[安倍宏行]経済効果20兆円が期待される東京オリンピックを控えた今だからこそ、東京の都市としての魅力を高めよう
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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2014年1月6日付けの日経朝刊によると、森記念財団は、2020年の東京オリンピック開催までに全国で121万人の雇用が創出されるとの試算をまとめた。経済波及効果は20兆円規模、GDP(国内総生産)を0.3%押し上げる効果があるという。外環道等の交通網の前倒し整備や外資系企業の進出、都心と羽田、成田空港を結ぶ鉄道、更には地下鉄の延伸などの整備が加速すると想定。ホテル等の建設ラッシュも見込めるとしている。
こうしたインフラ整備は直接的経済効果が大きい。特にオリンピック会場が多く予定されている晴海・有明地区までの交通整備は大きな課題だ。期待されている道路が環状2号線、通称マッカーサー道路[注1]。
戦後間もなく計画されたがずっと塩漬けになっていた。霞が関のすぐ隣、虎ノ門から汐留、勝どきを経由し、有明までを結ぶ環状2号線がオリンピック前に完成予定で、交通渋滞の緩和が期待されている。
虎ノ門地区には森ビルが地上52階建ての「虎ノ門ヒルズ」を開発中で、外国企業の入居が期待されている。
こうしたハードの整備と同時にソフト=街の魅力向上も重要だ。「虎ノ門ヒルズ」の47階から52階は、ホテルチェーンハイアットの最高級ブランド「アンダーズ東京」が入居、海外旅行客などをターゲットにする。
そして環状2号線の地上部、新橋のあたりまでを整備し、東京のシャンゼリゼ通りにする計画もある。環状2号線は地下を走るため、地上の歩道部分は表参道のほぼ2倍の13メートルとなる。木々を多く植え、ブティックやカフェなどが立ち並ぶ憩いの場となる予定だ。その名称も「新虎通り」と決まっている。
今ままで雑居ビルが立ち並ぶ街の風景が一変し、東京丸の内地区が大変身を遂げて以来の新しい街が誕生する。人の流れも一変し、新橋・汐留から虎ノ門まで人がそぞろ歩き、ショッピングや食事を楽しむ風景が今年は誕生するだろう。
そこで、忘れてはならないのは外国人旅行客が滞在する街の利便性の向上だ。東京ではようやく道路の案内表示が英語併記になり始めているが、まだまだ不十分である。レストランのメニューも英語標記になってないことが多い。
何より、外国人向けインフォメーションブースが圧倒的に少ない。筆者もちょっとどこにあるか、思いだせないくらいだ。各国語で道案内するボランティアをどんどん募ってもいい。
又、鉄道がこれだけ便利な都市なのに、駅で右往左往する外国人が後を絶たない。乗換やどの出口に向かったらいいのか、日本人ですら迷う始末だ。急務なのは、フリーWiFiの整備と、日本の得意とするAR(拡張現実)技術を使った海外旅行客向け交通・観光情報の提供だろう。こんなものは日本人だって欲しい位だ。
最後に、バリアフリーも加速させてもらいたい。足の指を折った時どれだけ東京が不親切な街か思いしらされた。大きなラゲッジを持って階段を上る人を見て、なんとかならないのか、といつも思う。鉄道会社は安全と同時に社会的弱者に対する対応も積極的に進めるべきだ。IRの観点からも重要だと申し添えておく。
いずれにしても、都市の魅力を高めることはインバウンド(海外旅行客の訪日)を増やし、お金を落としてもらう、と言う事以外に、社会資本の無駄を省き、効率化する、という側面もある。移動が容易になれば社会の生産性も上がし、エネルギー消費も、事故が減る。安心・安全で無駄のない効率的な環境で、人々が生き生きと仕事が出来る街づくりは、私達が想像している以上に大切なのだ。
[注1:環状2号線]1946年に都市計画として決定されたが、土地買収が難航し、事業化が大幅に遅れた。GHQが要請したとの俗説から「マッカーサー道路」との通称が広まった。
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