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.社会  投稿日:2024/1/8

改めて考えたい災害への備え 能登半島地震


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・令和6年能登半島地震で被災地では水、トイレ、ガソリン、電気が不足。

・給電ができるEV、PHVは災害用に役に立つ。

・簡易トイレや自家発電機、ソーラーチャージャーなど防災用品について検討してみたい。

 

令和6年能登半島地震の被災状況を毎日全国の人が目の当たりにしているだろう。まずは孤立している地域のみなさんと、避難所にいる皆さんへの緊急支援が最優先だ。ご高齢の方、慢性疾患をお持ちの方などへの医療支援が一刻も早く届くことを願う。

被災されたみなさんが困っているのは、水、トイレ、ガソリンの不足と停電だ。今回のような大地震や津波の場合は、いかんともしがたいが、基本的に家に水の備蓄は必須だ。1人1日2ℓが目安なので、4人家族1週間分は、2ℓ×4人×7日=56ℓになる。2ℓのペットボトル56本分というとかなりスペースを取るが、最低でも3~4日分は備えておきたい。

次にトイレだ。簡易トイレを備蓄している家庭はまれだろう。しかし、トイレの問題は深刻だ。地震で下水が流せなくなると、家のトイレは使えない。ぜひ備えておきたいもののひとつだ。簡易トイレは基本、ビニール袋と凝固剤、消臭剤がセットになったものが多いが、段ボールや樹脂製で組み立て式のものなどもあるので、よく調べて買うとよい。

そしてガソリンや灯油だ。

震災のたびにガソリンスタンドに長い車の行列ができる。被災地では車中泊を余儀なくされる場合もある。冬場は暖を取るために、夏は熱中症を防ぐために車のエアコンはかかせない。しかし当たり前だがガソリン車では、エアコンを使うとガソリンを食う。東日本大震災時も3月の寒い時期で、ガソリン不足が被災地を直撃した。

その後注目され始めたのがEVだ。今や多くの都市がEV車を販売している日産自動車と災害連携協定「ブルー・スイッチ」を結んでいる。三菱自動車も災害時協力協定「DENDOコミュニティサポートプログラム」を自治体と締結している。災害発生時、自治体の要請により、EVによる給電支援を行うことで、非常用電源を確保する取り組みだ。今回も日産自動車がEVを、三菱自動車がPHV(プラグインハイブリッド車)などをそれぞれ被災地に派遣している。

▲写真 三菱自動車PHVアウトランダー(2016年9月30日)フランスのパリモーターショーにて 出典: Chesnot/Getty Images

EVやPHVは、家電製品などに給電することができる。発災直後の停電時に威力を発揮する。ガソリンスタンドの復旧には時間がかなりかかる。過去の災害で、電力網は1週間程度で復旧しているとのデータもある。災害による電力供給の一時停止に備え、自治体がEVやPHVを公用車にすることや、各家庭がガソリン車から乗り換えることも一つの選択肢だろう。

情報端末として必須の携帯電話の電池切れは深刻な問題だ。情報が遮断されると不安も大きくなる。停電時の充電用に太陽光で発電するソーラーチャージャーを用意しておくのも手だ。

▲写真 ソーラーチャージャーでスマホを充電しているところ(イメージ)出典:VlarVix/GettyImages

また、知名度はいまいちだが携帯電話充電用に使える「マグネシウム空気電池」というものもある。マグネシウムを主原料とする電極に塩水を供給するだけで電力が発生するものだ。自己放電しないため長期保存が可能で、防災用として開発されている。古河電池フジクラコンポジットなどが販売している。リチウムイオンのモバイルバッテリーは充電しなければならず、放電したら停電時には使えない。空気電池は一考に値しよう。

その他、自家発電機もあれば便利だ。燃料にガソリンを使うものよりは、備蓄できるカセットボンベが使える発電機が家庭向きだろう。本田技研工業ヤマハ発動機などから発売されている。

▲写真 カセットボンベ式発電機、ホンダ「EU9iGB(エネポ)」出典:本田技研工業

日本列島、どこに住んでいても自然災害から逃れることはできない。紹介した災害用品はどれもそれなりにお金がかかる。いっぺんに買いそろえるのは無理でも、普段からすこしずつ備えをしておくことが重要だ。

トップ写真:石川県輪島市の山間の町大野町に向かう途中、水やその他の救援物資の入ったボトルを運ぶ人々(2024年1月4日)出典:Buddhika Weerasinghe/Getty Images




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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