[Japan In-depthチャンネル ニコ生公式放送リポート]【すべての赤ちゃんが「家庭」で育つ社会を】~子供の権利条約締結25周年の節目に~
2014年11月12日放送
Japan In-depth 編集部(Aya)
11月20日は世界こどもの日。今年は子供の権利条約から25周年の節目の年だ。子供の権利条約は、子供が家庭で育つ権利を持つ、という当たり前のことを謳っている。しかし、実際はそんな当たり前の生活ができない子供たちが日本にはたくさんいる。今回は、国際的人権団体であるヒューマンライツウォッチの日本代表 土井香苗氏を招き、養護施設や乳児院に入っている子供たちが家庭で暮らせる社会の実現について考えた。又、実際に里親として、何人もの子供を家庭で育ててきたホッブズ美香氏も出演した。
まず、里子と養子の違いについて。里子は、何らかの事情で育てられない実の親の代わりに里親に育てられる。実の親は親権を持ち続け、親であり続ける。特別養子は、幼い頃に実の親ではない人の子供となること、つまり親が変わることになる。里親にも二種類あり、一つは養育里親。ホッブズ氏のように、事情があって育てられない親の代わりに育てる里親のことをいう。もう一つは、養子縁組を前提とし、それが成立するまでの期間に里親と扱われる養子縁組里親である。
ヒューマンライツウォッチは、子供の中でも特に幼児期の育てられ方を重視している。何故なら、幼児期、特に2歳まで施設(乳児院)で育てられた赤ちゃんは、家庭で育てられた赤ちゃんに比べて、脳の発達に異常をきたす確率が高いからだ。これはルーマニアの研究結果でも明らかにされていることであり、実際に乳児院で育てられた子供の里親になった経験を持つホッブズ氏もその傾向を感じるという。「赤ちゃんは例外なしに家庭で育たなければいけないのに、日本では3000人もの赤ちゃんが乳児院に入れられている。これはゆゆしき問題である。」と土井氏は強調した。
子供が欲しくてもできない夫婦もたくさんいるなかで、何故こんなにも多くの子供が施設に入れられているのか。日本は、施設で育てられる子供の比率が、先進国の中で群を抜いて高い。欧米諸国では社会的養護下にある子供の70%以上が家庭で育てられているのに対し、日本ではたったの15%にしか満たない。
その原因は、赤ちゃんを収容しないと乳児院が助成金をもらえなくなる予算制度、児童相談所に予算が十分に充てられておらず、人手不足からマッチングや継続支援をする余裕がないこと等が挙げられると土井氏は指摘する。法整備や予算のあり方を見直す必要があるという。
欧米では、養子や里子を育てることが、社会貢献の一つのあり方として広く認知されている。ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが複数の養子を育てていることは有名だが、経済的・社会的に成功した人たちに対し、そのような形での貢献が期待されているともいえるだろう。まだまだこのような意識は日本には根付いていない。
番組内のアンケートで、「可能であれば、里親になってもいいと考えるか」という質問に対し、YESと回答したのは28.5%だった。これは相当多い数字で、番組趣旨を理解して視聴している人が多かったからと思われ、実際はこれほど多くの人がこのような考えを持っているわけではないだろう。
日本の成人人口の3%の人が里親になれば、現在施設にいる四万人の子供たちは十分に皆家庭で育つことができるようになる計算だ。「里親になる資格は難しいのではないかといわれるが、実際はそうでもない。」とホッブズ氏は言う。登録は難しくないが、マッチングが上手くいっていないせいで、子供がなかなか施設から回されないというのが現状で、里子を待つ人が多い。家庭で育てる場合も助成金が出るが、施設で育てる場合に比べれば、そのコストは低い。施設で育つ子供が増えることは税金面でも無駄が多く、二重の意味で良くないと言える。
様々な課題を抱える社会的養護の問題を解決していくために、どのような政策が必要なのだろうか。土井氏は「施設に子供が行った方が、施設が得をする助成金のシステムを変えるべき。また、児童相談所の予算を増やして家庭養護担当者を増やすとともに、里親子支援のシステムを整える改革が必要。」と述べた。
ホッブズ氏は「もっと真剣なマッチングが必要だ。アメリカでは障害児をマッチングするとお金が出るようになっている。何か障害などがある子たちはなかなか家庭に引き取られにくいが、そういう子たちにも行き先を作ることが大切。また、里親や養親を地域ごとではなく、全国的にデータ化し、共有してマッチングの枠を広げることができるのではないか。」と述べた。
国連レポートは、赤ちゃんを施設に収容することは原則虐待と見なす。虐待が当たり前のように行われている国日本、の汚名をはらすため、一刻も早い制度改革を期待したい。
(注:この原稿は2014年11月12日(水)2000~2100に放送された内容を元に編集したものです。)
(この記事は、ニコ生【Japan In-depthチャンネル】2014年11月12日放送 を要約したもです。録画はこちら
ニコ生【Japan In-depthチャンネル】)
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