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.国際  投稿日:2014/12/29

[遠藤功治]【当初から迅速に動くべきだったホンダ】 ~タカタ製エアバッグリコール問題 その4~


遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)

「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」

執筆記事プロフィール

 

今回、ホンダ等のリコールが遅れた要因は、リコールへの考え方のズレとも言えます。ホンダから言えば、今回の問題はエアバッグを製造したタカタにあるのであって、タカタによる原因追究を待ってリコールするというのが、そもそもの筋道論でしょう。つまりホンダ車の問題ではなく、エアバッグの問題だと。ところが自動車のユーザーからすれば、ホンダ車を運転していてエアバッグが誤作動したのであれば、ホンダ車の問題であるとなります。現在、米国では集団訴訟が多く起こされていますが、大半の場合は、タカタのみではなく、ホンダやその他自動車メーカーを同時にターゲットとしています。

自動車は一般的に3万点の部品で作られていると言われます。勿論、最終的には自動車メーカーの組み立てラインで最終的に製品となるのですが、付加価値から言えば、1台の車に使われる部品のうち、70%以上が外部の部品・素材メーカーからの購入品ということになります。簡単に言えば、自動車メーカーが自分たちで生産している部品は、1台当たり約30%程度に過ぎません。それではその約70%の部品が何らかの理由で不調をきたしたとき、だれが責任を取るのか。

もし設計が問題なら、自動車メーカーと部品メーカーの双方(その比率はどちらの責任がより大きいか、場合によって変わりますが)に責任が発生することが多い。もし部品会社における製造工程での不良発生なら、大半のコストは部品メーカー持ちとなるでしょう。今回の場合はまだ、その根本原因が特定されていないので、はっきりしたことはわかりませんが、もし言われているように、タカタのメキシコ工場での生産工程に問題があったとすると、タカタにコスト負担がより大きく発生することになります。

日本の自動車メーカーが日本の部品メーカーのエアバッグを採用した、但し、その部品はMade in Japanではなく、Made in Mexicoであった。問題を複雑化している要因の1つです。日本の会社の製品であることには間違いはないけれども、使用されている部品の多くが、非日本製である、当然、その海外生産する部品も日本で生産される部品と品質では全く同じ、とすべきですが、中々これが厄介です。今回の件で日本製品に対する品質に対するイメージが低下するのではないか、という懸念も一部で出ていますが、今回の件が日本製ではなかったという点に、却って海外進出を活発化している日系メーカーの苦労が現われています。

さてそのコスト責任ですが、問題なのは“調査リコール”です。調査リコールとは前述のように、原因が特定されていな段階でのリコールです。特定されていない訳ですから、タカタの責任でリコールとなった、とはまだ言えない訳です。自動車メーカーが自主的にリコールをしている訳ですから、あくまでも自動車メーカー側が持つべきコスト負担であるとも言えます。

勿論、今後の検証結果を踏まえて、タカタに非があることが判明すれば、後々、自動車メーカーはそのリコール費用の大半なのか、一部なのか、タカタに請求することになるでしょう。裁判費用は更に話が複雑になりますが、米国司法当局の判断を待たないと何とも言えません。ただ、米国の場合は司法による最終判断ではなく、訴訟途中で和解に至る場合が圧倒的に多いので、その段階での各関係者間の交渉次第ということになるのでしょう。

いずれにせよ、たとえエアバッグの欠陥が問題であったとしても、その根本原因を待っているのではなく、このリコールはエアバッグの問題ではなく、あくまでも運転手が乗っているのはホンダ車なのだから、ホンダ車の問題として当初から迅速に動くべきであった、というのが、ホンダの経営陣が改めて意識していることだと信じます。

(その5最終回に続く)

 

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