[安倍宏行]【自公、現状維持が精一杯】~野党健闘、巨大与党への危機感反映~
安倍宏行(Japan In-depth編集長/ジャーナリスト)「編集長の眼」
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ふたを開けてみれば、与党(自公)は現状維持だった。公示前の与党の議席数は326、つまり前から3分の2は超えていたわけで、あれだけ優勢が伝えられていたのに現状維持が精一杯だった、というわけだ。
優勢、優勢とメディアに書かれると、どうせ何も変わらないのなら選挙に行かなくたっていいや、という人とか、あまり勝たせるのもどうかと思う、と野党に一票を投じる人とかが増える傾向にある、と言われているが、今回もそうした作用が働いたのではないか。
自民党は単独で300議席超を予想するメディアもあったくらいなのに、むしろ公示前勢力から後退した事を重く見るべきだろう。又、民主伸び悩み、という見出しも踊るが、あれほど多くの有権者が民主党にはもう任せられない、と口にしていたにも関わらず、公示前を11議席増やしたのは、健闘と言っていいのではないか。共産党に至っては自公に対する批判票の受け皿となったのは明白で、3倍近く議席を増やした。つまり、世論は自公の独走に一定の歯止めをかけた、とみることが出来よう。
たしかに、「この道」しかなかった。当面、アベノミクスの推移を見守ろう、という空気は存在していたと思うし、安倍政権を全面委任しているわけでもないが、野党のどこに任せたらいいのかも今一つピンと来ない、という有権者が多かったということではないか。消極的安倍政権支持、というのが世論だと受け止めるべきだろう。
政府・与党は3分の2維持で驕ることなく、これまでできなかった歳出カットと成長戦略の為の規制緩和や投資の活性化、エネルギー戦略の明確化など、国民に痛みを伴う政策を矢継ぎ早に実行に移さねば、得たかに見える信任は容易に剥落しよう。
一方、野党は、内部分裂などを繰り返し、連携に失敗し、国民の失望を招いた責を負わねばならない。特に最大野党である民主は今後イニシアチブをとり、野党をどうまとめていくのか、真剣に考えてもらいたい。
そもそも小選挙区制は2大政党制を目指して作られたもの。中選挙区制のほうがよかった、などとぼやいても何も始まらない。今の選挙制度が続く限り、現選挙制度下で、健全な野党勢力を結集することは必要不可欠な事である。
抵抗勢力の批判に晒されない巨大与党はやがて腐敗する。政治に緊張感があってこそ、私達にとってよりよい政治が行われる可能性が高まる。国民の監視の目がこれからより重要になってくるだろう。
棄権した半数の有権者にも猛省を促したい。政治は私達一人一人が議員を選び、その結果作り上げるものだ。自分の生活を赤の他人の手に任せていいとするのは、自分とその家族に対して無責任にすぎないか。今、日本は巨額の借金を背負い、猛スピードで高齢化に突進している。膨れ上がる社会保障費に歯止めをかけるか、税収増を図るかしか、もはや道はない。現実逃避の結果、何が起こるのか。私たちの想像力の欠如はこの国の未来に、すなわち私たちの子供や孫たちの未来に暗雲を垂れ込めさせるだけだ。
注:選挙後の新勢力は以下の通り。
自291(公示前293、295とする新聞もある)、公35(公示前31)、民73(公示前62)、維41(公示前42)、共21(公示前8)。
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