[遠藤功治]【精密金型であらゆるプラスチック部品を作る】 ~“キラリと光るダイヤモンドの原石企業”富山県編 1~
遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)
「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」
自動車業界を分析している遠藤功治です。小職、日本の47都道府県、全てお邪魔しました。仕事・観光双方ですが、特に自動車関係を見ていると、地方に行く機会が多くなります。自動車の本社は大都市にあるかもしれませんが、自動車工場や部品工場は、至極当然で地方に多くが立地します。日本の自動車工場が特に立地しているのは、仙台周辺、北関東(群馬・栃木・埼玉)、神奈川、静岡から名古屋周辺、京都・滋賀から大阪周辺、岡山から広島周辺、北九州(福岡・大分・熊本)、となります。販社や中古販売店などは47都道府県全てに存在します。結果、こういった企業を取材するうちに、47都道府県全てを制覇することとなりました。安倍政権は地方創生を謳い、東京一極集中の是正を政策の一つとして挙げています。ただ現実は厳しく、メディア等には、景気回復の波に遅れている、シャッター商店街が多い、高齢者ばかりで活気が無い、云々の記事が溢れています。
小職も地方に行く度に、そう感じることも多いのですが、一方できらりと光る企業、こんなに素晴らしい会社がこんな田舎に(失礼)あるんだ、と驚くことも多いのです。そういった地方でがんばっている、ダイヤモンドの原石かも知れない、東京では余り知られていない地方の企業を、この特集ではご紹介したいと思います。地方活性化の応援に、微力でも役に立てれば幸いです。第1回は、富山県にある、三光合成という会社です。
三光合成:富山県南砺市、資本金18.9億円、売上490億円、従業員数2,191人
南砺市と聞いて、すぐ分かる方は少ないかもしれません。富山県の南西部、石川県に隣接している人口約5万人の市です。目の前まで1,000-1,500m級の山々が迫り、その向こうは合掌造の家屋が並ぶ五箇山の集落があります。富山県ですが、富山に出るよりも、金沢の方が近い場所。北陸新幹線が開通、観光客がどっと増えている北陸ですが、その欠片のサインも無い、のどかな地域です。
高岡と岐阜を結ぶ東海北陸自動車道、その福光インターを降りてすぐの所に、この三光合成の本社、及び本社工場があります。周りは田んぼとポツンポツンとある家屋のみ、遠くにスキー場が小さく見えますが、それ以外に目立った観光地などはありません。車で金沢から小1時間ほどでしょうか。特別豪雪地帯で冬は相当な積雪となります。散居村でも有名なところです。
この会社はれっきとした上場企業(JASDAQ市場)ですが、その時価総額は100億円ほどと、上場会社としては極極、小規模と言えるでしょう。決算期は珍しく5月、今期の売上高は約500億円、営業利益は21億円ですが、これは過去最高益更新となります。
従業員数は約2,000人強。主な製品は、自動車に搭載されるプラスチック成型部品、及び、そういった部品を製作する際に使われる金型です。売上の約90%は、自動車及び自動車部品会社向けとなります。バンパー・インパネなどの他、プラスチック製の様々な車内装品、燃料タンクのキャップやワイパーなどが主製品となります。
またこの他にも、コピー機のカートリッジや飲料紙パックのプラスチックの蓋、東京電力が始めたスマートメーターの外枠、ロボットベンチャー企業のサイバーダインが進めているロボットスーツの関節部品など、プラスチック製であれば何でもと言っていい多くの成型品を生産しています。
本社はこの南砺市ですが、工場は熊谷・静岡・滋賀・群馬の他、タイ・インドネシア・インド・メキシコ・中国・英国などにあり、実は大変グローバルな企業でもあります。この会社で注目するKEY WORDSは、“精密金型・3Dプリンター・M&A”でしょうか。
(【精密金型の秘密は3Dプリンター】~“キラリと光るダイヤモンドの原石企業”富山県編 2~ に続く。全2回)