[相川俊英]【東京都議の交通費は1日1万円!?】~無くならない地方議員の税の無駄遣い~
相川俊英(ジャーナリスト)「相川俊英の地方取材行脚録」
地方議員の劣化ぶりを満天下に示したのが、兵庫県の野々村竜太郎・元県議だ。世界中を仰天させた昨年の号泣会見はまだ記憶に新しい。東京や福岡などに日帰り出張をしたなどと偽り、多額の政務活動費を着服していた。
号泣会見後、全国各地で地方議員による政務活動費の不適切な支出が発覚し、税金をくすねる先生たちの実態とそれを許す制度の不備が明らかになった。ほとんどの地方議会が政務活動費を一律で議員(ないしは会派ごと)に前渡しし、余った分を返還させる仕組みをとっていた。使途をチェックする意識と手立てが抜け落ちており、ごまかしし放題となっていた。
野々村事件をきっかけに政務活動費の見直しがようやく各地で行われるようになった。統一地方選が迫っていることもあり、住民の厳しい視線を意識してルールの厳格化に動かざるを得なくなったのだ。しかし、議員活動に伴う経費の公費負担の中には、他にもおかしなものがある。
議会への出席に要する交通費や宿泊費などの費用弁償だ。こちらも政務活動費と同様に実費精算ではなく、一律支給で、しかも領収書の提出なしというのがほとんど。
例えば、東京都議会の場合だ。都議会議事堂がある新宿までの交通費として、23区内の都議には1日1万円が支給され、多摩地区の都議には1日1万2000円がいずれも一律で支給される。公共交通機関が充実する東京なので、新宿までの往復にこれほどの交通費はかからない(タクシーやハイヤーは除く)。
実費との差額はそのまま都議のポケットに入ることになる。税金を無駄なく使うように監視の目を光らせるのが、地方議員の役割のひとつのである。費用弁償はせめて実費支給に切り替えるべきではないか。
税金をかすめ取るような議員の行動はこれだけではない。実は議員になる前から税金をちょろまかす不正に手を染める人が少なくない。「選挙公営」の経費水増し請求である。
選挙公営とは、選挙のときのポスター代や選挙カーのリース代、ガソリン代、それに運転手の日当などを公費(税金)で負担する制度である。候補者からの請求に基づいて支給されるもので、自治体の選挙では公営の対象と支給の上限額などが条例で定められている(町村はなし)。立候補者が金持ちに偏らないようにするための制度といえる。
この選挙公営制度を悪用し、ポスター代やガソリン代などを水増し請求したり、流用したりするケースが横行している。業者と結託して極秘裏に行われれる場合が多く、めったに表面化しないだけなのだ。こんな実話をある市議から聞いた。
一昨年に初当選したその市議は、選挙ポスターの作成を同級生の印刷業者に依頼したところ、「上限額まで市に請求し、差額分で別のチラシなども作ってやるよ。みんなやっていることだから。」と持ち掛けられた。思わぬ話に驚いたその市議は「議員になる前からそんなことをしたら、何ひとつ正義を言えなくなる。」と考え、同級生の申し出を断ったのである。
そして当選後、同僚市議たちの選挙公営費を調べてみたところ、なんと全員が上限額だったという。その市議は「さすがに議員である間は“村八分”になるので、この件については黙っています。」と胸の内を明かしたのである。
もらえる税金や使える税金はとにかく使い切り、懐に入れるというような人たちが議員になっているので、税金の無駄遣いなどなくなるはずがないのである。