[西村健]【渋滞解消の解は、道路建設だけ?】~東京都長期ビジョンを読み解く!その15~
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
「西村健の地方自治ウォッチング」
今回は、久しぶりに長期ビジョンに戻って考えたい。「都市戦略2 高度に発達した利用者本位の都市インフラを備えた都市の実現」の政策指針「陸・海・空の広域的な交通・物流ネットワークの形成」を見てみよう。そこでは、将来像として「3環状道路(中央環状、関越自動車道から東名高速間の外環、圏央道)の約9割が開通するなど道路交通ネットワークが形成されている」、おおむね10年後の東京の姿として「首都圏の広域的な道路ネットワークの整備が進展し、東京の最大の弱点である渋滞が大きく改善している」との記載がされている。
また、幹線道路ネットワークの構築として、区部・放射道路、南北道路が2024年度までにおおむね完成、多摩東西道路が2024年度までに約8割完成、連続立体交差事業が同じく446か所(累計)の踏切を除去することが計画されている。
国土交通省の資料でも「東京首都圏における環状道路の整備率は約47%であり、海外主要都市と比べて整備が遅れている状況」であることが示されている。
渋滞・混雑に関する都民の意識を見てみよう。「現在の都内の渋滞状況についてどう感じていますか、高速道路を除いた一般道路のみについて、この中からあてはまるものを1つだけお選びください」という設問が行われた。
「どこもひどく渋滞している」との回答が11%、「区部の渋滞がひどい」が33%、「多摩部の渋滞がひどい」が3%、この3つをあわせた「渋滞している」が47%。一方、「それほど渋滞していない」の26%と「渋滞は解消された」の4%をあわせた「渋滞していない」が29%となっている。
この調査は残念ながら、あまり使えない。なぜなら、渋滞状況について渋滞しているか感じますか?というのは意味のある設問とは言えないからだ(遭遇度合や遭遇率が望ましい)。しかし、渋滞していると感じている人がこれほど多いのも事実である。
産業振興や住民生活のために、方向性として道路整備をすることは必要である。環状道路を作ることで、中心部に入らなくて済むなど、物流ネットワークへの貢献は相当ある。東京の従来型やの発展を望むなら当然の政策執行である。
しかし、渋滞を解消するために車の使用を制限する、都市開発を規制する、東京の持つ都市機能を部分移転するなどの発想はなかったのか。
交通量の予測をもとに信号を制御する先端技術もすでに導入されている。さらなるネット社会の進行で移動しなくても済むことも多くなるのになあ・・・・高層ビルを眺めながら、ふとそんなことを思った。