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.社会  投稿日:2015/4/16

[前田真里]【日本の「お笑い」を海外に】~異能の吉本芸人、マンハッタンに渡る~


前田真里 (NY在住フリーアナウンサー、ジャーナリスト)

「前田真理のニューヨーク・ウォッチ」

執筆記事プロフィール

  世界に挑戦したい。そんな想いを実現したお笑い芸人がニューヨークに降り立った。お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣さんだ。

13日、ニューヨーク・タイムズスクエア近くのプレイライツ・ホライゾン・シアターで1人喋りの舞台「キングコング西野亮廣独演会 in ニューヨーク」を開催、日本人を中心に約200人が参加した。同独演会は、2003年から日本全国で50回以上行われている。2013年2月、マンハッタンのアート・ギャラリーで開かれた海外、初の絵本・原画展「Akihiro Nishino Solo Art Exhibition」でお世話になった人達へ恩返しができたらと自身が企画した。西野さんは絵画でもその才能をいかんなく発揮している。

資金は、昨年8月、2000人が集まった日比谷公会堂の独演会を収録したDVD、2000枚を約4ヶ月間ファンに直接手売りして調達した。今回の独演会の実現に向け、奮闘した。入場無料。いわば、“日本の観客からニューヨークの観客へのプレゼント”だ。当日は、キャンセル待ちのため、外に長い列ができるほど大盛況だった。

独演会の舞台は、音楽もなく、ただ1本のマイクがあるのみ。今回、開演から終演まで約1時間半、西野さんは、単独でひたすらしゃべり通した。家族やコンビ、スタッフとのエピソードなど、切れ味のあるトークを展開。銭湯の話題なども飛び出し、日本の風景が目に浮かんだ。ここがアメリカというのを忘れてしまうほど、会場は、沸いた。

終盤に向けて徐々にトークはヒートアップ。最前列の男性の顔に唾がかかるほどの勢いで、熱のこもった独演会となった。参加者は、手を叩いて大笑いしている人が多かったが、中には、その一身に話す姿に涙ぐむファンも。20代、30代の女性が多く、最後は、かん高いカーテンコールが響いた。再び舞台に上がった西野さんは、「皆さん、あの・・早く帰ってもらえないでしょうか」と和やかに会場にツッコミつつ、目を潤ませた。

公演後のインタビューでは、「ラスト30分くらいから会場の時計を見ていたのですが、寂しいですね。何ヶ月も前から準備をしてきたので。ああ、終わっちゃったんだなって。ご好意で現地の方が動いて下さって本当にありがたいです」と言葉を残し、名残り惜しげに劇場をあとにした。

同劇場で開かれたレセプションで参加者に話を聞いた。ノースカロライナ州からこの日のために夫のジェームスさんと駆けつけた、桂子マーティーシュさんは、「テレビ番組で西野さんが絵を描いているのを知り、興味を持ってツイッターを見ていた所、ちょうど自分の誕生日に独演会が開かれるのがわかり、嬉しくなって飛行機に乗り、駆けつけた。こんな日本人がたくさんいるのは初めて見た」と語る。

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米国でスタンドアップコメディアンをしているKaoriさんは、「構成などとても勉強になった。親しみがあってハートフルだなと思った」と話す。ボランティアスタッフは、「これまで感じていたイメージと違い、西野さんは、実際、謙虚でいい人でした」と口を揃えた。

60代の参加者からは、もう少し想像できるような間が欲しかった、話題についていけなかったという意見があった一方で、アメリカ人には、「言葉は、よくわからないけれど、コミカルな動きが面白かった」と好評だった。YOU TUBEのトーク動画を見て、西野さんの存在を知り、駆けつけた外国人も数人いた。2年前のマンハッタンで開かれた絵本・原画展には、約1500人が訪れていて、現地に長くに住む日本人は、西野さんを芸人というよりも絵本作家として知る人が多い。ロビーには、絵本片手にサインを待つ人の列が途切れなかった。

日本のエンターテイメントがアメリカに通用すると思うか西野さんに聞くと、「絵やアニメーションでも皆さんに喜んでもらえるものを作りたいなと思っている。アメリカ人に限らず、世界の方がすごい事やるなというようなことを探りたい。ディズニーを見ていると凄いなと悔しくなってくる。だからといって白旗をあげるのではなくて、勝ちたいですよね。やるからには、面白いものを持ってまた、ニューヨークに来たいです」と目を輝かせた。

早くも、今回の滞在中に他の州やニューヨークの美術館でも何か開催できないか声がかかっているようだ。次の独演会は、8月1日。日比谷公会堂で開かれる。 

 

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