2017総選挙ファクトチェックプロジェクト
国際  投稿日:2017/9/23

覚悟決めた米日、迷走する韓国(下)

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朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

【まとめ】

・日韓は米との「圧力路線」か、北の核保有を認める「対話路線」かの二者択一を迫られている。

・日米韓の足並みを乱すのは金正恩の脅迫に怯える韓国の文在寅大統領だ。

・北朝鮮の核放棄の為に、日韓核保有のオプションも検討に値するだろう。

 

<注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真の説明と出典のみ残っていることがあります。その場合は、http://japan-indepth.jp/?p=36256で記事をお読みください。>

 

2. 決断迫られる日韓

北朝鮮は米国だけでなく日韓に対しても度を越した脅迫を行っている。「取るに足らない日本列島の4つの島を核爆弾で海中に沈めるべきだ。日本はもはや、われわれの近くに置いておく存在ではない。」と威嚇し、韓国に対しても、人々が「集中射撃で親米逆賊集団を掃討しよう」と叫んでいるとした。

米国と同盟国の日本と韓国は米国の圧力路線と共に歩むのか、それとも軍事行動のリスクを恐れて北朝鮮の核保有を認める「対話」に進むのかの二者択一に迫られている。

軍事行動に至れば人的・物的被害が多大であり、核保有を容認すれば北朝鮮の核に脅かされ続ける身の上とならなければならない。どちらを選んでも日韓両国にとっては深刻極まりない道だ。しかしこのどちらかを受け入れなければならない時が来ている。 

これは日韓両国にとってある意味戦後最大の決断に迫られていると言えるだろう。すでに韓国国内の投資家たちの間では、北朝鮮の核問題をこれまでとは違った角度から注目する動きも出始めている。

 

1)腹くくった安倍総理

安倍晋三首相は9月20日午後(日本時間21日未明)の国連総会で一般討論演説を行い米国との協調を鮮明にした。核・ミサイル開発を進める北朝鮮について、全加盟国に「必要なのは行動だ」と述べ、安全保障理事会の制裁決議を完全履行するよう求めた。

演説のほぼ全てを北朝鮮問題に費やす異例の内容で「脅威はかつてなく重大だ。完全に差し迫ったものだ」として危機感の共有を図った。

安倍首相は1994年の米朝枠組み合意、2005年の6カ国合意の裏で北朝鮮が核開発を続けてきたと説明し「対話とは北朝鮮にとって、われわれを欺き、時間を稼ぐため、むしろ最良の手段だった」と批判。北朝鮮との対話は、完全で検証可能で不可逆的な核・弾道ミサイル計画の放棄が条件となるとした上で「そのため必要なのは対話ではない。圧力だ」と述べた。

また、トランプ政権の「全ての選択肢はテーブルの上にある」とする対北朝鮮政策について米国を「一貫して支持する」と強調。北朝鮮の脅威に対して「日本は日米同盟、日米韓3カ国の結束によって立ち向かう」と語った。

一方、安倍首相は北朝鮮による拉致問題にも言及した。19日の一般討論演説で拉致された「13歳の少女」に触れたトランプ米大統領と同様に横田めぐみさんの名前を挙げ「一日も早く祖国の土を踏み、父や母、家族と抱き合うことができる日が来るよう全力を尽くす」と宣言した(産経新聞2017.9.21 09:01)

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▲写真 横田めぐみさん 出典:政府拉致問題対策本部「拉致された13歳の少女横田めぐみさん

安倍晋三首相は9月17日(現地時間)にも、米ニューヨークタイムズ(NYT)に「北朝鮮の脅威に対抗する連帯」(Solidarity Against the North Korean Threat)と題して寄稿「北朝鮮とさらなる対話は行き詰まりの道」とし、強力な対北朝鮮圧力を国際社会に促した。

 

2)金正恩の脅迫におびえる文大統領

安倍首相と対照的なのが韓国の文在寅大統領だ。対北朝鮮安保政策での迷走で米日からだけでなく韓国民からも非難が噴出し始めている。文政権は口先では最大の圧力に同調すると言いながら、北朝鮮が6回目の核実験を行った直後に人道支援だと言って北朝鮮に対する800万ドルの支援を決定した。この面従腹背の行動にはさすがに韓国民も唖然としている。

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▲写真 日米韓首脳会談に臨む韓国文在寅(ムン・ジェイン)大統領 右は康京和(カン・ギョンファ)外交部長官 2017年9月21日 出典:KOREA.net

北朝鮮の挑発に断固たる姿勢で臨まなくてはならない米日韓協調において足並みを乱しているのが文大統領だ。トランプ大統領は文在寅政権に対して「物乞いのようだ」と痛烈に批判したと言われるが、この発言に反論する余地はない。

