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.経済,ビジネス  投稿日:2015/6/29

[遠藤功治]【配当性向はダントツでも利益は低水準】~大手自動車会社の決算と今後の課題 日産自動車 1~


遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)

「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」

執筆記事プロフィール

今回は日産自動車を取り上げます。日産自動車の2015年3月期の営業利益は、前年度比18.3%増加の5,895億円、純利益は17.6%増の4,575億円となり、従来からの会社予想であった5,700億円、4,200億円をそれぞれ上回りました。一昨年度の2度に渡る業績の下方修正と収益未達の記憶が残っている投資家には、米国における高水準なインセンティブ(販売奨励金)、中国における販売減速と在庫調整、そして日本での長期に渡る販売低迷など、依然不安要素が数多く存在していたのですが、蓋を開ければ予想を上回って堅実な数値での着地。日産の株価は大手自動車の中ではパフォーマンスの悪い部類に永らく属していたのですが、2月から急上昇、その背景には“意外に”堅調となった日産のこのような業績が背景にあった訳です。

以下は自動車大手7社の決算指標の比較です。数値は2015年3月期実績値です。表(※トップ画像参照)にある通り、日産の利益規模はトヨタ・ホンダに次ぐ3位、規模感はなお大ですが、効率面となると他社に比べ劣る項目が数多いことに気がつきます。まずは営業利益率、5.2%とホンダと並んで7社中下から2番目です。トヨタの半分、富士重工業の約3分の1、マツダやスズキよりも下、というのは何とも残念な数値です。また、2015年3月期の純利益を過去のピーク利益と比較すると、約88%の水準であることがわかります。ここに挙げた7社のうち、4社が過去最高益を更新したことを考えても、日産の足元の利益水準は、自社のリコールやタカタのリコールで減益となったホンダと並んで、歴史的には依然低水準で留まっているということです。

今話題のROEはちょうど10%、2ケタを確保しており、ホンダやスズキよりも上ではありますが、自己資本比率が28%とこの7社の中では最も低いことを考えれば、満足できる水準からは程遠いとの印象です。ただこの表で唯一、7社の中で最も高い水準に並んでいる項目があります。配当性向です。ホンダと並んで30%を超えています。30%の配当性向は、自動車業界では目標となっており、トヨタも含め配当金支払いのベンチマークともなりつつあります。日産は2016年3月期の配当金を9円増配して42円にすることを既に公表しています。これで配当性向は更に36.3%まで上昇することになります。7社中、ダントツの1位です。また配当金と株価の関係で、配当の利回りを計算すると、42円の配当金なら3.3%前後となり、この7社の中ではやはり大差で1位となります。

(【“ルノーの財布”であり続けるのか?】~大手自動車会社の決算と今後の課題 日産自動車 2~

【国内市場は二の次、米中市場最優先のわけ】~大手自動車会社の決算と今後の課題 日産自動車 3~

に続く。本シリーズ全3回)

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