高齢化・グローバル化の中でさまざまな問題を抱える地方を重視するのは当然だ。

どのような地方になれば「地方創生」が成功したことになるのか、そのイメージが明確なわけではない。かつて、地方も東京のようにするというイメージで財政資金がばらまかれたこともあった。しかしうまく行かなかった。本質的に多様性あってこその地方だからミニ東京をつくろうとするのはナンセンスである。持続性、自律性のある地方の活性化とはどういうことか、ちゃんと整理をしないとまた掛け声倒れに終わりかねない。

この点について、「グローバル対ローカル」という切り口の整理がある。ごくごく簡単に言えば、グローバル化の中での生き残りかける企業の活動様式と、ローカルに人と人の繋がりの中で継承されているビジネスのあり方の対比ということだろうか。この考え方に立てば、地方創生においては当然のことながら後者が重要であり、前者とは一線を画した企業の経営環境をローカルに実現して行くという方向だろう。

一方、「マネー資本主義対里山資本主義」という切り口もある。これは、市場メカニズムの論理が貫徹するビジネスと、金銭では測れない価値を重視する生活環境といった対比になろうか。資本主義という言葉を使ってはいるが、後者はむしろ共同体の論理の復活と言ったほうがいいかもしれない。そうなると、地方創生は経済活動の市場化の行き過ぎを是正し、環境負荷を軽減し、自然の中で人間らしさを回復していくというイメージになる。

最近よく話題にされるこの2つの切り口は、似ているようだがまったく同じ軸ではない。したがって、両方合わせ考えると、2×2の4つの座標がみえてくる。その内、「グローバル+マネー資本主義」については、あくなき収益最大化、効率改善が目指され、生き馬の目を抜くグリーディーな競争社会といったイメージがすぐに湧くだろう。これは「地方創生」にはあまりなじまない。

「ローカル+マネー資本主義」の世界では、利益をあげられる企業がなお重要だ。グローバルに競争はしないが、モノではないサービスに軸足を置いたビジネスが展開される。そのようなビジネスが維持されるためには、一定の集約が不可欠だ。人口減少社会ではなおさらだ。むろん住民が居住する地域もコンパクトにならなければならない。ここでの地方創生とは、きれいに言えば「スマート化」、しかし本質的には住民によるローカルの取捨選択に繋がる話だ。

一方、「ローカル+里山資本主義」という世界もある。ここでは、地域内の助け合いが大事になる。法人企業も残るだろうが、基本的にはNPOのような活動となって、赤字が累積しても、それを地域の出資者達の負担で解消し持続性を担保していくような世界ではないか。「グローバル+マネー資本主義」の対極にある話だが、日本のバブル崩壊やリーマン・ショックなどを経験すると、こうした部分も大事なのだと実感する。

もう一つ、残りの「グローバル+里山資本主義」というモデルについては、今のところはっきりとした像が結べない。これまでのグローバル化はマネー資本主義に牽引されてきたのでそれも無理ない。しかし、温暖化、環境破壊などが地球規模で深刻化する中で、次第にこのモデルも具体性を帯びていくだろう。

ここで考えた4つの座標は、決して排他的なものではない。これらを対立軸にして、どれを選ぶかというような議論は生産的とは思えない。多様性ということが色々な面で言われているが、経済のあり方についても、多様性がないと耐性(レジリエンス)は保てない。「地方創生」を進める上では、ローカルの実情に合致した多様性をぜひ模索してほしいものだ。

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