[宮家邦彦]【台湾政権交代、経済回復が急務】~問われる蔡英文新総統の手腕~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2016年1月18-24日)」
ビジネス・アズ・ユージュアルの政権交代、これが先週末の印象だ。今回の総統選の本質は国民党惨敗(注:立法院での過半数割れがこれを象徴)であって、「民進党圧勝」ではない。台湾の人々は統一でも独立でもない「現状」の維持を求めたことは事実。国民党の敗因は台湾経済を停滞させ人々の期待に応えられなかったことだ。
一方、今後民進党が成功する保証もない。民進党の新たな政策で台湾経済が劇的に回復するとはどうしても思えない。蔡英文新総統には「台湾独立」などと言っている暇などなく、一生懸命地道に経済を立て直すしかない。それができなければ、4年後に民進党は敗北するだろう。これが民主主義というものだ。
◯欧州・ロシア
20日からダボス会議がある。中国からは李源潮国家副主席が出席し、中国経済について説明するそうだ。同会議を主催する「世界経済フォーラム」によれば、今年最も影響が大きいリスクは「地球温暖化対策の失敗」、最も起こる可能性が高いリスクは「大規模な強制的移住」だそうだ。いかにも欧州系の団体らしい発想ではないか。
23日にトルコ、ジョージア、アゼルバイジャンの外相がジョージアのトビリシで会談する。この組み合わせ、実に興味深いではないか。米露がいないところで、トルコはどこまで政治的存在感を発揮できるのだろう。まずはお手並み拝見というところか。
〇東アジア・大洋州
オーストラリア首相が訪米する。日本では24日に宜野湾市長選挙がある。
〇中東・アフリカ
18日にカタルの首長が訪露し、プーチン大統領と会談する。習近平国家主席は20日からエジプトを、23日にはイランをそれぞれ訪問する。繰り返しになるが、日本の国会審議のシステムは時代遅れとしか言いようがない。これだけ世界の首脳が動き回る時代に、日本の首相・閣僚だけが国会に張り付かざるを得ないなんて・・・。
〇インド亜大陸
18日に仏国防大臣が訪印し、フランス製戦闘機の購入について話し合うそうだ。18-19日にはパキスタン首相がサウジとイランを訪問する。パキスタンができることに限りはあるだろうが、インドもパキスタンも、それぞれの国益を最大化すべく、虚々実々の外交を展開している。
〇アメリカ両大陸
イランと米国の間で受刑者の「交換」が行われるようだ。人数は合計11人というが、イラン核問題で合意が成立し、経済制裁が解除される今、この「人質」交換は米国とイラン間の合意パッケージの一環だったのだろう。それにしても、オバマ政権に成算はあるのか。サウジアラビアが疑心暗鬼になるのも無理はない。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表
1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。
2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。
2006年立命館大学客員教授。
2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。
2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)
言語:英語、中国語、アラビア語。
特技:サックス、ベースギター。
趣味:バンド活動。
各種メディアで評論活動。