[岩田太郎]【毛沢東コスプレの習近平が怖れる階級闘争】~中国人民の本当の敵は共産党~
岩田太郎(在米ジャーナリスト)
「岩田太郎のアメリカどんつき通信」
北京で9月3日に挙行された「抗日勝利70周年軍事パレード」について、『週刊現代』副編集長で中国通の近藤大介氏は、習近平国家主席がいかに自身を毛沢東のイメージに重ねることに腐心していたかを、次のように指摘している。「…習近平主席だけが人民服姿である。『現代の毛沢東』を気取る習近平主席らしい演出だった。この日の立ち居振る舞いは、本当にかつての毛沢東の所作をマネしていた」
確かに習の「毛沢東コスプレ」は目立っていた。支配者である習が、人民と同じ「持たない」立場であることを装いで匂わせつつ、歴代皇帝の権力の象徴である故宮で式を執り行うことで、絶対権力者であることを強烈にアピールした。
延安市郊外の農村への過酷な下放体験を持つ習だから、日常的に人民服を身につけていた時期もあろう。だが今は、貧困層の人民を含む他の誰も、そんな服装は着用しない。あまりにちぐはぐで、作り物感が強烈であり、習は浮いていた。
筆者は、この壮大かつ調和を欠いた4000億円超のショーを見ながら、毛沢東自身が強調していたメッセージを思い出していた。それは、階級闘争である。
中国共産党の「正統性」は、日米欧資本と結託した中国人の資本家・地主・知識人・富裕層の抑圧から、農民や貧困層を救い出したという作り話に由来する。その物語での主敵は、台湾に逃れた国民党に象徴される中国人の特権階級だ。
この言説は、1965年製作の映画『東方紅』をはじめ、「反動的地主」劉文彩の暴力的な取り立てにあえぐ四川の農民を彫像で表現した『収租院』、「革命バレエ」の『紅色娘子軍』や『白毛女』など、毛沢東時代のプロパガンダに繰り返し現れる。八路軍の敵としての日本軍も登場するが、主敵はあくまで中国人特権階級だ。それが今回のパレードでは、「毛主席の敵」であるはずの中国人が、「習主席の敵」である日本に、きれいにすり替わっていた。なぜだろうか。
それは、現在の中国共産党の本質が、毛が批判した暴虐な中国人特権階級そのものであるからだ。中国人民の真の階級敵は、1989年の天安門事件で人民に銃口を向けた、共産党だ。言論を弾圧し、人民を搾取し、抑圧し、暴利を貪る底なしの暴虐は、国民党ではなく、腐敗した現在の共産党の行いなのである。
毛の共産党がでっち上げた極悪な国民党のイメージは、階級特権を悪用する今の共産党の現実とピタリ重なる。習が最も恐れるのは、自国人民に階級闘争を仕掛けられることだ。共産主義の基本である階級闘争は、共産党に不都合である。
かくして、パレードでは階級敵であった国民党の元兵士が、共産党の元兵士と「抗日」の標語のもと、共に行進するという演出まで披露された。「もう階級闘争は忘れよう。本当の敵は日本だから」というメッセージだ。そのようにして習は、人民の抑圧者、階級敵としての中国共産党という真の問題から注意をそらす。
閲兵の際に、習が兵に向かって「同志、們辛苦了(同志よ、ご苦労)」と語りかけ、兵が「為人民服務(人民のために服務します)」と叫ぶ、わざとらしく空虚な儀礼劇は、かえって党と人民の乖離を白日の下に晒した。習をはじめとする共産党指導部は、人民の怒りと反逆が何よりも怖い。だからこそ、実際には存在しない共産党と人民の団結を演出しなければならないのだ。
パレードの舞台となった天安門広場周辺は、過去に人民解放軍が虐殺した学生や市民の血で汚れている。イベント中は周辺の医療・交通・商業・工業が停止させられた。人民のために服務する共産党が、人民に犠牲と不便を強いている。
この正統性の欠如こそ、日本が使える最強の武器だ。訪日中国人観光客は年間200万人以上。日本各地の観光地で、中国がネット検閲で隠す全体像を、彼らが匿名で検索・書き込みできる安全な「隠れ家とサーバー」を多数設置しよう。
(この記事には多数のリンクが貼られています。それらを見るには http://japan-indepth.jp にてお読みください)
さらに、中国共産党の現実をさりげなく伝える短いアニメやニュースをシームレスに挿入した、中国人に人気の一般日本ドラマ・アニメ・アダルト動画を収録済のマイクロSDカード・USB・DVD・出版物を民間が大量に無料配布し、中国人民の本当の敵は共産党であることを、中国人自身に「密輸」広報させる。
中国人男性が好む日本人AV女優やアニメキャラが、「共産党は弱者にこんなことしてるわ。やめさせてくれる?」と語りかけるCMを入れるのも一手だ。日本のソフトパワーで中国内に階級闘争のタネを蒔き、中国の対日戦を防ぐのだ。