[宮家邦彦]外交・安保カレンダー(2014年1月20日-26日)
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
今週は安倍首相が驚異的な外交日程を組んでいる。1月21日からスイスのダボス会議に出席し、23日に帰国する。24日は国会召集日だから、施政方針演説を読み上げる以外にも、多くの国会日程があるはずだ。更に、翌25日から27日までインドを訪問するという。いくら政府専用機があるとはいえ、信じられない日程ではないか。
毎回同行する政府関係者たちの方がバテテしまうのでは、などと心配になる。それにしても、日本の首脳がこれほど熱心に外国出張を続ける姿を見るのは初めてだ。以前にも外遊を好んだ首相はいただろうが、安倍首相の場合は外相並みの外遊頻度ではなかろうか。元気そうだから、唯一気になるのは出張旅費のやりくりぐらいだろう。
今週の世界の目玉はシリア和平会議だ。主催者は国連であり、かなり意気込んでいるようだ。残念ながら、この会議が成功する気配はない。そりゃそうだろう、イランが招待されれば、反体制の国民連合などがボイコットしてもおかしくない。昔なら米国主導で物事が決まったものだが、今やオバマ政権には主導権を握る気などなさそうだ。
それどころか、最近はロシアにしてやられてばかりいる。米露の暗黙の了解がなければ、今回の会議もまた継続協議に終わるのだろうが、その間もシリアでは一般市民が殺されていく。こうして人々は殺人に慣れ、テロに不感症になる。その典型例がイラクだ。今晩、2004年のバグダッドで一緒に働いた元米陸軍の友人と久しぶりに再会した。
お互いの無事を喜びつつも、現在のファルージャでの戦闘激化に二人で絶句した。このような悲惨なテロの現実があるにもかかわらず、隣国では政治宣伝のためテロリストが英雄視され、記念館が作られている。人の死を宣伝に使うような人々に本当の平和を語る資格があるとは思えない。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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