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.政治  投稿日:2017/10/30

「疑似政権交代」望ましい 自民党山本一太氏


「細川珠生のモーニングトーク」2017年10月28日放送

細川珠生(政治ジャーナリスト)

Japan In-depth編集部(駒ヶ嶺明日美)

【まとめ】

総選挙、野党が一本化されていたら5,60議席は負けていた。

・国会での一強多弱は、民主主義を健全に機能させる意味では良くない。

・自民党の中の非主流派の派閥が実質的野党の役割果たす「疑似政権交代」が望ましい。

 

第48回衆議院議員総選挙は、与党で300議席以上、3分の2以上の勢力を維持する結果で終わった。圧勝とも言われる今回の選挙結果をどう見るのか、そして今後の与党運営はどうあるべきなのか、自民党参議院議員の山本一太氏を迎え、政治ジャーナリストの細川珠生氏が話を聞いた。

まず細川氏が圧勝とも言われる今回の選挙結果をどう受け止めているのか聞くと、山本氏は「野党に追い風があったかどうかは分からないが、自民党にも追い風のない選挙だった。安倍内閣の実績が経済、外交を含めて評価されていることは間違いないが、ここまで大勝するとは予想してなかった。主な原因は野党が分裂したこと。野党が一本化されて、共産党が全国的に候補者を下ろしていれば、少なくとも5,60議席は負けている。そこは十分踏まえた上で今後の国会運営は謙虚にやっていかなければいけない。」と述べた。

細川氏が、選挙前には、自民党は260議席くらいまで議席を減らすと予想していたのかと質問すると、山本氏は、「もともと3分の2以上を衆議院でとっていること自体が異例なので、最初から、2,30議席減っても仕方がないと多くの人が思っていた。」と述べた。

また、選挙終盤に立憲民主党が伸びてきて、共同通信の出口調査で260議席を割るかもしれないという調査結果が出た後、自民党はその組織力を用いた猛烈な電話作戦で巻き返したことを明らかにした。

続いて細川氏が、安倍一強体制では自民党内で多様な意見の反映が難く、国民に寄り添う政策を行えないのではないかと指摘すると、山本氏は「仰る通りだ。私は前から安倍内閣を応援しているが、国会における一強他弱というのは、健全に民主主義を機能させる意味であまり良くないと言ってきた。今回の選挙後の状況を考えると、立憲民主党もおそらく再編はなく、時間をかけてもう一つの選択肢になる道を選んでいくのだと思う。その間、自民党の中である程度バランスをとっていくしかない。かつての55年体制のときも、実質的な野党(の役割)は自民党の中の非主流派の派閥が果たしていた。

総裁派閥が変わることによる「疑似政権交代」のようなサイクルになってくのが望ましい。来年の総裁選挙は、石破氏や野田聖子氏、岸田政調会長などに出て頂いて、きちっと党内で議論して、新しい総裁を選んでいくプロセスが大事。」と答えた。

細川氏が、2015年の総裁選挙では野田聖子氏が立候補に必要な推薦人20人を集められず出馬を断念したことで、安倍総裁2期目は無投票で再選されたこと、すなわち実質的には総裁選をしなかったことに触れ、このときは選挙をしなくてよかったのかと質問すると、山本氏は「選挙になったほうが良かったと思うが、野田聖子氏は結局20人集められなかった。やはり彼女に政策の旗が不足していたからであって、総裁派閥から妨害されて集まらなかったというのは言い訳。次回は、野田氏含めて出たい人は皆出たほうがいい。」と述べた。

また、現在、自民党に少しでも批判的な意見を言うと「反安倍」と言われてしまう風潮があることを指摘・批判し、「意見を言う人はとても大事で、こういう人達を絶対潰してはならない。」と述べ石破氏、野田氏、小泉氏を擁護した。

石破氏にも、岸田政調会長にも(総裁選に)出てくれといっている。選挙はやったほうがいいし、自民党は依然として好きなことが言えるオープンな政党だが、やはり総理に対して気を使い過ぎたところはある。小選挙区制で党本部の力が強まっているということはあるかもしれないが、もっと自由にいろいろ異論が出たほうが、憲法の議論も含め、自民党にとっても安倍総理にとっても良い。」と党内の活発な議論の重要性を強調した。

細川氏は、自民党憲法改正草案の年内提出について、自民党の選挙公約で改憲を目指すと書かれた4項目(注)のうち、ずっと言われてきたのは緊急事態条項だけである上に、自衛隊の明記は自民党の中でもかなり議論があるのではないか、と指摘した上で、改憲草案はあと2ヶ月でまとまるのかと質問した。

山本氏は「2020年くらいから施行したい、と総理が総裁として一石を投じた。でもその後、基本的に党に任せると言っている。だからそこはあまりこだわらずに丁寧にやったらいい。党内にも1項、2項を残して自衛隊を明記するという考え方に賛成する人もいるし、2項を削らないとおかしいという、石破さんを含めた党内ではマジョリティだった人達の意見もある。公明党も慎重だし、発議できても国民投票に通らないといけないから、立憲民主党や希望の党とも擦り合わせないといけない。全体の流れを見て慎重にやったらいい。」と述べた。

最後に細川氏が「議席の上では圧勝していても、国民から安倍政権に対して緊張感を持て、という声があることも事実。安全運転になっていくのだろうと思うが、ぜひそれを乗り越えた、活発な議論が行われる党運営を期待したい。」と締めくくった。

編集部注:「自衛隊の明記、教育の無償化・充実強化、緊急事態対応、参議院の合区解消など4項目を中心に、(中略)憲法改正を目指します。」出典:自民党公約2017HP

(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」20171028日放送の要約です)

 

「細川珠生のモーニングトーク」

ラジオ日本 毎週土曜日午前705分~720

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トップ画像:©Japan In-depth 編集部


この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト

1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。

細川珠生

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