拉致被害者救出急げ!日本独自の交渉を
「細川珠生のモーニングトーク」2017年9月23日放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth 編集部(大川聖)
【まとめ】
・日本は北朝鮮との国交正常化ではなく拉致被害者救出を最重要課題とすべき。
・北朝鮮を経済的に苦しい状況に追い込み、水面下の交渉で拉致被害者を救出する。拉致交渉はミサイル・核開発問題を解決するきっかけともなり得る。
・日本は拉致問題を解決し、北朝鮮と国際社会との間を取り持つ役割を担う必要がある。
【編集部注:このインタビューは2017年9月19日に行われたものです】
ミサイル発射と核実験を受け、国連安全保障理事会の全会一致で北朝鮮に経済制裁を科すことが決定した。しかし、北朝鮮はこれまでも度重なる制裁に対してミサイル発射をやめなかった。そして、未だ解決しない拉致問題。日本は北朝鮮に対しどういった態度をとるべきか、拉致問題担当首相補佐官、拉致問題担当大臣も経験した、日本のこころ代表で参議院議員の中山恭子氏に政治ジャーナリストの細川珠生氏が話を聞いた。
■ 北朝鮮に対する制裁
国際社会は次々と経済制裁を強化してきた。「次に打つ手はあるのか?」と細川氏が質問した。これに対し中山氏は「制裁の意味は、ミサイルや核開発のことではなく、北朝鮮の国内で経済的に困難をきたすといった状況に追い詰めようとしている。北朝鮮はこれまでの経験から非常に困った状態にならないと話し合いをしてこない。北朝鮮に対し、脅しではなく本来の意味の話し合いに応じるかどうか、そのために制裁を科しているのがもう一つの目的である。」と答えた。
■ 拉致問題に対する認識
細川氏は「トランプ大統領は、『全ての選択肢を排除しない』と言い、軍事行為もあり得るようなことを言っている。」「一方で日本は、拉致問題も抱えている。アメリカがやることにすべてついていくということでよいのか。拉致被害者を取り戻すための日本独自の行動が必要なのではないか」と質問した。
中山氏は「その通りだ。日朝国交正常化を進めることは今の日本にとっては全く重要な問題ではないとはっきり日本政府が決断する必要がある。これまで政府は日朝国交正常化のための行動をとってきたが、拉致被害者を救出することが最重要で最優先課題であることを政府はもう一度認識しておく必要がある」と強調した。
これに対し、細川氏は「まだ(拉致問題に対する)認識は共通のものになっていないということか」と質問すると、中山氏は「なっていない。平壌宣言、ストックホルム合意は両方とも拉致問題については全く冷たい合意であった。拉致被害者を救出するという考え方は全く入っていない日朝間の合意である。」と答えた。
さらに中山氏は「一度国会で安倍総理に『いざという時に拉致被害者を救出するために日本の自衛隊が現地に入れるか。』と質問したことがある。これに対し、(安倍総理は)『今の自衛隊法では、自衛隊が受け入れ国(北朝鮮)の了解なしに救出のために北朝鮮領域に入ることはできない。アメリカか韓国の軍に拉致被害者を国境まで連れてきてもらうしかない。国境から外に出た段階で自衛隊は救出に当たることができる。』と答えた。」と述べた。
これに対し細川氏は「アメリカか韓国がやってくれるかどうかわからない」と懸念を示した。中山氏は「(自国民を自らの手で助けるという)普通の国ができることを日本はできない。(日本が)普通の国ではないことが、非常にはっきりと総理の口から示された。」と指摘した。
■ 拉致交渉
細川氏は「軍事行動ではなく、経済的に追い込んで拉致交渉しないと拉致被害者たちが無事に帰ってくるのは難しいということか。」と質問した。
中山氏は、「これまでも外務省以外、拉致関係者は(交渉を)行っていると思っているが、一刻の猶予もない。北朝鮮と外交交渉ではなく、水面下の交渉で拉致被害者を解放するように(求める)。日本が今の立場と違う立場で北朝鮮と交渉すれば、他の国々に対しても間を取り持つことができることをわからせた上で、拉致被害者を救出し帰国させる。北朝鮮が帰国という単語が嫌であれば、拉致被害者全員を日本に『出張』させることで、元のところに戻す作業を進める。今ある意味では大きなチャンスといえる。」との考えを示した。
また、「この状況下で、政府の中で拉致被害者を救出することに焦点を当てたチームで、北朝鮮と水面下で外交交渉ではない、“救出のための交渉”を直ちに強い意志で進めていかなければならない。」と改めて強調した。
細川氏は「北朝鮮の核問題を解決するためにも日本の交渉が大きな前進のきっかけになる可能性も十分にある」と述べた。
これに対し中山氏は「非常に難しい交渉で危険もあるだろう。日本としてやれることは被害者を救出するための北朝鮮との交渉であり、さらに北朝鮮に対して国際社会とつないでいく役割も必要になってくる。」と指摘した。
また、「日本はどうしても軍事力・防衛力についてはアメリカと共にやらなければならない状況で、日本は交渉できることはないと思っていたが、むしろそうではない。視点を変えて覚悟を持ちさえすればこの局面を打開できる。」と述べた。
中山氏は「今の日本に欠けているのは国民を守るということが憲法に書かれていないことだ。国が国民を守ることは当たり前のことである。日本の中では当たり前でないのが現状である。人々の考えが国際社会の考え方に近づいてほしい。」との考えを示した。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2017年9月23日放送の要約です)
「細川珠生のモーニングトーク」
ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分
ラジオ日本HP http://www.jorf.co.jp/index.php
細川珠生公式HP http://hosokawatamao.com/
細川珠生ブログ http://tamao-hosokawa.kireiblog.excite.co.jp/
トップ写真:©Japan In-depth 編集部
あわせて読みたい
この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。