[相川俊英]【また兵庫、政務活動費が“陣中見舞い”に】~自民系会派、市議選直前に1,120万円配る~
相川俊英(ジャーナリスト)
「相川俊英の地方取材行脚録」
政務活動費のデタラメな支出の実態を広く世に知らしめたのが、例の野々村竜太郎・元兵庫県議だ。会見の場でカラ日帰り出張や切手などの架空購入を追及されて号泣し、世間を驚愕させた。これを契機に政務活動費への関心が高まり、各地で次々に不心得者の議員が糾弾されるようになった。1年ほど前のことだ。これで地方議員の誰もが襟を正すようになったかと思いきや、そううまくことは運ばない。地方議員による政務活動費の無駄使いや目的外使用、さらには架空支出といった不正は一向になくならず、それどころか、より悪質で巧妙な不正行為まで新たに表面化している。舞台となっているのは今回も兵庫県で、神戸市議会のある会派による組織的な不正疑惑である。
疑惑が浮上したのは今年6月で、地元紙のスクープだった。神戸市議会の会派「自民党神戸」は、2010年度から2014年度に会派として市民アンケートを実施していた。調査は専門業者が行い、政務活動費から約1120万円が業者に委託費として支払われた。神戸市議会では政務活動費は会派に交付することになっており、議員1人当たり月額38万円。さらに、所属議員5人以上の会派が専属政務調査員を配置している場合は、1人につき最大で月額34万円が加算される。政務活動費は毎月先払いで交付され、年度ごとに残余金があった場合、市に返還することになっている。
地元紙が「自民党神戸」の調査委託を取材したところ、トンデモない事実が発覚したのである。収支報告書に添付された領収書の住所を訪ねたところ、そこに業者は存在しなかった。つまり、虚偽の領収書で政務活動費の交付を受けていたのである。
不正の動かぬ証拠を突きつけられた「自民党神戸」の担当市議は調査委託そのものが架空であることを認め、さらには調査報告書も自作したものであることを明らかにした。その後、別の業者による調査委託273万円分も架空であることが分かり、合計で1393万円もの政務活動費が不正支出されていたことが判明した。問題は、そうした金が何に使われていたかである。事態はその後、急変する。
疑惑の全貌を知る調査委託の担当市議が8月6日、癌で亡くなった。62歳だった。その代理人弁護士が10日に記者会見し、金の使途に関して生前に聞き出したことを明らかにした。それによると、調査委託費として不正に受け取った政務活動費のうち1120万円が、今年4月の神戸市議選前に会派の候補者15人に「陣中見舞い」として配られたという。つまり、議員の調査研究などに資するための税金が、私的な選挙資金に流用された疑いが濃厚なのだ。なお、「自民党神戸」の所属議員の多くは、4月の市議選後にもう一つの自民党会派「自民党」に移籍した。