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.国際  投稿日:2021/7/12

小さな楽園の五輪出場にもコロナの影


相川梨絵(フリーアナウンサー・バヌアツ共和国親善大使)

「相川梨絵のバヌアツ・ニュース」

【まとめ】

・3大会連続出場のバヌアツ卓球選手「世界のレベルと全然違う」。

・コロナによる規模縮小、練習も影響を受け、嬉しいが興奮できず。

・日本のコロナ感染拡大を受け、バヌアツはパラリンピックを辞退。

 

バヌアツ代表オリンピック出場選手のインタビュー。

最後は日本人のルーツを持つヨシュア・シン選手

1993年6月20日生まれ。卓球男子シングルスに出場する。

 

Q. 卓球を始めたのはいつ?

ヨシュア・シン選手: 10歳の時です。母がスポーツ好きで勧められました。最初は好きではありませんでした。でも、やっているうちに上達して、それ以来ずっと続けています。

▲写真 ヨシュア・シン選手。海外遠征時に新調するラケットのラバーはおととし以降新調できないままという。(著者提供)

Q. バヌアツで卓球は人気?

ヨシュア・シン選手: ほとんどの人が知りません。卓球は難しいから、多くの人がサッカーやバスケットボールをしていますね。やっている人は、15人くらい。道具もバヌアツでは手に入りません。僕のラバーもおととし(2019年)に買った時のままです。海外に行ったときにいつも新調しています。

Q. 東京オリンピックが、初めてのオリンピックではないですよね?

ヨシュア・シン選手: 3回目です。2012年ロンドン大会、2016年リオ大会、そして今回の東京大会です。

Q. それぞれの思い出は?

ヨシュア・シン選手: 特に2012年のロンドン大会が思い出深いです。初めてのオリンピックで練習も懸命にしました。出場が決まった時はうれしくて、興奮して、涙が出ました。もちろん、リオも嬉しかったです。でも今回は、ちょっと違います。嬉しいけど、興奮はしていません。コロナで規模が縮小されて、規制も厳しいので。

Q. リオ・オリンピックでは旗手を務めましたが?

ヨシュア・シン選手: すごいことです!忘れることができません。バヌアツの旗をこの手で持つことができて、とても誇らしかったです。

▲写真 リオ大会で旗手を務めるヨシュア・シン選手(2016年)@Yoshua Shing

Q. チーム・バヌアツのリーダー?

ヨシュア・シン選手: それは、わからないです。でも、今回は、他の2人(リオ・ヒューゴ)に譲りたいです。彼らは初めてのオリンピックですから。若いし、彼らが経験してくれたら嬉しいですね。

Q. 東京オリンピックの旗手は決まってますか?

ヨシュア・シン選手: まだ決まっていません。もうすぐに決まるんじゃないかな?たぶんリオだと思います。もし、僕が選ばれたとしても、彼らに譲ります。

Q. 調子はどうですか?

ヨシュア・シン選手: 普段は海外での試合の前は、その国で調整をしています。本当は1月から日本に入って気候に慣れたり、日本のハイレベルな卓球の環境でトレーニングしたかったです。

バヌアツには、同じレベルの選手しかいません。練習も真剣というより、楽しんでやっている感じです。また、家族もいるので、卓球のプライオリティが低くなってしまいます。今回のオリンピックは今までと全然違う。道具も古いままですし、練習場所もできるところでやるしかありません。

Q. 心配ですか?

ヨシュア・シン選手: ちょっと心配です。オリンピックはレベルが高い。僕の目標は1セットとること。僕は、バヌアツではトップだけど、世界とはレベルが全然違います。

▲写真 バヌアツ卓球男子シングルス代表のヨシュア・シン選手。(著者提供)

Q. 親戚に日本人がいると聞きましたが?

ヨシュア・シン選手: ひいおじいちゃんが日本人です。シンジ・ナガミネといいます。兵隊でした。第二次大戦の後にバヌアツに来ました。

Q. 日本のイメージは?

ヨシュア・シン選手: 日本大好き!食べ物も!人も!人はとても親切です。ほかのアジアにも行ったことがあるけど、日本が一番ですね。日本人はとても人を尊重する。僕は日本人を尊敬しています。

Q. 行ったことありますか?

ヨシュア・シン選手: 2回あります。6週間、スポーツの学校でのトレーニングのためでした。レベルがとても高かった。それと、ラーメンがおいしかったです!!

Q. 世界ランキングは。

ヨシュア・シン選手: 2016年は256位。これが僕のベストランキング。今は、海外の試合に出られないので、順位が下がっていると思う。

Q. あなたはミュージシャンでもありますね?

ヨシュア・シン選手: はい。私はミュージシャンです。音楽はマインドにいい。心を落ち着かせてくれます。また、資金面でも音楽に助けられています。家賃や食費は音楽で稼いでいます。

▲写真 ヨシュア・シン選手はミュージシャンでもある。(著者提供)

Q. バヌアツのリーダーとして、他の2人にアドバイスはありますか?

ヨシュア・シン選手: 自分のベストを尽くすこと、に尽きます。オリンピックは、ハイレベルだから、自分たちのベストを尽くすことに集中すべきです。

 

このインタビューをした直後、バヌアツの東京パラリンピック辞退のニュースが飛び込んだ。理由は、帰国便の確保が難しいことと日本のコロナの現状が厳しいという判断だそうだ。

オリンピックは今のところ予定通り参加の方向だが、出発するぎりぎりまで、正直、どうなるかわからない。選手の思いを聞いてきただけに、今、祈るような気持ちでいる。

トップ写真:2016年のリオ・オリンピックに出場したバヌアツ選手団。右から4人目がヨシュア・シン選手。@Yoshua Shing




この記事を書いた人
相川梨絵フリーアナウンサー・バヌアツ親善大使

1977年6月10日生まれ。茨城県出身。2000年、共同テレビに入社し、フジテレビアナウンス室へ出向。フジテレビアナウンサーとして、主に情報番組、バラエティ番組などで活躍。2006年、フリーに。2012年、結婚を機にバヌアツへ移住、バヌアツ親善大使に任命される。

相川梨絵

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