[Japan In-depthチャンネル ニコ生公式放送リポート]【消費税再増税先送りに警鐘】~歳出削減と増税で財政再建目指せ~
2014年12月10日放送
Japan In-depth 編集部(Aya)
Japan In-depthチャンネル選挙シリーズ第三弾は、今回の選挙の最大のテーマとも言える「消費税増税」。自民党は、消費税率を8%から10%に引き上げる時期について、2015年10月から17年4月に延期する方針を政権公約に明記した。この延期は日本の財政にどのような影響を与えるのか。法政大学准教授で、元財務官僚の小黒一正氏をゲストに迎えて、アベノミクスを振り返りながら、消費税増税について討論した。
小黒氏は先般出版した『財政危機の深層――増税・年金・赤字国債を問う』の中で、消費税増税先送りに警鐘を鳴らしている。増税を先送りすることによる懸念とは何なのか。
現在、社会保障には年間110兆円という莫大な金額がかかっている。中身を見てみると、年金に54兆円、医療に36兆円、介護に9兆円だ。日本では高齢化が年々進んでおり、社会保障額の過去の推移をみると年間3兆円近く増えている。これは消費税1%増税分超に相当する。つまり、消費税を3%上げても、3年で財源はなくなってしまう。
8%から10%に増税したところで、2年分の財源にしかならない計算だ。小黒氏によると、将来的に十分な財源を税金で賄うためには消費税を30%以上に上げなければならないという試算になるという。増税を先送りにすればするほど、その間、国の借金は増え続けるので、さらに必要な税率は増えていく。税金で賄えない部分は国が借金をして賄うしかない。それを返済しなければならないのは今の若い世代だ。小黒氏は、このような負の側面が議論されず、安倍政権が国民によい面ばかり説明しているとして懸念を示した。
社会保障を減らしていかなければ、危機に瀕している日本の財政は持ちこたえられないのは明白だ。2000年900万人だった75歳以上の人数は、人口の多い団塊の世代が75歳になる2025年には2000万人に膨れ上がる。つまり年金や医療、介護にかかるコストは2倍以上になってしまう。年金の金額を減らす、給付時期を遅らせる等の他に、限られた金額の中でサービスのクオリティを上げる工夫もしていかなければならないだろう。
介護の現状には様々な問題点がある。施設に入る順番待ちの待機児童ならぬ待機老人は52万人に上ると言われ、在宅での介護を余儀なくされている人も多い。親の介護のための介護離職者が急激に増えている。「介護離職者が増えるということは、労働人口が減ってしまうということなので、マクロ経済にも影響を与える」と小黒氏は述べた。
先進的な自治体では、ボランティア等をすることによってポイントが溜まり、自分が介護を受ける時にそのポイントを使えるなどの工夫をしているところもあるという。又、大学都市のように、「介護都市」を作ろうという計画を進めているところもある。「介護にはまだまだ改善の余地がある」と小黒氏。財源を増やすことばかりでなく、政策を工夫することも重要だと言える。
日本の財政を立て直すためにはどうすればいいのか。解決策は1.増税 2.歳出削減 3.経済成長の三つしかない。「経済成長が一番よいのは当然だが、実際は難しい。2040年代にはGDPがマイナスになるという試算もあり、成長は難しいだろう。増税、歳出削減で痛みを分かち合わなくてはいけない」と小黒氏は述べ、厳しい現実をしっかり見据えることが大切だと総括した。
(注:この記事は2014年12月10日(水)2200~2300放送のJapan In-depthチャンネルの内容を編集部が要約したものです。)
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