[宮家邦彦]外交・安保カレンダー(2014年2月3日-9日)
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
今週はロシアのソチで冬季オリンピックが開かれる。一部競技は6日から始まるが、開会式は7日だ。ソチというと、イスラム過激派によるテロが心配になる。内外のイスラム過激派は本気だ。奴らがソチを虎視眈々と狙っていることだけは間違いない。
元々、この町(ソチ)は15世紀までジョージア(グルジア)に属していた。その後同地はオスマン帝国の一部となり、1829年にはロシアに割譲されている。実に数奇な運命に弄ばれた保養地だ。本来はテロとは無縁の筈だが、とにかく場所が良くない。
ロシアのコーカサスに近い。ダゲスタン、チェチェン、イングーシ等の様々な過激勢力が反政府活動を続ける。彼らはソチのオリンピックを阻止するため、既に周辺地域でテロのオリンピックを始めている。大会中に何も起きないことを神に祈るしかない。
安倍首相は、ロシアの人権政策に抗議する欧米首脳が軒並み欠席する中、開会式に出席し、8日にはプーチン大統領と会談する。北方領土の日と重なるため一時は開会式欠席も考えたようだが、それにしても、欧米諸国との対応の違いが際立つ。
確か過去一年間で5回目の会談と記憶する。勿論、これで北方領土問題が急転する訳はないだろうし、ロシアの対日戦略が直ちに変わるとは思わない。だが、この会談回数の積み重ねは過小評価できない。いずれ何らかの化学変化を起こすだろう。
7日にはワシントンで日米外相会談が開かれる。これが米国との関係改善につながることを期待しよう。また、ケリー国務長官が2月中に中韓両国を訪問するとの情報もあるようだが、バイデン副大統領の二の舞だけは御免蒙りたい。
今週の国内のハイライトは9日の都知事選だろうか。先週筆者は米国出張のため日本国内の雰囲気が読めなかったが、どうやら「旋風」や「フィーバー」は起きていないらしい。東京都の有権者は予想以上に健全な常識を持っているのだろうか。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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