[イ・スミン]【韓国が日本総選挙に注目する理由】~アベノミクス継続かどうかが問題~
李受玟(イ・スミン)(韓国大手経済誌記者)
先月、安倍晋三首相が国内総生産(GDP)の2四半期連続のマイナス成長という予想外の結果を受け、直ちに、衆院解散を発表したら、韓国のマスコミはわれさきに日本の変化に注目した。その中でにも莫大な金をばらまいて経済成長をけん引するのが目標であるアベノミクスの存立がイシューだった。もちろんそれは日本の経済政策が韓国企業や経済に及ぼす影響を憂慮したからだ。
大方の韓国マスコミは、日本政府の円安政策がしばらく続くものと予想して、韓国政府も、一日も早くこれに関する対策をまとめる必要があると注文した。また、日本と経済構造が類似している韓国経済だからこそ、今後の道を整備しなければならないのではないかという声も強くなった。
このような指摘はウォール▪ストリート▪ジャーナル(WSJ)が社説で韓国のチェ・ギョンファン経済副首相が主導しているいわゆる「チョイ▪ノミックス」が低成長の沼に落ちた日本と同じミスを繰り返していると言及した後、力を得ている。
「チョイ▪ノミックス」は景気浮揚に向けするため、通貨や財政政策、潜在成長率の向上を目指した産業構造の改革を同時に推進する朴槿恵政府の経済政策だ。チョイ経済副首相の名前を取ったこの政策は、安倍総理が約13兆円の補正予算追加更正豫算を編成したように、チョイも2015年の政府予算を拡張的に計画した。低金利を推し進めるという点もお互い似ている。ただ、両国の経済状況によって消費税の問題や不動産の規制などで細かい違いはある。
しかし、この二つの国の政策が向き向かい合っている問題は同じだ。まだ自慢できる成果は上がっていないというところもだ。政府が莫大な支出を甘受してまで景気を引き上げようとしているが、民間部門の消費はなかなか回復する気配を見せていないという部分も悩みの種である。
日本は今年4月に消費税を5%から8%に増加した後、急に一般国民が体感する景気が悪くなっており、韓国は経済状況に対する消費者の心理や予想を総合的に示す「消費者心理指数」が先月1年2ヵ月ぶりに最安値を記録した状態だ。
韓国の政府や経済専門家らが今月14日の総選挙に注目する理由もここにある。もし自民党の勝利でアベノミクスがさらに大義名分を得た場合、韓国政府と企業は今より強固な円安の対策に取り組むべきだからだ。(今でも韓国政府は対日輸出をする企業に多様な支援を約束したが、現場からは役に立たないという不満が続いている。)
逆に総選挙の結果が安倍総理の政治的生命を断つなら、これも「チョイ▪ノミックス」を含めて朴大統領が支持するマクロ経済政策の全面的な変化につながろう。両国、広くは東北アジアの経済の行方を決定づける総選挙、どんな結果を出すのか期待している。
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