中国人観光客のマナーを考える~白昼の銀座で起きた“事件”~
古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
白昼の銀座の中央通りで女の子が恥部を丸出しにして、おしっこをした! ショッキングな光景だった。そう中国人「観光客」である。ワシントンと東京とを頻繁に往来する私にとって、東京にくるたびに感じるのは中国人訪問者の存在のふくれあがり、そして傍若無人としか評しようのないその行状、さらにその言動に対する一般の日本人の深刻な顰蹙ぶりである。この状況のエスカレートは単なる「外国人のマナー」というような次元を超えて、日中関係全体への影響までを考えるべきところまできた、と実感させられるのだ。
ただし中国人とは、とか、アメリカ人なんて、という物言いには慎重にならねばならない。特定の国民や民族をひとくくりにして、あれこれ断定することは人種的な偏見や差別につながりかねないからだ。実際に偏見や差別がなくても、そんな印象を与えることだけでも、現在のグローバル化社会では好ましくないとされる。だがその一方、日本の社会で特定の外国からの訪問者たちによって頻繁に引き起こされる特殊な事態は無視することも適切ではないだろう。
さて銀座のおしっこである。
「中央通りの歩道のどまんなかで、中国人の父親が娘らしい幼女を抱き上げ、下半身を裸にして、おしっこを文字通り、シャーとさせたのです。この光景には私だけでなく、通りがかりの日本人たちがみな唖然としていました」
銀座の一角で小さな料理店を営む旧知の女性から聞いた話である。日本人だって、私自身が子供のころは男性の立小便というのは珍しくなかった。女の子の屋外での小便というのもきっとあっただろう。だが2015年の現在、東京の盛り場の白昼となると、話はまったく別である。ちなみに中国以外からきた外国訪問客によるそんな話は聞いたことがない。
だが実は私自身はその話にそれほどの衝撃は受けなかった。中国に住んだ2年間にそんな光景はすでに見ていたからだ。一度は中国の国内航空便の旅客機内で若い母親が幼児の息子に通路で小便をさせていた。北京市内のスーパーマーケットではこれまた男の幼児が、なんと母親が押すショッピングカートに乗っていて、立ちあがり、いきなり小便をした。いずれも至近で目撃した光景だった。
こうした国や社会の人たちがどっと日本にくれば、銀座での行動パターンは驚きには値しない。だが中国の「習慣」や「文化」を知らない普通の現代日本人はびっくり仰天だろう。そんな出来事が続くとどうなるのか。
最近の日本側の一部には「中国人観光客の増加で、日本のよさを知る中国人が増え、日中友好が促進される」という論調も聞かれる。果たして本当だろうか。国際間の人間関係、民族関係では相手を知れば知るほど、距離感が増すという実例もまちがいなく存在するだろう。