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.政治  投稿日:2019/6/2

NHK受信料半額全世帯徴収 中谷一馬衆議院議員


安倍宏行Japan In-depth編集部(高橋十詠)

【まとめ】

・NHK受信料を全世帯から徴収することで、最大5割引き下げ可能。

・テレビ離れが進み、OTT(Netflix,Huluなど)が広がっている。

NHK、民放、政府が協力し国民目線でどう世界に打ち勝つか考えるべき。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=46086でお読み下さい。】

 

NHKの番組のインターネット常時同時配信を可能にする改正放送法が5月29日参院本会議で可決・成立した。すでに実験的に一部の番組でネット同時配信を行ってきたNHKだが、今後、スマホでも番組をみることができるようになる。NHKは2019年度中にネット常時同時配信を始める方針だ。

こうした中、立憲民主党の中谷一馬衆議院議員が、放送法改正案及び令和時代におけるNHKの在り方について、受信料30%~50%OFF案を提唱している。NHK受信料を半額にする代わりに、全世帯から受信料を徴収するというものだ。放送法改正案と公共放送のあり方について石田真敏総務大臣、上田良一NHK会長等と衆議院総務委員会で質問をした(5月14日)中谷氏に詳しく話を聞いた。

 

■ 現在のNHKへの評価

NHKは「不祥事のデパート」と呼ばれるなど、ガバナンスに問題を抱えているのは衆目の一致するところだ。2004年に発覚したNHK紅白歌合戦の担当プロデューサーによる制作費の不正支出を皮切りに、さまざまな不祥事が明るみに出て、NHK受信料の不払いが加速したことは記憶に新しい。

こうした中、NHKは放送受信契約の未契約世帯に対する民事訴訟を次々と起こし、2017年に最高裁が、テレビがあればNHKと契約を結ぶ義務があるとした放送法の規定は「合憲」とする初めての判断を示し、事実上受信料の支払いが義務づけられた。

この判決を受け、受信料の徴取率は徐々に回復し、2018年度末受信料の推計世帯支払率は全国値で81.2%となり、2017年度末の79.4%から1.8ポイント増となった。NHKが5月14日に発表した2018年度決算の速報値では、受信料収入が7122億円に上り、2017年度に比べ3%増、5年連続で過去最高となった。

公共放送として国民に信頼される形で継続されるべきだと考えている中谷氏は、「どうすればこれからもNHKが、信頼され続けられる中立的で公平なメディアで在ることができるかを考えていく必要がある」と述べた。

そのために、「民間との関係性をうまくやっていかなければならない。国民にNHKに受信料を払ってでもこのメディアをみたいと思ってもらえるような努力をしていかなければならない。」との考えを示した。

▲写真 ©️Japan In-depth 編集部

 

■ 公共放送の受信料徴収の在り方

中谷氏は、テレビを所有している人たちから受信料を徴収する仕組みについて、フェアでないと考えており、「ファーストスクリーンがスマホになり、ネットでコンテンツを観る人が増えている。」と述べ、受像機を持っている人が払うという今の仕組みが時代に合っていないと指摘し、受信料を払う対象を拡げていくことも検討すべき、との考えを示した。現に諸外国でテレビやパソコンの有無にかかわらず全ての世帯から徴収する放送負担金制度が導入されているという。また、「公共放送の負担をどうフェアに分け合うべきかを、国民目線で考えていくべき。」と述べた。

 

■ How to受信料の30%〜50%OFF

NHKの事業収入は年間約7000億円だが、「仮に今の総収入を維持したとしても、30%から50%くらいの受信料削減は現実的に可能だ。」と中谷氏は述べた。

中谷氏の案は、現在の受像機がある世帯から受信料を徴取するのではなく、全世帯から徴取することを前提としている。約80%にとどまっている徴収率が20%上がれば、約1400億くらいの増収となる。さらに、未払い世帯の受信料徴収の経費としてかかっている約700億円も要らなくなるので、約2000億円の増収が見込める。中谷氏は、「これを受信料を払ってる人たちに公平に分配をするとしたら、受信料負担は3割削減できる。年間の支払額も1万円を切るし、月々1000円を切る数字まで持っていくことができる。」と述べた。

 

■ 広告収入について

中谷氏は、NHKに広告収入や副次収入を認める案を提唱している。そうすれば、受信料負担は5割まで削減できるという。しかし、広告収入や副次収入を解禁するとなれば、公共放送としての立場はどうなるのか。これに対して中谷氏は、「他国(G20など)では、公共放送が民放とバランスをとりながら、どういう広告なら出していいのか、公平性、中立性を担保しながらやっている。」と述べ、民業への影響を最小限にしつつ、国民に還元できるような広告収入の在り方を考える可能性について研究する必要があるとの考えを示した。

 

■ スクランブル化という提案

NHKが民放とあまり変わらない番組や、バラエティーのような番組を放送していることに対し、「公共放送としてどうなのか」「内容を見直してほしい」という声も聞こえてくる。全世帯から受信料を徴収するという案に対し、どう国民の理解を得ていくのか?これに対し中谷氏は、「(放送の)スクランブル化という議論がある。例えば、月額料金を支払ったり、有料番組に課金して、見たいコンテンツを見れるようにすることができるなど、インターネットとは相性がいい。スマホが主体になってくるのであれば、システムとして安価に組み立てられるのではないか。そこも含め、スクランブル化をすることによるメリット・デメリットは何かを国民に示し、議論する場を作ったらどうか。受信料30%〜50%OFF案も、広告収入など、財源の確報の対応をすれば夢物語ではなく現実的だと思う。」と説明した。しかしこの意見を政府に提案したところ、真正面からの回答は得られなかったという。

