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.政治  投稿日:2015/2/15

[西村健]【東京一極集中と地方創生は両立するのか?】 ~東京都長期ビジョンを読み解く!その3~


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

「西村健の地方自治ウォッチング」

執筆記事プロフィール

石破担当大臣を中心に進められている「地方創生」。昨年11月、「まち・ひと・しごと創生法案」と「地域再生法の一部を改正する法律案」の地方創生関連2法案が可決、成立した。12月には「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が閣議決定され、地方創生に向けた活動が本格化している。 この戦略には、東京への一極集中についての言及がされているが、東京の長期ビジョンははたしてどうなっているのだろうか。

「世界一の都市東京」を目指した長期ビジョンはどうか。東京五輪、都市戦略、インフラが中心であって、一極集中の問題についての言及は少ない。というかほとんどない。

人の流れを見てみよう。多くの人材が東京都以外の人に来てもらうことで経済活動が成り立っている。転入者数を人口で割った「転入率」は平成23年時点で2.3%と全国1位である。

食べる食料はどこから来るのか見てみよう。食料自給率は、カロリーベースで1%、生産額ベースで4%にしかすぎない(全国平均はカロリーベースで39%、生産額ベースで68%)。

暮らす上で必要な水道、電気はどこからやってくるのか見てみよう。利根川水系、東京都内外の発電所などから引っ張ってきている。

とはいえ、舛添知事は、地方創生について、それなりの見解を示している。石破担当大臣との会合では「東京以外にも経済拠点をつくり、日本全体に景気回復を波及させることが重要」との発言をした。

しかし、施政方針演説では「都市再生の分野では大胆な容積率設定などを盛り込んだプロジェクトをスピーディーに展開していきたいと思います。」と言っている。施政方針演説の通り開発を進めると、地方創生どころか一極集中を加速してしまうようにも思える。論理的に矛盾しないか。そこまで考えて発言しているのか。

平成25年8月の都民生活に関する世論調査を見てみよう。「Q9」で「あなたは、今お住まいのこの地域に今後もずっと住みたいと思いますか、それとも、住みたくないと思いますか。あなたの今のお気持ちをお答えください。」との設問への回答は、東京の実力を示している。「住みたい」が75.5%、「住みたくない」が11.3%という結果だ。

住みたいと答えた回答の理由として、「買物など日常の生活環境が整っているから。」「通勤通学に便利だから。」といった利便性をあげる意見が多い。都市としての魅力もあいまって、東京はまさに鉄板である。東京都民がこれだけ住み続けたい以上、一極集中の解決は相当に難しいことが明らかだ。

一方、人口、経済社会等の日本の将来像に関する世論調査で「地方から東京への集中は望ましくない。」と答えた者の割合が全体で48.3%であるが、東京区部でも46.2%となっている。つまり、都民の多くが集中を望んでいないのも現実なのである。

東京都が自分のことだけを考えて「都市間競争」に邁進すればするほど、地方創生は成功しないし、日本国も上手くいかない。

他府県と支え合い、東京も立派に機能を果たしつつ、東京一極集中をいかに解決するのか。東京都も意見を表明する時ではないか。

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