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.社会  投稿日:2019/5/20

サヘル・ローズ氏「全ての子供に希望を」(前編)


Japan In-depth編集部(高橋十詠)

【まとめ】

・サヘル・ローズ氏、バングラデシュのNGO「エクマットラ」訪問。

・同団体、ストリートチルドレンの支援を行っている。

・サヘル氏、多くの子供たちと触れ合い、心を通わせた。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=45821でお読みください。】

 

バングラデシュにEKMATTRA(エクマットラ)というNGO団体がある。ストリートチルドレンの可能性を最大限に引き出すために活動している。外部から資金を賄う財団が多い中、エクマットラの顧問である渡辺大樹さんは持続可能な支援を行うべく、現地で企業をつくり、そこで生まれた資金でアカデミーを創立した。

イラン出身で、日本で活躍するタレント・女優であるサヘル・ローズさんは、渡辺さんと初めて出会った時、「いつかアカデミーができたら絶対に訪問する」という約束をしていた。今回、渡辺さんから設立の連絡をもらい、約束を果たす機会が訪れたのだ。青空教室をするのが夢だったというサヘルさんにとって、「自分が行動に移すことができたきっかけ」となったという、その旅の様子について話を聞いた。

 

■ なぜ青空教室なのか?

サヘルさんが青空教室にこだわる理由とは何か。それはサヘルさん自身の背景にある。

昔から空が大好きだったというサヘルさん。イラン・イラク戦争時代に生まれ、4歳から孤児院での生活を経験した。7歳の時に義母に引き取ってもらったが、その生活は思い描いていたものとは違っていたという。サヘルさんは、「孤児院ではいつも仲間がいた。引き取ってもらえた後、これからは常に家族の誰かがそばに居てくれると思っていた。しかし義母は仕事で忙しく、実際はひとりぼっちの毎日だった。そんな時に空の下で読書したり、空を相手に心の内を話したりしていた。青空が心の捌け口だった。いちばん自分をさらけ出せる瞬間だった。」と青空が自分にとっていつも身近な存在であった事を明かした。

また、自然の中で子供たちと話すことが、「人種も国籍も関係なく、1対1の人間として触れ合うことができ、心の対話につながる。」と話した。サヘルさんは、「どこに行っても空はある。空には境界線はない。その空の真下で、子供たちと触れ合いたい。旅先の国々で、青空教室を通し、子供たちと対話したい。」と自身の夢を語った。

▲写真 ©Japan In-depth編集部

■ 訪問先での様子

サヘルさんが今回の旅で回った場所は主に、女子アカデミー、男子アカデミー性的被害を受けた女性たちをサポートする施設、そしてストリートチルドレンの子どもたちが生活するエリアだ。それぞれの場所でどのような活動をしたのか尋ねた。

 

・女子のアカデミー

サヘルさんは、「踊ったり歌ったり、一人芝居したり。言葉が通じないので、表現をすることから始めた。あとは一緒にご飯をつくって、お化粧をしてもらって、民族衣装も着せてもらったりした。」と現地での経験を語った。そのあとは、渡辺さんの奥さんの通訳を介し、サヘルさん自身の人生の話をし、子どもたちの話もひとりひとり聞いたという。

サヘルさんは、「1日中一緒にいた。この子たちは誰か1人の人に、自分のことをきちんと見てもらえる機会が減ってしまった。施設では人数も限られているため、自分たちはいつもひとりぼっちだと感じてしまうこともあるように感じた。だからこそちゃんとひとりひとりに愛情を注ぐことで、最初は遠くにいた子との距離が、どんどん縮まっていった。」と、1日一緒に居ることで「自分のことをしっかりみてくれている」ということを子供たちに伝えた。

▲画像 女子のアカデミーにて 提供:サヘル・ローズ氏

・男子のアカデミー

男子のアカデミーでは、サヘルさんにとって「母の味」である黄金のライスプディングを作ったという。

「孤児院生活の頃、たまに出てくるその甘いスイーツを食べる時間が、私たちにとっては1番のごちそうであり、すごく幸せな時間だった。自分が感じた幸せの味を子ども達に届けたかった。アカデミーのキッチンを借りて、シェフになりたいという男の子に手伝ってもらいながら、みんなで一緒につくった。」と体験談を語った。子ども達と盛りつけた黄金のライスプディングをみんなで食べた。夜には近所の村を回り地域の子ども達にも届けた。

