[石川和男]都知事選で『原発』を語るなら、都民の電気料金負担の軽減を主張すべきだ〜都民は都知事に都政を任せたいのであって国政への脱原発を叫ばせたいわけではない
石川和男(NPO法人社会保障経済研究所理事長)
来る2014年2月9日の東京都知事選挙の候補者が概ね出揃ったようだ。田母神俊雄元航空幕僚長、細川護熙元首相、舛添要一元厚生労働相らが名を挙げている。選挙と言えば「争点は何か?」となる。
今回の都知事選では、“脱原発”が争点になる様相を呈している。今の日本の世情からすれば、“脱原発”が選挙の争点になることには違和感がないと一瞬思ってしまうかもしれない。だが、よくよく考えると、都知事選の争点に“脱原発”が掲げられることは、甚だ奇妙なことなのである。
原発を巡っては、東日本大震災による福島原発事故以来、“脱原発”を叫ぶ空気が濃くなっている。少なくとも、マスコミ報道ではそのような論調が広がってきているように感じる。しかし、原発政策は国政マターであり、都政マターではないのだ。都知事選で脱原発を掲げた候補者が勝てば、国政に影響を及ぼし、“脱原発”が実現する——。そんなふうに思う人は少ないかもしれない。しかし、国政は国政、都政は都政である。都知事が東京都以外の、例えば北海道や九州の原発の存廃について言及することにどんな効果や意義があるというのか。
都知事が都議会での答弁や都庁での記者会見で“日本全国脱原発だ!”と叫ぶことが、都知事の任務に当たるというのか。都民は、都知事に都政を任せたいのであって、権限のない国政への叫びをさせたいのではないはずだ。だから、都知事選の公約に“脱原発”が掲げる候補者は空手形を切っているとしか思えない。
では、都知事には原発政策を語る資格は皆無なのかというと、決してそんなことはない。東京都は東京電力の株主である。保有割合は「1.2%」しかないが、都民の代表として、一昨年値上げされた電気料金の早急な値下げのための提案をしたり、再生可能エネルギーへの取組みに関する提起をしたりすることは、むしろ株主の行動としては相応しい。そして、値下げ提案の一環として東京電力の保有する原発の運営を適正化していくべき旨を呈示することも十分あり得る。
都知事選で『原発』について語るのであれば、都民の電気料金負担を軽減することを前面に押し出すべきだ。これこそが、都知事選における『原発』の正しい語り方である。
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