[瀬尾温知]【アギーレジャパン、問われる真価】~操れるか、若手とベテランのバランス~
瀬尾温知(スポーツライター)
「瀬尾温知のMais um・マイズゥン」(ポルトガル語でOne moreという意味)
「入れ込む」という語から何を想像するだろう。競馬でパドックやレース前に馬が落ち着かず興奮した状態だろうか。それともアイドルに夢中になる姿であろうか。いずれにせよ我を忘れている有様になる。先日、ここまで入れ込むか、という様態を目にした。お馬さんの方ではなく、アイドルに絶叫する制服を着た女子中高生の群れだった。
After Romeo(アフター・ロミオ)という美男子5人組のボーイズバンドの日本デビューシングル“Juliet”リリース記念イベントが、東京の池袋サンシャインシティ噴水広場で開催された。この広場は、新人アイドルの登竜門のような存在らしく、数多くのイベントが行われている場所になる。拙者は、雑誌「in CELEB(イン・セレブ)」の取材に同行した。セレブの最新トレンド、最旬ゴシップ&ファッションを題材に隔月発行している雑誌である。
その雑誌の代理編集長を務める渡邉さんに「夢中になったタレントっていらっしゃいましたか」と聞かれ、「哀しいかな、いないです」と答えた。タレントの追っかけをしたことはないし、コンサートに通い詰めたこともない。タレントだけでなく、野球、サッカーでも贔屓にするチームがない。哀しいかななどと言って夢中になる対象がないことを悲観してみせたが、実のところ哀しくはない。
贔屓にするかしないかに関わらず日本人に生まれた以上、選択の有無なく我々の前に存在するのは日本代表である。サッカーの日本代表が今年最後の強化試合でオーストラリアに2対1で勝利した。アギーレ監督が就任後、日本は6戦して3勝2敗1引き分け。結果よりも注視すべきは、指揮を執ってから約3か月の現段階では、どのようなチームを編成していくのかになる。
サッカー界は常に念頭にワールドカップがある。次の2018年大会を見据えて若手中心にして鍛え上げるのか、それともベテラン選手を含めた現時点の最強メンバーを揃えて目の前の戦いに臨むのか。アギーレ監督はホンジュラス戦とオーストラリア戦に経験豊富な遠藤、長谷部、今野らを復帰させた。保身を図っての選考だろうが、非難はしない。監督業は結果を残しながらでないと務まらないからである。悠長に構えておらず、任務に危機感を持った監督であることは明らかになった。
監督を代えて急激にチームが強くなることはない。急激でなく4年かけたって飛躍することはないだろう。スーパースターが2、3人出現すれば話は別であるが。ブラジルだって、ロナウド、リバウド、カカ、ロナウジーニョ、ロベルト・カルロスといった実力派スターが揃った時代は強烈だったが、ネイマールと肩を並べる選手がいない現在は心もとない。話がブラジルへ逸れてしまった。アギーレに戻そう。
彼に求めるのは、ワールドカップ・ブラジル大会で日本に欠けていた「戦う集団」という意識を徹底して植えつけてもらうことである。自分達のサッカーなどと理想に縛られるのでなく、対面する相手と戦う意識を身につけさせることが、強面のアギーレなら出来るのではないかと期待している。
サンシャインシティ噴水広場でスターを目指す5人組ボーイズバンドのアフター・ロミオは、歌も踊りもパフォーマンスも優れていた。そして何より一生懸命で、イベントでもインタビューでも好感が持てた。思いがけず良いものに遭遇した喜びからか、跳び跳ねて金切り声をあげる女子中高生の輪の外側で、曲に合わせ足でリズムをとっていた。若手とベテラン。日本代表も、両者が融合することは悪いことではない。先を見据えながら、今も大事にする。そのバランスを巧みに操ることができるのか、アギーレの真価はそこに問われる。
若い女子が作る輪の外で密かに加勢するのか、輪の中に混じって入れ込むのか、ベテラン男子の一人として行動はわきまえているつもりである。さもないと、体力を消耗してレースで成績を出せなくなってしまう。俺は馬か!
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