[山田厚俊]【所信表明はグルメ漫遊紀行?】~不透明な景気対策、アベノミクスに黄信号~
山田厚俊(ジャーナリスト)
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9月29日に召集された臨時国会。午後の衆院本会議で行われた安倍晋三首相の所信表明演説を聴きながら、ある野党議員は周りの同僚議員とこう感想を口にした。
「福島は、今、実りの秋を迎えています。先日訪れた広野町では、復興を成し遂げた水田に黄金色の稲穂が輝いています」「今が旬のサンマは、ベトナムではトマト煮が大人気。北海道の根室から輸出されています」「鳥取・大山の水の恵みを活かした地ビールは、全国にリピーターを広げ、売り上げを伸ばしています」「島のさざえカレーを年間2万食も売れる商品へと変えたのは、島にやってきた若者たちです」
いやはや、随所に盛り込まれた全国各地のふるさと紀行。安倍首相は、この臨時国会は「地方創生、女性の活躍が2本柱だ。国民の皆さんに分かりやすい説明を心掛け、アピールしていきたい」と述べているが、野党議員がボヤくまでもなく、ものの見事に情緒に訴えるだけの中身のない演説といえるだろう。
別の野党議員はこう怒りを露わに語る。
「アベノミクスが万策尽き、新たに地方と女性をキーワードに使ってきたが、またしても中身がない。今さら税金を大量に使って地方にバラ撒いても仕方ない。それより、借金を減らす方策を本気で考えないと、本当にこの国は潰れるよ」
年末には、消費税率を現行の8%から10%に引き上げるかどうかの判断を下す。それまでに下降ラインを辿っている現在の景気をどうするのか。色褪せたアベノミクスをどう立て直すのかが、臨時国会の焦点といえる。しかし、その安倍内閣の生命線ともいえる景気対策が不透明なのだ。
虚飾の言葉だけで走り続けた感のある安倍政権。気分次第の株価を支えるのは、もはやイメージの世界ではない。本当の意味での対策が求められている。
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