災害用備蓄にもサブスクの波
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・災害時の食料品の備えとして「ローリングストック」方式がある。
・消費した分を買い足して、備蓄を一定量に保つ仕組み。
・色々なサービスを比較し、各家庭に合った備蓄を。
2018年の今年の漢字は「災」 だった。(公益財団法人 日本漢字能力検定協会)。今年も災害が多かった。9月に関東に上陸した観測史上最強クラスの台風15号は千葉県を中心に大規模な被害を引き起こした。また、10月12日に上陸した台風第19号は、関東地方や甲信地方、東北地方などに記録的な大雨を降らし、広範囲に浸水などの被害をもたらした。
毎回自然災害の度に、どのような備えをしたらよいのか、話題になるが、正常性バイアスが働くのか、我が家は大丈夫と思い込みがちなのが私たちだ。無論、いつ必要かわからない食料や水を買うことに抵抗感がある人もいよう。
しかし、災害はいつか、必ずやってくる。もしかしたらそれは今日かもしれない。それがやっかいなところだ。
そこで、人々が備蓄をしたくなるような工夫が考案されている。それが「ローリングストック」だ。
▲図 ローリングストックの概念 出典:一般財団法人日本気象協会
備蓄する食料品を倉庫などにしまい込むのではなく、日常の食料品の中で消費し、その分を足していく方式をいう。こうすれば、賞味期限切れも防ぐことができるし、どのような食料品が備蓄されているか把握することもできる。
実はローリングストックできる食品は結構身近にある。お湯を注ぐだけですぐ食べることができるフリーズドドライ食品で知られているアマノフーズは、「ローリングストックBOX」を販売している。「朝食セット」「昼食セット」「夕食セット」に「パックごはん」をセットにした3日分(1人前)のセットだ。
フリーズドドライ食品やレトルト食品がローリングストックに適しているとわかっていても、それを個別に買うのは面倒くさい、という人もいるだろう。また、戸棚などにしまい込んだまま忘れてしまうこともありそうだ。そういう人にこちらはどうだろう?大人3日分21品のを箱に詰め込んだ「Daily IZAMESHI」だ。ご飯、粥、麺類、煮物、魚、肉料理、スイーツ、パンなど豊富なラインナップとなっている。
▲写真 「Daily IZAMESHI」 出典:SUGITA ACE
台所などに置いても気にならない箱入りで、気軽に食品を消費しやすそうだ。
それでも消費した分購入するのが面倒くさいとか、忘れてしまう、などの声も聞こえてきそうだ。そこで登場したのが「サブスクリプション」モデルだ。そう、定期的にメーカーがストック用食料品を届けてくれるのだ。「サブスク」と称され、飲料の自販機からラーメン、フレンチ、化粧品、知育玩具、車まで、今やあらゆる分野に広がっている。
そうした中、日清食品は、「カップヌ―ドルローリングストック」なるサービスを開始した。初回、13,000円(税抜き)でセットを購入。特製BOXの中には、カップ麺&カップライス基本の9食セット、カセットコンロ&カセットボンベ、3WAYソーラーライト、5年保存水&計量カップ、手鍋、フォーク、軍手などが入っている。
▲写真 日清「カップヌ―ドルローリングストック」初回セットに中味 出典:日清食品
カセットコンロが入っているのがミソだ。当たり前だがカップヌ―ドルはお湯がないと食べることができない。カセットコンロがない家庭も意外とあるのだ。いざ震災が起こると水道や電気、ガスなどのインフラはもとより、食料供給も長期間途絶える可能性がある。幹線道路が寸断される可能性が高いからだ。長期戦となると、やはりお湯を沸かす道具は常備しておきたい。
そして、入れ替え用9食のカップヌ―ドルが3か月に一度届く仕組みだ。つまり、賞味期限の管理が不要になる。9食の中身は毎回変更可能、ときめ細かい。価格は3ヶ月毎に2,000円(税抜き)、月にすれば560円だ。
サブスクリプションモデルはメーカーにとって、定期的に商品を消費者に購入してもらえることから、メリットが大きい。今後参入が相次ぎそうだ。
▲図 日清「カップヌ―ドルローリングストック」サービスの仕組み 出典:日清食品
また、非常食は普段食べる気にはならない、という声も出てきそうだ。
そこで、牛丼の吉野家が今年5月に発売を開始したのが「缶飯」だ。常温で食べることができ、賞味期限3年で非常用保存食との位置づけだ。発売当初、売り切れ御免のヒット商品となった。非常食でも味に妥協しない点が消費者に評価された格好だ。
▲写真 缶飯 出典:吉野家
様々な商品・サービスがあるが、一番大切なのは何をどう備蓄するか、という個々人の意識だろう。災害はいつ来るかわからない。貴方の備えは万全ですか?
トップ写真:カップヌ―ドルローリングストックセット 出典:日清食品
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。