この不協和音は、一言で言って、北朝鮮にシンパシーを感じるだけでなく、金正恩の戦争脅迫におびえる文在寅氏の本質的弱点がもたらしたものである。まさにそこを突くことそが金正恩式心理戦の狙いと言える。北朝鮮が完全に核ミサイルを完成させれば、文政権によって米日韓協調体制が崩される可能性は否定できない。韓国国民の安保不安は日増しに深まるばかりだ。

こうした中、文在寅大統領の支持率は4週連続で低下し、60%台に落ちている。世論調査会社リアルメーターの11-13日の調査の結果(66.8%)に続き、韓国ギャラップの12-14日の調査の結果(69%)でも支持率低下は鮮明だ。支持率を背に国政運営をしてきた文政権としては、1カ月間続いた支持率低下は深刻だ。

 

3. もう一つの圧力路線−日韓核保有

日韓には制裁強化以外に隠れたもう一つの圧力路線がある。それは核保有に進むことだ。核には核で抑止する以外に方法がないとのセオリーによるものである。すでに韓国では国民の60%が核保有に賛成している。韓国野党の「自由韓国党」は、1991年の「南北非核化合意」によりに撤去した「戦術核」の受け入れを主張し1000万人署名運動に乗り出している。米国はこの動きに否定的対応を示しているがその可能性を完全に否定していない。

韓国の宋永武(ソン・ヨンム)国防長官訪米時マティス国防長官との会談韓国への戦術核の再配備や原子力潜水艦配備問題についても言及した(韓国大統領府は否定的)。

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▲写真 韓国宋永武(ソン・ヨンム)国防長官と米マティス国防長官 米国防総省 2017年8月30日 DoD photo by Air Force Staff Sgt. Jette Carr

米NBC放送は9月8日(現地時間)、ホワイトハウスと軍関係者の話を引用し、「韓国の要請があれば、トランプ政権が韓国に戦術核を配備することも排除していない」と報じた。

日本でも最近自民党の石破茂元幹事長が非核3原則のうち核の持ち込み禁止をはずし戦術核を持ち込むべきだとの主張を表面化させた。韓国とは違い国是としての非核3原則の壁があるために「作らず、持たず」には手を付けず北朝鮮の対応次第ではいつでも撤回できる「持ち込まず」の所を修正しようとしたものだと思われる。

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▲写真 石破茂元防衛相 U.S. Defense Department photo by Cherie A. Thurlby

ドナルド・トランプ大統領は大統領選候補だった昨年3月29日、CNNとのインタビューで「韓国と日本が核兵器を持つのは時間の問題で、彼らはどうせ持つことになっている」と話した。当時、司会者のアンダーソン・クーパー氏が「韓国と日本が核兵器を持っても良いということか」という質問に「隣接した北朝鮮が核兵器を持っている状況で彼らも絶対的に核を持つだろう」と答えた。

トランプ大統領は同年5月、他の放送では「韓国と日本が核保有国になることを許容するつもりか」という質問に「米国は世界の軍隊、世界の警察の役割を続ける余裕がない。彼らは彼ら自らが守らなければならない」と話したこともある。

米国元国務長官のキッシンジャー氏も北朝鮮の核ミサイルが実践配備されれば日本の核保有は現実化するとの見方を示した。

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▲写真 ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官 出典:flickr : World Economic Forum

日韓の核保有は核不拡散体制に逆行するものなので、とてつもない副作用をもたらすだろうが、安保上の効用もまた絶大だ。北朝鮮に対してだけでなく中国を動かす強力な力となる。

もしも日韓が核保有に進めば中国は飛び上がって北朝鮮の核を抑えにかかるだろう。コンドリーザ・ライス元米国務長官は回顧録で「日本でそのような声(核武装)が出るのは意味がある。北朝鮮が核開発をするように放置すれば、深刻なことが起きるということを中国も骨身に染みるほど悟るだろう」と書いた中央日報日本語版2017・9・12)。

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▲写真 トランプ大統領とコンドリーザ・ライス元国務長官 2017年3月31日 flickr : President Trump’s First 100 Days: 59

日韓の核保有が核不拡散体制に不都合というなら、北朝鮮の核ミサイル放棄までの限定的オプションとし国際社会に承認を得る方法もある。日韓の核と北朝鮮の核の交換に限定して承認を受けるという方法だ。毒には毒で制する荒療治だが、日韓の時限付き核保有で北朝鮮の核放棄をもたらすことができれば核不拡散体制も維持できる。

現実的には多くのハードルがあると思われるが、同盟関係にある米国さえ認めれば可能なことだ。後は国民による承認だが、血一滴流さず北朝鮮を抑え込む方法はこれ以外にないと説得すれば可能性はあるだろう。

(この記事は、「覚悟決めた米日、迷走する韓国(上)」の続きです。全2回)

トップ画像:国連総会で演説する安倍首相 2017年9月20日 出典/首相官邸

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この記事を書いた人
朴斗鎮コリア国際研究所 所長

1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。著書に『揺れる北朝鮮 金正恩のゆくえ』(花伝社)など。

朴斗鎮

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