<もう隠しきれない地方議会の実態>議会の実情を一番よく知る議員自身が議会のことを発言しない本当の理由
水野友貴(千葉県我孫子市議会議員 )
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都議会のセクハラ野次問題によって全国的に地方議会が注目を浴び、すぐ次にスタンバイしていたのが兵庫県議だった。その結果、記者たちは第2、第3のターゲットを見つけるかのごとく、こぞって地方政治家を調査し始め、これまでほとんど話題にならなかった彼らの不祥事を各社が競うように報道している。
ここ約1か月で報道された地方政治家の主な不祥事は下記の通り。
- 都議会セクハラ野次
- 愛知県議(政務活動費)
- 兵庫県議(政務活動費、刑事告発へ)
- 美濃加茂市長(事前収賄の疑いで逮捕)
- 千葉県議(酒酔い運転の疑いで逮捕)
- 船橋市議(酒飲み物損事故)
そして今、熱い話題が青森・平川市長選だ。市議20人中、前市長(公選法違反罪で公判中)への票の取りまとめの報酬に現金を授受したとして議会の4分の3を占める15人が公職選挙法違反で逮捕という前代未聞の事態。既に逮捕されていた市議9人のうち、5人は有罪が確定、失職または辞職。今回新たに6名が逮捕された。
9月の定例市議会への出席が確実に見込めるのは、補選で選出される5人を含めて定足数ぎりぎりの10人。市議会の開催は、定員の半数以上の議員の出席を必要としている。つまり今後、辞職や失職する議員がさらに増えたり、逮捕・起訴された議員の勾留が長引いたりすれば、議会が開会できなくなる可能性が多分にある。
地方議会の実態と背景に着目して筆者が昨年書いた記事、「今日はパンツスーツだけど生理なの?」と平気で言える議員たち〜永田町だけではない政治家のモラルハザード が爆発的にメディアに受けた。何故話題となったか?それは簡単。
こういった地方議会の内情を公に言う議員がほぼゼロだからだ。
何故議員は実情を一番知っておきながら言わないのか? 議員は外に中のことを言うと議会で浮くからだ。それだけではない、情報も入らなくなる危惧。民間でも同じであろう。
一連の不祥事で随分とメディアにて地方議会の実態や問題点、仕組みに苦言を呈してきたわけだが、それでも議会事務局に届く市民の意見の中には、筆者がそれらを指摘することによって「公にしたことで市議会の質が落ちた」などというものもあったという。
市民の中にもこういう意見があるとすれば、お仲間・学級会意識で議会を運営している議員が多くいる議会ともなれば、内情の発信者がどんな状況となるか察しはつくだろう。臭いものには蓋をしておこうという意識が相当根深いことは言うまでもない。そんな時だけは女子高生のように固まって、選挙や日常生活では地元で熱心に他の市議の悪口を言いまくって敵を落とすのにご執心な議員もいる。
こういった背景を知っている記者から必ず聞かれる。「水野さん、議会で大丈夫ですか?」と。
実は大丈夫だったりする。私は記事も書くし、SNSでオンタイムにすべてを発信する。情報が入らなければ、入らないことも流す。議会が隠そうとしていることも隠さない。それは私たちは市民の血税で仕事をしており、市民にすべてを見せる必要性があるからだ。民間で言えば株主は市民である。
質を下げるというのであれば、質の低い言動をした議員が質を落としているのであり、情報の発信者ではない。更にいえば、隠そうとする精神が質を落としてきてしまったのだ。隠す時代は終わった。これからは明らかにして自浄作用を働かせることが肝要なのである。
我々の活動や実態に有権者は関心を持ち、選挙の判断材料にすることで議会の質を高めることこそが議員と有権者の使命なのだ。
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