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.国際  投稿日:2024/8/15

37年ぶりに日本の大臣がやってきたバヌアツ


相川梨絵(フリーアナウンサー・バヌアツ共和国親善大使)

「相川梨絵のバヌアツ・ニュース」

【まとめ】

・伊藤信太郎環境大臣がバヌアツを訪問、レゲンバヌ環境・国家災害管理大臣と会談、

・日本が支援している気候変動や環境分野のプロジェクトを視察。

・ブルーカーボンやグリーンカーボンを含めた二国間クレジットの導入を検討。

 

近年、バヌアツ国内では、親交国による影響力の競り合いが顕著になっています。

特に、中国の影響力が強まる中、これに対抗するかのように、2018年には当時のチャールズ皇太子がバヌアツを訪問し、その後、昨年にはフランスのマクロン大統領が訪れました。そして今年7月にはアメリカ大使館が完成しています。このような背景からか、あるいは無関係かは定かではありませんが、ついに日本からも要人が訪れることになりました。

2024年8月8日から10日にかけて、伊藤信太郎環境大臣がバヌアツを訪問しました。日本の大臣がバヌアツを訪れるのは、1987年に外務大臣だった倉成正氏以来、実に37年ぶりのことです。今回の訪問の目的は、「気候変動に関する視察」とされています。

伊藤大臣はバヌアツのレゲンバヌ環境・国家災害管理大臣と会談し、その後、日本が支援している気候変動や環境分野のプロジェクトを視察しました。実は、この分野で日本はバヌアツに対して多岐にわたる支援を行っています。

バヌアツは、日本と同様に火山列島であり、地震や噴火、サイクロンなどの自然災害にしばしば見舞われます。これらの災害に対処するために、バヌアツの気象・地象災害局は重要な役割を担っており、日本は「広域防災システム整備計画」という無償資金協力を通じて、潮位計、風速計、震度計などの機材を提供し、地震・津波・高潮に関する観測、分析、情報伝達の強化を支援しています。また、「地震・津波・高潮情報の発信能力強化プロジェクト」により、防災情報が確実に伝達される体制の整備にも貢献しています。

▲写真 バヌアツの気象・地象災害局を視察する伊藤環境相(筆者提供)

さらに、サイクロン対策としては、ひまわり衛星画像の提供を通じて予報・警報発出能力の強化を図り、同時に人材育成も進めています。

環境分野では、以前に紹介した埋め立て式のごみ処理場「ブファ廃棄物最終処分所」の建設https://japan-indepth.jp/?p=11522)や、今年第3フェーズに入ったサント島のサラカタ川を利用した水力発電プロジェクトなどが進行中です。

また海洋分野では、「豊かな前浜プロジェクト」として、絶滅の危機に瀕していた夜光貝、高瀬貝、オオシャコ貝の増養殖や、観光客向けのサンゴ養殖体験施設の建設、人材教育などを通じて、バヌアツの豊かな海洋環境を守りながら、現地の生活向上を目指した取り組みも支援しています。

▲写真 豊かな前浜プロジェクトが行われているマンガリリウ村を訪問する伊藤環境相(筆者提供)

伊藤大臣との会談後、レゲンバヌ大臣にお話を伺ったところ、「日本が自然災害や環境分野でこれほど貢献していることを、伊藤大臣に直接見ていただきたかったのです。今回の訪問は、バヌアツの現状を知っていただき、日本の支援がどれほどバヌアツの人々の生活を安全にしているかを理解してもらう良い機会となりました。また、今後の日本とバヌアツの国際的な合意をお願いする場にもなりました」と語ってくれました。

さらに、新たなプロジェクトについて尋ねたところ、「ブルーカーボンやグリーンカーボンを含めた二国間クレジットの導入を日本に強く望んでいます。現在、どの企業や産業がバヌアツと協力できるかを特定しているところです」との回答があり、二国間クレジットが前向きに検討されていることが伺えました。

バヌアツの海には、世界的に絶滅が危惧されているジュゴンが生息しており、そのエサとなるアマモも豊富に繁殖しています。ブルーカーボンは、バヌアツにとって重要な資源であり、この分野での二国間クレジットが実現すれば、日本にはバヌアツの海を守る責任が生じます。

▲写真 サンゴの養殖体験をする伊藤環境相(筆者提供)

ただ、バヌアツに住む日本人として心苦しいのは、福島原発処理水の海洋放出問題です。PALM10でも日本側は安全性に問題はないと説明しましたが、バヌアツ国内でも多少の懸念があることは事実です。残念ながら、今回の大臣会談でこの問題が話題に上ったかどうかは確認できませんでした。

何はともあれ、伊藤大臣もバヌアツの人々の優しさやコミュニティの強さに感銘を受け、訪問を楽しまれている様子でした。今後、バヌアツと日本の絆がさらに深まることを期待しています。

トップ写真:バヌアツのレゲンバヌ環境大臣と伊藤信太郎環境大臣(筆者提供)




この記事を書いた人
相川梨絵フリーアナウンサー・バヌアツ親善大使

1977年6月10日生まれ。茨城県出身。2000年、共同テレビに入社し、フジテレビアナウンス室へ出向。フジテレビアナウンサーとして、主に情報番組、バラエティ番組などで活躍。2006年、フリーに。2012年、結婚を機にバヌアツへ移住、バヌアツ親善大使に任命される。

相川梨絵

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