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.社会  投稿日:2014/11/13

[福嶋浩彦]【人口減少社会・右肩上がりの発想止めよ】~「地方創生」の鍵は自治と創意工夫にあり~


福嶋浩彦

中央学院大学社会 システム研究所教授。東京財団上席研究員。元消費者庁長官。前千葉県我孫子市市長)|プロフィール

 

各自治体の人口減少社会へ向けた政策を見ていると、ほとんどが「人口減少をいかに食い止めるか」という問題意識になっている。しかし、少なくともこれから30年~40年は、合計特殊出生率がコンマいくつ動いたとしても、人口が全体として減るのは動かない。すでに子どもを産む世代の人口が既定のものになっているからだ。

  社会の仕組みと頭の中を変える

もちろん、自由な選択を前提にして出生率を上げる努力は重要だ(かつてのような社会的圧力によってではなくて―)。安心して子どもを産むことができ、子育ての環境が整っていて、子どもが豊かに成長できる社会は、出生率の数字を上げるためというより市民一人一人の幸せのために大事だ。そういう社会を次の世代に引き継いでいきたいと思う。

ただ、日本全体の人口が減る以上、人口減の阻止ではなく、人口減を生かして社会の質を上げるという発想への切り替えが必要だろう。質を上げるには、右肩上がりを前提とした社会の仕組みと私たちの頭の中を、根本から変えねばならない。従来の発想のまま人口減阻止だけ言って、右肩上がりを前提とした社会の仕組みのまま人口が減ると、当然、地域は劣化する。そうすると人口の流出が増え、一層、人口は減るだろう。

また、地方都市に行くと、私たちのまちは宅地開発がまだ進行中で、人口もしばらくは伸びる予定だ、という話を時々聞く。人口流入が東京からの回帰なら素晴らしい。しかし多くは、周りの町村から人口を吸い取っている。回りの農村地域や山間部をさらに衰退させ、その都市だけ人口が増えても、結局いつかはエリア全体が衰退し、自分で自分の首を絞めることになるのではないか。

都市だけでは生きていけない。水や食料を供給してくれる田舎と都市の間に、いかに豊かな新しい関係を築くかが地方再生の重要なテーマだ。これを基礎にしないと、東京一極集中の是正も真に有効なものにならないだろう。

  地域のやる気を国が判定?

そういう中で、第2次安倍内閣が掲げる「地方創生」が動き始めようとしている。新たに地方が柔軟に使える交付金の検討も進んでいるようだ。

従来と同様、予算のばらまきに終わるのではという懸念に対し、政府は「やる気のあるところだけを支援する」「創意工夫した地方の提案を競い合ってもらう」と強調している。しかし、地方の「やる気」や「創意工夫」の優劣を国が判定するという発想自体が、従来と何も変わっていない。

また、国に認めてもらい交付金を得ようと思って行う創意工夫が、本当に中身のあるものになるのだろうか。お金はないが何としても自分たちの力でこれをやりたい、と思うところにこそ、本物の創意工夫が生まれるはずだ。

  お金やエネルギーを地域で回す

地域の再生は、地域にある資源や人材をもう一度徹底して活かし、お金やエネルギーを地域の中で循環させる仕組みをどう作るかがカギになると考える。

現在、太陽光、風力、小水力、バイオマスなど、地域の資源を生かした発電や熱供給でエネルギーの「地産地消」を目指す動きが全国の自治体に広がっている。地方創生の目玉の一つとして期待されている。

ただし、中央の大資本が入ってきて大規模発電などを行うだけでは、多少の雇用は生まれても利益は中央に流れていってしまう。お金が地域で循環しない従来型の構造と同じだ。

長野県飯田市は「住民主導による再生可能エネルギー事業を支援する条例」を制定し、地元金融機関がこうした市民事業に融資しやすい環境を整えている。これまで「おひさま進歩エネルギー株式会社」が中核になり、市民出資による市民共同発電所(現在307か所)の設置を進めてきたし、さらに、地域住民が中心になった小水力発電の取り組みも進んでいる。

こうした取り組みは、地域の必要性に基づいた地域の知恵から生まれる。つまり、しっかりとした自治があってこそ生まれてくる。決して国の号令やお金につられて生まれてくるものではない。このことを肝に銘じておく必要があるだろう。

 

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