ゴーンと司法
.国際  投稿日:2016/4/21

分水嶺となるか?NY予備選終えて 米国のリーダーどう決まる? その14


大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)

「アメリカ本音通信」

4月19日に行われたニューヨーク州の大統領予備選は、獲得できる選挙人数が多いことや、全国ニュースメディアの本社が集中する大都会だけに、地元ならではの盛り上がりを感じさせるものだった。

まず共和党は予想通り、地元セレブのドナルド・トランプが圧勝を収めた。元々、本選ではどう転んでも民主党の大統領候補が選ばれる土地柄なので、普段は自分たちの票にあまり影響力がないことに慣れている共和党のニューヨーカーたちが喜々としてトランプを応援し、テッド・クルーズ候補に対する不満を示す絶好の機会となった。

2カ月前、地元テキサスの予選を前に行われたディベートでクルーズは「トランプはニューヨークの価値観の持ち主だからよろしくない」という発言をしたために、特にニューヨークの大衆紙のひとつである「デイリー・ニュース」紙のやり玉にあがり、自由の女神が中指を立ててDrop Dead, Ted !テッドなんか死んじまえ!という見出しの表紙を書く始末だった。遊説で市内に出かける度に移民の多いニューヨーカーからのヤジもキツかった。

他の州では2位につけていたクルーズだが、飛沫候補とされるジョン・ケーシック候補にも負けて3位、つまりビリっけつ、というこのNY州予選の結果を受けて、夏の党大会までに過半数の選挙人を獲得する可能性はゼロとなった。

各州の選挙人選出法まちまちなら、当大会で過半数を獲得した候補がいなかった場合の2度目以降の投票上の制約もバラバラなのがアメリカの大統領選の厄介なところで、例えば予選でトランプ60%、クルーズ40%という結果になっても選挙人の6割がトランプで残りがクルーズ、とすっきり分配されることはまずない。

このルールにトランプはたいそう不満で、昨年から細かい規定なども公表されていたにもかかわらず、これを「ずるい」と酷評し訴訟を起こすなどと息巻いて、共和党の幹部までをも非難している。ニューヨークでの勝利で勢いをつけて、当大会のルールがどうあろうと過半数の選挙人を獲得してしまうことに集中するだろう。

そこで鬼門となるのが来週に予定されているペンシルバニア州の予備選だ。ニューヨークに隣接するペンシルバニア州でもやはりトランプの優位が予測されているが、問題はこの州で勝利を収めたとしても、割り当てられた71人の選挙人のうち54人までもが予選の結果と関係なく勝手に候補者に投票していい変則的なシステムがとられていることだ。それでは何のための予備選なのかという問題も浮き彫りになりそうでまだ予断が許せない状態だ。

一方で、民主党は、ニューヨーク市など都市部でのバーニー・サンダース候補への熱烈な支持とは裏腹にヒラリー・クリントンが手堅く6割近い票を取り、数学的にサンダースが過半数の選挙人を獲得する見込みはなくなった。選挙資金が続く限り(そして小口の寄付金ならいつまででも集められるのもサンダースならでは、だが)、戦い続けてもかまわないのだが、そろそろディベートも同じ公約の繰り返しで、最初は相手の悪口を言わない清い選挙をすると宣言していたサンダースもヒラリー叩きを始めた。

そろそろサンダースもここで引き際を考え始めるであろうし、そうでなければ民主党内からの圧力という敵とも戦う覚悟でやるしかないであろう。

つまりは共和党も民主党も、この後で番狂わせが起きる可能性はほとんどなくなったということだ。共和党にとっては党大会でトランプを擁立してまとまれるのか、民主党にとってはクリントンがどうサンダースの応援をしていた若者層や、インディペンデントと呼ばれる浮動票をどうとりこんで行けるのか、大筋の流れが見えてきた。


この記事を書いた人
大原ケイ英語版権エージェント

日本の著書を欧米に売り込むべく孤軍奮闘する英語版権エージェント。ニューヨーク大学の学生だった時はタブロイド新聞の見出しを書くコピーライターを目指していた。

大原ケイ

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