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.国際  投稿日:2016/4/17

熊本大震災に全力で同情示す台湾


古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

熊本の大地震には心が痛む。激しい地震が一度ではなく何度も何度も続いていることがなんとも不吉である。被害の状況も当初の表面の静けさとは対照的に時間が過ぎれば過ぎるほど、大きいことが判明する。多数の人命がすでに失われたことは周知の事実だが、死亡や負傷という人間への直接の被害が時間の経過とともに急激に増していることは衝撃的である。もちろん被害は当初からあったわけで、それがすぐには判明しなかったということだ。

この事態は国難である。日本全体が官民一致して対策や救済に全力を投入しなければならないことは自明だといえる。日本の災禍はまず日本人自身が結束し、総力をあげて対処するしかない。だがそれでもなお国外からの支援やねぎらいの動きはありがたい。私自身のところにもふだんはあまり交信のないアメリカ人の友人知人たちからの見舞いや問いあわせの連絡が寄せられてきた。私自身に被害がないことはわかっていても、私の家族、親戚、あるいは友人らに災禍は及んでいないか、と尋ねてくれるのだ。

私自身にも熊本市の東海大学熊本キャンパスで教える友人がいる。その東海大学キャンパスも大きな被害にあった施設の一つである。その友人には連絡がとれていないが、気になるところだ。ただし彼は若手の教員で文武両道での頑健な人物だから、こんな危機にはきっと学生たちから大いに頼りにされて、活動していることだろう。

諸外国からも熊本大地震への懸念や支援の表明が多数、寄せられてきた。そのなかでも私がまず心を温められたのは台湾での動きだった。読売新聞4月17日朝刊には以下のような記事が載っていた。

【台北=向井ゆう子】台北市の柯文哲市長は16日、自身のフェイスブックで、「日本人は真面目で優しい。台湾の過去の災害でも最大の協力をしてくれた。私たちも協力したい」と表明した。

南部の高雄市の陳菊市長もフェイスブックで、市に窓口を設けて市民から義援金を募ることを発表。自身も給与の1か月分を義援金に充てると表明した。

この記事を読んで、私の脳裏には台北や高雄のあの人なつっこい街並みが浮かんできた。

そして日本や日本人にはいつも優しい台湾の知人たちの姿までが想起された。全世界でも台湾ほど日本に対して親近感や善意を抱いている地域は他にないと私は確信している。その台湾側の対日善意が日本側のこうした災難の際にはごく自然に、しかも驚くほどの勢いで明示されるのだ。

2011年3月の東日本大震災では全世界でも義援金の額は台湾からが最大だったことを忘れられない。官民からの支援の金額では台湾から2億5千万ドル、超大国のアメリカよりも、中国よりもずっと多かったのだ。日本にとっての台湾の貴重さが今回の悲劇でもまた実証されるようだ。


この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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