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.政治  投稿日:2017/2/26

女性政治参加、次は「クオータ制」


「細川珠生のモーニングトーク」2017年2月25日放送

細川珠生(政治ジャーナリスト)

Japan In-depth編集部(坪井映里香)

安倍政権が女性活躍を推進している中、現在女性の衆議院議員の割合は全体の10%にも満たない。そういった現状を打破しようと考える超党派の「政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟」会長の中川正春衆議院議員に話を聞いた。

議員選挙の候補者数を男女で「出来る限り均等」にするよう政党に促す「政治分野における男女共同参画推進法案」が今国会で成立する見通しとなっているが、あくまで「理念法」。議員連盟としては、ゆくゆくは「もう一つペアとなる法律があって、それを通すことによってクォータ(割り当て)という形」をとっていきたいとした。今回の法案を提出したきっかけは2つあるという。

まず政治ジャーナリストの細川珠生氏が議連の活動の原点を訪ねると、中川氏は、「もともと日本は女性の(すべての分野での)社会参画がなんでこんなに遅れているんだろうという問題意識があった。」と答えた。政治分野以外のそれぞれの分野では、「今の政権だけでなく10何年か前から目標を作ってやってきた」現状があり、それを踏まえて「政治分野でも新たな法律で目標を作ってやっていこう」ということになったという。

もう1つは、「このままなんの制度改革あるいは基本的な枠組みを作らなくても行けるかどうかということになると、どうも今の日本の遅れ方からいくとだめだろう。」との認識があったことを明らかにした。海外では、特別に女性の枠(全体の○○%は女性にしなければならない、など)を作って女性が入っていきやすいように制度化する、いわゆる「クオータ制」を導入してきた国が多い、と中川氏は指摘した。

そうした国々では、「クオータ制」を作った後、全体に及ぼす女性の影響力が出てきて自立し、制度がなくても自然と女性が入ってくるようになってきた歴史があるという。中川氏は、「そういう形が世界の流れの中でわかったものだから、じゃあ日本でもやっていこう。」と法案提出の経緯を述べた。また、中川氏は、市民団体の働きかけも大きかったと指摘した。

それに対し細川氏は、「そもそも女性はそこまでは望んでいなかったり、望んでいない理由として、家事や育児あるいは介護と仕事をうまく両立させていくためにはそこまでの責任は負えないこと。両立できる範囲内で社会とかかわる、あるいは社会で自分の能力を発揮できる場があればいいのに、というのが、政府が進めてきたことに対する女性の本音として多いというのがある。」と指摘した。

まずそもそも女性に家事や育児、介護などの負担が行きがちな社会に問題があり、「社会そのものが変わらない限り女性が男性と同じように働きあるいは責任を負い活躍するというのは難しいと思う。」と述べた。

中川氏はそれに対し、「その意識がないと変わらない。それが女性の視点なのでそれを国会の中に反映させることが必要。」と述べた。その上で、「この法律は理念法で、女性が頑張る環境作らなきゃいけませんよ、という理念だけの話。具体的にやろうと思うとペアになっている法案を通すことにより「クオータ」という形で、例えば政党が意識を決めたら、衆議院の比例代表を男・女、男・女、と半分くらいずつに持っていくことができますよ、というところまで私たちは行きたい。まだそこまでは行っていない。」と述べ、次の段階として「クオータ制導入関連法案」の成立が必要との考えを強調した。

中川氏は、現在女性議員が40%を超えているという北欧の国々も「30年40年前まではそういう状況ではなかった。」と述べた。それが、「福祉国家という形で国を運営していくことを国民のコンセンサスとして決めた時点で状況が変わって、やっぱり女性が必要だということになって施策の中で女性議員が増えた。」という。

その過程で、例えば男性も育休を取りやすくなったり、生まれたときから保育などのケアを受けられる子供たちの環境が変化したりした。同時に、男性も子供の送り迎えを会社で段取りしながらできるなど、家庭の中でいろいろなことを担いやすくなったという。「最初は女性のためにとやってきたが、今振り返って考えてみたらこれは女性のためにやってきたというよりも同じ条件で男性もそれにのっている。結果的に人間性を取り戻すことができた。」と中川氏は北欧の人々が感じていることを紹介した。

また中川氏は、「働くことがすべてではなくて、いかに時間配分の中で家庭を楽しんでいくか、仕事だけじゃなくて自分の世界をそこから見出していくような成熟社会」が女性の参画によって実現できる、と述べた。

細川氏も中川氏の話を聞き、女性活躍推進の風潮を「女性のための法律、女性のために男性が手伝うという意識だった」としたが、「そうではなくてそれぞれ男性でも女性でも個人の生活や家族との時間を大切にできる社会を目指して、女性の視点が入ることによって社会が変わっていくきっかけととらえる。」と考えるべきだとした。

(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2017年2月25日放送の要約です)

「細川珠生のモーニングトーク」

ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分

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トップ画像:©Japan In-depth 編集部


この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト

1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。

細川珠生

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