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.国際  投稿日:2021/6/27

バヌアツから東京五輪へ ボート選手インタビュー


相川梨絵(フリーアナウンサー・バヌアツ共和国親善大使)

「相川梨絵のバヌアツ・ニュース」

【まとめ】

カヌー・バヌアツ代表・リリオ・リオ・リィ選手、五輪初出場。

・「ローイング(ボート)は、体力よりも、頭と心のスポーツ」とリオ選手。

・五輪という大舞台で、小さな楽園バヌアツのハイレベルを見せたい。

 

東京オリンピック開幕まで1カ月を切った。

南太平洋のバヌアツからオリンピック出場選手を紹介するシリーズ。

今回は、リリオ・リオ・リィ(Rillio Rio Rii)選手。早口言葉のような名前の彼、通称リオ選手。

1994年6月22日生まれ、27歳。ボート(rowing:「ローイング」バヌアツでは通常ボートよりこちらの呼称が使われる)のシングルスカルに出場する。

Q. ローイングとの出会いは?

リオ選手: ローイングを始めたのは2012年です。最初はクリケットをやっていました。ある時、友達と一緒にローイングを体験してみて、面白くて、クリケットとローイングを行ったり来たりしていたけど、結局僕は、ローイングにはまりました。もう10年になります。メンタルも含めて、今は生活のすべてがローイングです。

Q. ローイングはお金がかかりませんか?

リオ選手: 一艇80万バツくらい(1バツ=約1円/2021年6月、外務省ホームページより)。ありがたいことにバヌアツには、ローイングアソシエーション(=ボート協会)があって、20艇のボートがあります。僕は、それを使わせてもらっています。

Q. バヌアツ・ローイングアソシエーションとは?

リオ選手: 2008年にバヌアツに住んでいたドイツ人が設立しました。彼が少しづつボートを増やしていきました。常にスポンサーを募ったり、ガラナイトを開催して資金を集めています。現在、バヌアツ人のメンバーは約60人います。学生もたくさんいます。コロナ以前は、定期的に大会も開催してました。

▲写真 リオ選手の競技用ボート。提供:筆者

Q. ローカルカヌーはバヌアツ人の生活の一部ですが、ローイングは違う?

リオ選手: 全く違います。カヌーは2タイプあって、ローカルカヌーは、オールをボートの片方だけで漕ぐけど、ローイングは2本のオールを使って両側で漕ぎます。後、ローカルカヌーは、前に進むけど、ローイングは後ろに進みます。

▲写真 ローカルカヌーの様子。ローイングとは漕ぎ方も進む方向も異なる。提供:筆者

Q. 練習のスケジュールを教えてください

リオ選手: 日曜日以外は毎日練習。毎日午前と午後2時間半水の上で練習しています。

Q. 働く時間はありますか?

リオ選手: 以前は、朝4時半に起きて、トレーニングに行って、8時に仕事に行って、昼にまたトレーニングしてという生活をしていましたが、今は、ローイングだけに専念しています。空いてる時間もローイングの勉強をしていて、働く時間がありません。

Q. 世界大会に行ったことはある?

リオ選手: 4つのチャンピオンシリーズに出場しました。ブルガリア、フランス、イタリアとあと一か国ヨーロッパの国に行きました。

2018年イギリス連邦によるコモンウェルス・ゲームズ(※英連邦に属する国や地域が参加して4年ごとに開催される総合競技大会)では、バヌアツで初めて金メダルを取りました。表彰台の一番上でバヌアツの旗を持った時は言葉が出ませんでした。感動しました。

Q. 東京オリンピックは初めてのオリンピック?

リオ選手: はい。本当は、5月の日本の大会に行って、オリンピックの出場権利を取るはずでした。でも、この状況で、フライトが制限され、ニューカレドニア経由もグアム経由もダメになってしまいました。それでも、あきらめずにバヌアツに残ってトレーニングを続けました。そして、ワイルド・カード(特別出場枠)を得ました。ワイルド・カードで出場が決まった時は、本当にうれしかったです。

▲写真 「メンタルも含め、生活のすべてがローイング」と語るリリオ・リオ・リィ選手。提供:筆者

Q. 調子はどうですか?

リオ選手: 調子はいいです。気持ちも強く持っています。ベストを尽くします。小さな国から出場するけど、やりますよ! いつも海外へ行くと「バヌアツってどこ?」って聞かれるんです。バヌアツは小さな楽園だけど、スポーツはハイレベルなところを見せたいですね。

Q. コロナフリーのバヌアツを出る不安はありますか?

リオ選手: ワクチンは打ちました。常にマスクをして、手洗いなどの決まりを守れば大丈夫だと思います。

Q. オリンピックの目標は?

リオ選手: レースに勝つこと。自分に勝つこと。そして、タイムで自己ベストを更新したい。

ローイングは、体力よりも、頭と心のスポーツだと語るリオ選手。

その場その場の状況で、自分で考え、判断しなけばならないのだと。彼のインタビューからはローイングへの情熱とバヌアツ愛がひしひしと伝わってくる。オリンピックという大舞台で小さな国バヌアツの存在をしっかりアピールしてほしい。

トップ写真:リリオ・リオ・リィ選手 提供:筆者

【訂正】2021年6月29日(編集部)

記事中「カヌー」と表記していた部分を、「ローイング」に変更しました。このオリンピック競技種目の表記は、日本では「ボート」です。リオ選手はインタビューで“rowing”(ローイング:漕ぐの意味でボート競技のこと)という単語を使っていたので、今回、「ローイング」で統一しました。




この記事を書いた人
相川梨絵フリーアナウンサー・バヌアツ親善大使

1977年6月10日生まれ。茨城県出身。2000年、共同テレビに入社し、フジテレビアナウンス室へ出向。フジテレビアナウンサーとして、主に情報番組、バラエティ番組などで活躍。2006年、フリーに。2012年、結婚を機にバヌアツへ移住、バヌアツ親善大使に任命される。

相川梨絵

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