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.国際  投稿日:2017/8/10

トランプ陣営「リアルニュース」発信


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・8初旬、トランプ陣営「リアルニュース」をネット上で配信開始。

・政権の実績として経済政策や移民政策について報じ、トランプ氏 がフェイクニュースと断じる既存メディアに対抗。

・保守的な共和党トランプ支持層の支持率が上がっていないことが背景か。

 

トランプ陣営が8月はじめから独自のニュース発信を始めた。「本当のニュースReal Newsとも呼ばれるこの発信は毎週1回、プロのジャーナリストにより、トランプ政権の真の実績を一般アメリカ国民あてにソーシャルメディアでニュースとして伝えるという。その動機はもちろんトランプ大統領を敵視する民主党傾斜の主要メディアへの対抗である。

トランプ大統領の再選委員会の非公式組織は共和党全国委員会の協力を得て、トランプ政権の動向についての「今週のニュース」というビデオ報道番組の発信を開始した。第一回目は8月5日にテレビ報道記者のケイレイ・マケナニー(Kayleigh McEnany)氏をキャスターとして流された。

同氏はCNNなどのテレビで活動してきた保守系の女性ジャーナリストで、このトランプ陣営の新放送の開始に先立ち、CNNとの契約を解消した。

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写真)ケイレイ・マケナニー氏

Kayleigh McEnany

at the 2017 CPAC(The Conservative Political Action Conference in National Harbor, Maryland Photo by Gage Skidmore

この「今週のニュース」はトランプ陣営や共和党組織の側では「本当のニュース」番組とも呼ばれている。マケナニー氏はこの番組の初回の冒頭で「みなさんの参加を感謝します。私はケイレイ・マケナニーです。これが『本当のニュース』です」と呼びかけた。

番組はフェイスブックやツイッターというソーシャルメディアで流される。初回の内容はトランプ政権が進める一連の経済政策や移民対策の紹介が主体だった。ニューヨーク・タイムズやCNNなど反トランプ系メディアがほとんど報じない政権の前向きな「実績」や「目標」を報じることを目指しているという。初回の番組はニューヨークのトランプタワーで作成された。

マケナニー氏は8月はじめ、同時に共和党全国委員会の報道官にも任命された。同委員会もこの新しいトランプ政権についての「今週のニュース」への支援を表明している。同氏はこの新番組では単にトランプ政権の動向に限らず、共和党側の保守的な価値観についても詳しく語っていきたい、と述べた。

トランプ陣営のこうした動きは明らかに敵対的な主要メディアの報道でトランプ大統領への一般の支持率が下がることへの対抗策だといえる。同大統領は8月7日にも自分自身のツイッターで「1週間7日、1日24時間のCNN、ABC、NBC、NY-TIMES、WASHINGTON POSTでのフェイクニュースにもかかわらず、トランプ支持層はより強くなっていることは信じがたい」という挑戦的な書きこみをしていた。

しかし最近の一部の世論調査では年来の保守的な共和党トランプ支持層の間の支持率もそれほど上がっていないという結果も出ており、主要メディアのキャンペーン的な反トランプ報道の効果に大統領自身をも含むトランプ陣営が懸念を増していることも事実だといえる。だから今回の「今週のニュース」も実際には一般米国民というよりも保守系のトランプ支持層の離反を防ぐための新たな広報作戦だともみられている。

いずれにしても民主党傾斜の主要メディアとトランプ大統領との熾烈な戦いはなお続くということだろう。

トップ画像:トランプ氏Facebookページより

※記事中動画・写真が表示されない場合は、http://japan-indepth.jp/?p=35451で記事をお読みください。


この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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