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.国際  投稿日:2019/5/27

サヘル・ローズ氏「全ての子供に希望を」(後編)


Japan In-depth編集部(高橋十詠)

【まとめ】

・バングラデシュの子供達自分の国をどうにかしたいとの思い。

・私達の幸せを押し付けることは彼らの幸せを奪うことにつながる。

これからもこの子たちの存在を伝えていきたい。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=45966でお読み下さい。】

 

前編の続き)

バングラデシュを旅した目的として、サヘルさんは、子どもたちの現状をみて、可哀想に思い資金を渡して応援するのではなく、「あなたたちには可能性がある、”生まれてきてよかったんだよ”ということを伝えたい」と話した。

社会に立ち向かう為には、しっかりとした教育を受け、学び、知識で這い上がることができることを見せることだというのがサヘルさんの考えだ。

「ここで終わらずに、親のためにもアカデミーを卒業して、自信と誇りをもって社会に出てほしい。」とサヘルさんは子どもたちへの願いを語った。

人の記憶、心に何かを残すというのは、触れ合いが大事だと言うサヘルさんは、今回の旅で「自分の経験を誰かにに伝えることで、苦しみを苦しみだけで終わらせず、永遠に変えることができる。今までの辛い経験も、この子たちに伝えるためのものだったと思えた。」と述べた。

▲写真 路上生活している方々と交流する様子 提供:サヘル・ローズ氏

 

■ 幸せを感じる“時”

人は様々な感情を抱く。彼らの感情は、日常のどのような場面で動くのだろうか。

サヘルさん曰く、彼らが夕日を見ているとき、「その日をきちんと終えることができた」という安堵に近い感情に満ちた表情をするそうだ。その日その日を無事に生きていることが、とても幸せそうなのだという。

「彼らは、地べたで寝る環境でも、お風呂がなくても、その中で”側に居る家族のために生きている”という幸せを噛み締めている。一方で私たちは、家に帰ると仕事などに追われていたりして、自分のことで精一杯。周りをみる余裕がないことが多い。でも、彼らは常に家族第一。」と、サヘルさんは日本人と現地の人との日常感覚の差を話した。

 

■ 感情が動く“時”

家族の話をすると悲しい目をする子が多いという。「今、自分の親はどうしているのだろう。いつかこの状況から救いたい。」そういう思いが、子どもたちの心を少し感傷的にさせる。そんな子どもたちが笑顔になる瞬間がある。それは、無邪気に全力で遊んでいる時間だ。また、夢の話をすると、誰もが強い思いをみせるという。

「誰に聞いても、何になりたいのか、その理由まで明確。特に政治家や、警察、医者が多く、”現状を変えたい”、”この国に生まれて良かったから、自分の国を救いたい”という思いがあり、非常に愛国心が強い。」とサヘルさんは話した。

子供たちが詩で表現するのは、「自分の国をどうにかしたい」という内容が多いそうだ。

▲写真 女子アカデミー やんちゃな子供たち 提供:サヘル・ローズ氏

サヘルさんは、「日本は、自国に希望を抱いている若者が比較的少ないように感じる。先進国に出て行く人たちも多く、それは他国と自国を比較し、憧れをもったりするからかもしれない。それに対しバングラデシュの子ども達は、良い意味で世界を知らない。だから、あの子たちにとっての居場所はここ。自分たちが生まれ育った場所を、生活環境を、家族のためにも変えたい。それができるのは、自分たちだという意識があるのではないか。」と述べた。

つまり、「他国と比べ、自国が劣ってると感じるから変えたい」のではなく、「どことも比較していないからこそ、自国をよりよくしたい」と自然に思うということなのだ。

 

■ 自国しか知らないからこその“良さ”

「バングラデシュでは、場所によっては蛇口を捻っても水が出ない。出たとしても泥交じりの鉄を含んだ赤い水。それが彼らにとっては”普通”である。一方で、蛇口から出るのはきれいな飲める水というのが、日本で生活している私たちにとって”当たり前”であり、”幸せ”といえる状態でもある。では、それを伝えることが果たして正しいのか?」とサヘルさんは問題提起した。

