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.国際  投稿日:2016/7/28

バヌアツの誇り 女子ビーチバレー最強コンビ


相川梨絵(フリーアナウンサー・バヌアツ共和国親善大使)

「相川梨絵のバヌアツ・ニュース」

間もなく、オリンピックが開幕しますが、ここバヌアツでは、オリンピックは全く盛り上がりません。そもそも、国民がまったくオリンピックに興味をもっていないのです。

私がバヌアツへ来たのが、ちょうど4年前のロンドンオリンピックの年。オリンピックといえば、世界中の人が夢中になるイベント、そんな風に思っていました。

しかし、ここでは、オリンピックのオの字も聞くことができませんでした。いつ始まったかさえ知らない。地元紙にもオリンピックの記事はなし。バヌアツの選手が出場しているレースがTVで流れているときでさえ、誰も気にしない。このギャップに当時の私はショックを受けました。そんなバヌアツが、ビーチバレーボール女子 リンリン・ミラー コンビの快進撃により、変わりつつあります。

彼女達の挑戦は2012年8月12日から始まりました。オリンピック出場は国際大会で勝利した際に獲得できるポイントの累積数で決まります。つまり大会に出場すればするほど、ポイントを稼げるのですが、発展途上国のバヌアツは、国際大会に毎回出場するだけの資金はありません。彼らの挑戦は、技術の向上だけでなく、資金集めも大きな部分を占めていました。練習の合間を縫って、ファンドレイジングを頻繁に行いました。ユニフォーム姿でサポートをお願いする姿を直接国民が目にする事で、バヌアツ国民も、徐々にオリンピックというものを認識し始めたように感じます。同時に、着実に実力をつけていった彼女達。

2014年には、国際大会で3度優勝しました。彼女達の活躍に伴い、少しずつ、スポンサー、サポーターも集まりました。そして、オリンピックに向けて大事な2015年。ビーチバレーがんばれという空気がバヌアツ全体に流れ出し、盛り上がりつつあったその矢先に、あの巨大サイクロンPAMの襲来がありました。

彼女達も、他の多くのバヌアツ人同様、家を失いました。練習用のコートもなくなりました。とてもとても、練習なんてできる状況ではありませんでした。しかし、彼女達は、一ヶ月後にタイの大会へ向かいました。結果は2位。その翌週の大会にも出場し、なんと優勝したのです。サイクロン以降、久しぶりの明るいニュースでした。

彼女達の活躍がバヌアツ人の活力となり、サイクロンPAM復興のイメージーガールズとして、キャッチコピーの「VANUATU STILL SMILE(バヌアツは今も微笑んでいる)」を唱いました。また、その後、ユニセフ太平洋支部のイメージキャラクターにも任命されました。

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その後の試合結果は、アップダウンはあったものの、アメリカ、ロングビーチの大会では世界ランキング一位のブラジルを倒し、5位。これを受けて、2015年、バレーボール協会によって「最も印象に残った選手」に選出されました。

そして、オリンピックイヤーの今年。ランキング15位までのチームがオリンピックに出場できます。彼女達のランキングは18位〜19位を行ったり来たり。世界ランク5位のオランダを倒したりもしているのですが、なかなかランクインできません。Facebookのバヌアツビーチバレーのページには、毎試合、2人を応援し、たたえるコメントが送られました。バヌアツにいる多くの人が一試合ごとに一喜一憂した半年。そして、6月の最終戦。結局、最終ランクは18位で、ランキング上位での出場は逃しました。

ここから、彼女達の挑戦はさらに続きます。コンチネンタルカップという大会からもオリンピックの出場枠があります。6月下旬にオーストラリアで行われたアジアコンチネンタルカップで優勝するとオリンピック出場決定。もし、ここで、2位、3位になった場合は、さらに7月、ロシアで行われるワールドコンティネンタルカップの出場権を得、そこで優勝すれば、オリンピックの切符を手にする事ができます。ぎりぎりまで、彼女達の戦いが続きました。

アジアカップでは、準決勝でアジア最強の中国を破り、決勝進出。しかし、後一歩のところで優勝を逃し、2位となってしまいました。そして、進んだワールドカップ。決勝トーナメントまで進んだのですが、残念ながら、破れてしまいました。彼女達のリオ・オリンピックの夢は終わりました。しかし、誰もが、彼女達を誇りに思うと言っています。

1980年の独立以降、オリンピックには毎年参加していますが、どの選手も招待枠での出場です。バヌアツ共和国建国以来、一度も自力でオリンピック出場を果たした事がありませんでした。それを、彼女達は、寸前のところまで、やってのけました。彼女達の功績は、ビーチバレーだけでなく、バヌアツ全体のスポーツレベルの向上にも繋がっています。

リオ・オリンピックは、バヌアツは、招待枠で競技ボート、柔道、卓球でオリンピックに参加が決定しています。バヌアツ史上初の一勝なるでしょうか!

トップ画像:左リンリン、右ミラー ©相川梨絵

文中画像:2015年7月に横浜で行われた大会での2人 ©相川梨絵


この記事を書いた人
相川梨絵フリーアナウンサー・バヌアツ親善大使

1977年6月10日生まれ。茨城県出身。2000年、共同テレビに入社し、フジテレビアナウンス室へ出向。フジテレビアナウンサーとして、主に情報番組、バラエティ番組などで活躍。2006年、フリーに。2012年、結婚を機にバヌアツへ移住、バヌアツ親善大使に任命される。

相川梨絵

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