▲画像 ライスプディングづくりの様子 提供:サヘル・ローズ氏

また、サヘルさんは男子のアカデミーにて印象だったことを話した。

戦争したことで独立している彼らにとって、戦争は正義である。そんな彼らにサヘルさんが戦争の話をすると、必ず「どっちが勝ったの?」「よかったの?」と聞かれるという。それに対しサヘルさんが、「それによって被害を受けている人たちがいっぱいいる。決していいものだと思わないでほしい。」ということを伝えると、子どもたちは驚いていた様子だったと話した。「当たり前」の価値観が違うため、伝え方を考える必要があったという。

より長い時間を子どもたちと共に過ごすことを大事にしたサヘルさん。「お金でもなく、モノでもなく、“触れ合う”ということが、子供たちにとって安らぎとなり、心をさらけだせる場となる。私自身、話を聞いてくれる大人がいなかった。すごく悲しい気持ちを経験した幼少期。同じような思いを、未来を担う子ども達には植え付けたくない。私にとっての青空教室は、自分の話もしながら、その子たちの心の中にしまっている、“本当は話したかったこと”を聞くこと。寄りかかってもいいと思える、その子たちにとっての柱となること。」と、自身にとっての青空教室の在り方を語った。

 

・ストリートチルドレンエリア

▲画像 ストリートチルドレンエリア 提供:サヘル・ローズ氏

ストリートチルドレンの場合はアカデミーに通うにあたり、親の意見が強く反映される。親たちの考え方も様々であり、サヘルさんは主に以下の2つのタイプの親に分かれようにと感じたという。

①アカデミーに預けたがらない親・・・子どもに働かせたり物乞いをさせたりして稼ぎを得ているため、アカデミーに預けたがらない。

②アカデミーに預ける親・・・勉強することに希望を持っている親。教育は子どもの未来に欠かせないものという考えから、子どもの将来を考え率先して預ける。

また、親に捨てられたり、亡くなったりして孤児になってしまった子供も存在する。その中で集団生活が合わない子は、抜け出す子もいて、残るのはわずかだそうだ。

サヘルさんがストリートチルドレンのエリアに到着した直後は、ほとんどの子どもが、近寄ってこなかったり睨みつけてくるような目線を送ってきていたという。「だから、まずは遊びで触れ合い、集中が持続するであろう10分間という短い時間を設けて、話を聞いてもらった。」とサヘルさんは説明した。そうしている中で、「最初誰よりも距離が遠かったが、最後最も近い距離になったある子の言葉が忘れられない。」と、サヘルさんは述べた。以下がそのホセイン君の言葉である。

「お願いだから僕たちのためにも成功して。応援してるから。お姉ちゃん(サヘルさん)は僕たちの誇りだから。自分も警察官になりたい。ここの警察たちは汚職してて誰も守ってくれない。家族の為にも警察官になってこの生活から抜け出してやるんだ。だからお姉ちゃんも、もっと大きくなってまた戻ってきて。僕のことバングラディシュでまた見つけてくれる?」

▲画像 ホセイン君(左) 提供:サヘル・ローズ氏

(後編に続く。)

 

*今回サヘルさんの旅の写真展が開催される。是非、足を運んで頂きたい。

以下詳細:

サヘル・ローズ写真展「黄金のベンガル

▲画像 ©オリンパス

会期:6月7日(金)~6月12日(水)

時間:11:00~19:00

会場:オリンパスプラザ東京 クリエイティブウォール

住所:〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-24-1 エステック情報ビル 地下1階

TEL:03-5909-0190

アクセス

トップ画像:提供 サヘル・ローズ氏

 

【訂正】

初掲載2019年5月20日の本記事の内容を2019年5月20日、下記の通り訂正しました。

誤)サヘルさんは、「アカデミーではいつも仲間がいた。

正)サヘルさんは、「孤児院ではいつも仲間がいた。

 


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