つづけて、「自分たちの国しか知らないからこその良さもある。だから、それに外部の人間が口を挟むのも違うと思う。」と述べ、私たちの幸せを押し付けることにが彼らの幸せを奪うことにつながる可能性があることを指摘した。

▲写真 女子アカデミーにいた女の子 提供:サヘル・ローズ氏

「自分がいる環境で、やれることは必ずある。自身の芯の強さで、いくらでも状況は変えられる。道なき道を歩んできた人生だったから、道がないのは当たり前のこと。レールはどこでも自分自身で引くことができる。彼らにはそれができる可能性がある。特に若い世代はエネルギーに満ち溢れていて、”かわいそうで貧しい”とは全く思わなかった。」と、子どもたちが秘めている可能性について述べた。

しかし、サヘルさんが出逢った目の輝きは、18~20歳くらいまでの人たちだったという。「大人になった方々の目にはエネルギーがあまりなかった。だから、サポートできるような大人さえいれば、必ず変わる国だと思った。」とサヘルさんは述べた。

▲写真 市場で野菜を売る女性 提供:サヘル・ローズ氏

 

■ 今バングラデシュに必要ものは?

では、外部からの支援面でバングラデシュが必要なものは何か。それは、その国の人たちが働ける環境づくりだとサヘルさんは考える。

「畑を耕し、種をまき、ノウハウを伝え、うまく人材育成ができれば、後は自分たちでやっていけるようになるだろう。企業をつくり、働ける環境の土台を整え、循環をつくる。ロールモデルを提示し、現地の人へバトンタッチすることが必要。」と述べた。

その国の人たちが働ける環境の基盤づくりが、持続可能な支援につながるだろう。

 

■ 日本に伝えたいこと

今回の旅でサヘルさんが感じたことを踏まえ、改めて日本の若い世代に伝えたいことは、以下の2つだという。

①今の環境への感謝を忘れずに。

「日本という国に悲観的になっていて、外に出てしまう人たちが多い。本当はもっと色んなことができるはず。日本は全て整っている。こっちの方が非現実的なのだから、この環境を当たり前だと思わず、その有り難みを感じながら生活してほしい。」

②旅をしてほしい。「純粋に旅をしてほしい。流れてきた情報だけで知った気になったり、回転寿司のように好きなものだけをつまむのではなく、五感で触れて欲しい。なぜなら、それでしか得られないものがあるから。だから、発展している国を訪ねるのも良いが、そうでない国へも定期的に足を運んでほしい。彼らから学ぶことはまだまだある。」

また、これらを決して重く捉える必要はないと述べ、「支援というのはお金だけではないので、”伝えていく”というバトンタッチをしていきたい。」と語った。

 

■ ✖「誰かのため」〇「互いのため」

最後に、サヘルさんは自身が生まれてきて良かったと思える瞬間を話した。

今のお母さんと出会い、“あなたなら大丈夫。やれるから。”と手を握ってくれた時、“私は存在してるんだ”って思えた。それは自分ひとりでは確認できない。そこに誰かがいて、ちゃんと自分を信じてくれる人がいることを感じられた瞬間だった。」と話した。

子供たちが「連れてって(引き取って)」という思いで手を伸ばしてきたとき、今の自分には何もできないことがサヘルさんの心を苦しめるのだという。だからサヘルさんは、「自分がもっと大きな電波塔になって、より遠くにこの子たちの存在を伝えていきたい。それがこれからの自分にできること。バングラディシュは人の心が本当に美しい国よ。」と述べ、「人間って、”誰かの為”だけではなく、”お互いの為”に何かをしていると思う。そのことを、自分の為でもある青空教室を通し、今後も伝えていきたい。」と、再度決意を語った。

(了。前編はこちら。全2回。)

 

*今回サヘルさんの旅の写真展が開催される。是非、足を運んで頂きたい。

以下詳細:

▲画像 提供 サヘル・ローズ氏

サヘル・ローズ写真展「黄金のベンガル

会期:6月7日(金)~6月12日(水)

時間:11:00~19:00

会場:オリンパスプラザ東京 クリエイティブウォール

住所:〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-24-1 エステック情報ビル 地下1階

TEL:03-5909-0190

アクセス

トップ写真:街で出会った子供達 提供:サヘル・ローズ氏


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