▲写真 ©️Japan In-depth 編集部

 

■ NHKネット活用業務予算に上限

現在、NHKのインターネットの活用業務に関する経費には、受信料の2.5%というキャップが事実上かかっている。今回の法改正で、NHKがインターネットの常時同時配信ができるようになったことは、民放連にとって大きな脅威である。それをさらに押し進めることに対し中谷氏は、「(放送事業者の)インターネットの活用業務に関する経費に条件をつけている国が他にあるのか調べたら1つもなかった。日本だけ独自の規制をかけざるを得ない状況になっている。」と述べた。

現在は、インターネットにより、情報が瞬時に国境を越えて共有できる時代になった。コンテンツはどこの地方に行っても誰もが取得できる

「そこで、“今の民放と公共放送のビジネスモデルをどう維持しようか”という主張よりも、どうすれば世界の放送事業者や通信事業者を相手に日本が打ち勝っていけるのかを戦略的に考えるべきだ。」と述べるとともに、「金銭面でNHKが(民放に)協力してもいいのではないか。」「またOTT対策として、公共放送、民間放送、政府が協力をし、取り組みを進めていくような時代に変わりつつある。だからこそ、“オール・ジャパンでどう世界に打ち勝っていけるか”、国として力を合わせていくべきではないか。」と続けた。

 

■ 民放連の立場

しかし、受信料収入で成り立っている巨大組織(NHK)が、インターネットの常時同時配信で民放側に資金的に協力する、という案は現実的ではない気がする。そもそも、民放がインターネット常時同時配信に及び腰なのは、地方局の県域免許の問題がある。ネット常時同時配信は、経営基盤がぜい弱な地方局の再編につながるだけに、NHKの独走は止めたい考えだ。

こうしたことから既に民放連は、NHKのネット常時同時配信に対し、8つの要望を出している。

(1)事業毎に資産を管理(区分経理)しネット活用業務を見える化する事

(2)ネット活用業務の予算は受信料収入の2.5%を上限とすること

(3)常時同時配信の地域制御

(4)ネット配信事業での民放事業者・NHKの連携

(5)外部監査の強化による事後チェック体制の充実

(6)関連団体への業務受託の透明性向上、子会社の在り方等の見直し

(7)衛星波の整理・削減を含む事業規模の適正化

(8)受信料体系・水準などの見直し

中谷氏の案は、こうした民放側の民業圧迫批判を理解した上で、放送事業の公共的利益を国民に還元しつつ、経済合理性を追求し、さらに国際競争力も高めよう、という意欲的なものだ。これまでの経緯から、一筋縄ではいかない問題ではあるが、民放側もインターネット事業ではNHKの後塵を拝している状況であり、このままでいいとは思っていないだろう。今回の放送法改正を受け、新たな取り組みを迫られるのは間違いない。

中谷氏は「民放にとっても、NHKにとっても、国民にとっても、どうすればよりいい方向にいけるのか、みんなで考える機会をつくるべきだ。」とし、「できない理由を探しても誰にも利益はない。たたき台としての自分の案をブラッシュアップし、みんなにとって良い道を導き出していくことが、国会議員の役割だ。変わり続ける努力をしないことには何も始まらない。」と述べた。

(インタビューは2019年5月29日実施)

トップ画像:©️Japan In-depth 編集部

 

【訂正】2019年6月2日

本記事(初掲載日2019年6月2日)の本文中、「事実上受信料の支払いを義務づける判断を下した」とあったのは「事実上受信料の支払いが義務づけられた」の間違いでした。また、「“今の民放と公共放送のビジネスモデルをどう維持しようか”」という文が重複している部分がありました。お詫びして訂正いたします。本文では既に訂正してあります。

誤:こうした中、NHKは放送受信契約の未契約世帯に対する民事訴訟を次々と起こし、2017年に最高裁が、テレビがあればNHKと契約を結ぶ義務があるとした放送法の規定は「合憲」とする初めての判断を示し、事実上受信料の支払いを義務づける判断を下した。

正:こうした中、NHKは放送受信契約の未契約世帯に対する民事訴訟を次々と起こし、2017年に最高裁が、テレビがあればNHKと契約を結ぶ義務があるとした放送法の規定は「合憲」とする初めての判断を示し、事実上受信料の支払いが義務づけられた。


この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年12月2日 東京都生まれ(60才)1979年慶応義塾大学経済学部卒業、日産自動車入社(海外輸出・事業企画)、1985年国際大学大学院国際関係学科修士課程卒、1992年フジテレビ入社報道局政経部記者、1998年ニューヨーク支局長、2002年ニュースジャパンキャスター、2003年経済部長、2006年解説委員、2009年BSフジ「プライムニュース」解説キャスター、2013年フジテレビ退社、危機管理コンサルティング会社設立。ウェブメディアJapan in-depth編集長就任。

安倍宏行

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