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.JID,.社会  投稿日:2015/7/21

[Japan In-depth編集部] 【変わる?エスカレーターの“片側空け”】~慢性的混雑状態の解消が急務~


 

Japan In-depth 編集部

「エスカレーターの手すりにつかまりましょう!」地下鉄構内に駅員の声が響く。ここは東京メトロ六本木駅の改札口。複合大型商業施設六本木ヒルズの地下とつながっているだけに、子連れからサラリーマン、OLらがひっきりなしに往来する。

「みんなで手すりにつかまろう」キャンペーンと銘打って行われた今回の啓発活動、歩行者のエスカレーターの安全利用促進が目的だ。背景には、10年くらい前から、エスカレーターの右か左の片側を、歩行用に空けることが半ばルール化していることが上げられる。いわば“追い越し車線”のようなもので、朝のラッシュ時などは皆競ってその“追い越しレーン”に殺到し、駆け上るように上っていく人が多い。

そうした中で、例えば子供やお年寄りに“追い越しレーン”の人がぶつかったり、酔った人が足を踏み外したり、といったトラブルが発生している。2012年には渋谷駅のエスカレーターで男性二人の間でトラブルとなり一人が刺される事件も起きている。

こうしたことから六本木ヒルズ運営会社の森ビル、東京メトロや都営地下鉄は7月21日から8月31日まで本キャンペーンの実施を行うことにしたもの。実施は全国の鉄道事業者51社以外に羽田空港、成田空港、日本民営鉄道協会、日本地下鉄協会、日本エレベーター協会ら。後援が国土交通省、消費者庁となっている。

森ビル広報によると、同社は2009年からこのキャンペーンを実施、今回が7回目となる。六本木駅がある東京メトロと都営地下鉄、3社合同で行うのは初めてで、21日朝は合わせておよそ30人のスタッフが手すりにつかまるよう、声を張り上げた。

東京メトロ・六本木駅構内でキャンペーンのティッシュを配る駅員

確かに両側の人が「手すりにつかまっていれば」、理論上“片側空け”はなくなるはずだが、はっきりと「片側空けは止めましょう」という呼びかけになっていないだけに、片側を歩く人は無くなりそうもない。

エスカレーターの利用者に話を聞くと、「小さい子は横にはみ出したりして(追い越しの人と)ぶつかって危ないこともあるのでいいと思うけど、急いでいる人にしたらどうなのかな、と思う」(小学校低学年生と母親の二人連れ)「もともと歩くもんじゃないし、いいんじゃない?」(中年サラリーマン)「前が空いていればふつうは歩く。(2列に並ぶことについては)うーん、何とも言えないです。」(OL)「どちらかに決めればいいんじゃない?」(中年女性)、とまちまちな意見だった。

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もともとエレベーターは歩くように作られていない、と今さら言われても、すでに“片側空け”がここまで一般的になってしまうとこのルールを変えるのはかなり難しいと言わざるを得ない。その理由として

・朝のラッシュ時に限らず都内は駅の混雑が常態化しており、時間に追われている人は1秒でも早く目的地に行こうとする。

・健康志向が高まり、スマホなどの健康アプリも手伝って、エスカレーターに乗っている時でも、立ち止まらず上ることによってカロリー消費量を高めようという人が増えている。

ことなどが上げられよう。

鉄道事業者や商用ビルの運営会社らが真剣にエスカレーターにおける“二列乗車”を徹底させたいなら、スタッフを常駐させ、案内し続ける必要がある。さらに言えば、鉄道各社は乗降客を十分にさばけていない駅の出入り口の拡大とエスカレーターの増設を行わない限り、片側空け、片側追い越し歩行の根絶は無理であろう。“片側空け”問題は、都市交通のあり方に深刻な問題を投げかけている。

 

*トップ写真:エスカレーター「みんなで手すりにつかまろう」キャンペーン2015年度ポスター

*記事中写真1:東京メトロ・六本木駅構内でキャンペーンのティッシュを配る駅員

*記事中写真2:六本木ヒルズに向かうエスカレーターで手すりにつかまる乗客


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