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.国際  投稿日:2019/12/24

トランプ弾劾裁判、再選に影響も


大原ケイ(英語版権エージェント)

「アメリカ本音通信」

【まとめ】

・弾劾訴追された大統領はトランプ氏は歴代3人目。

・トランプ氏の状況はニクソン大統領の辞任の状況に似ている。

・弾劾裁判、トランプ氏罷免の可能性は薄いが、支持率に影響も。

 

ドナルド・トランプ大統領が18日、ウクライナの大統領に対する取引をめぐる権力の乱用と、米議会への調査妨害で弾劾訴追された。

弾劾訴追された大統領は彼が3人目となる。最初の17代目アンドリュー・ジョンソン大統領の弾劾は1868年の話で、11件の訴状が提出された。ジョンソンは、もともと奴隷解放を目指して南北戦争を戦ったエイブラハム・リンカーン大統領の副大統領で、リンカーン暗殺後に大統領となった人物。南北戦争後の和解を目指したリンカーンが、副大統領の自分とは立場や考え方が全く違う人材を求めたので彼を選んだのだが、実際に大統領になると元南部軍の奴隷制度支持者を優遇し、奴隷制度の廃止を邪魔した。

決定的だったのは、議員の反対を押し切ってエドウィン・スタントン陸軍大臣を2度もクビにしたことだ。現代の大統領府や米議会の状況とはかけ離れているので、これからトランプ大統領の弾劾裁判がどうなるかの参考にはならないだろう。

▲写真 アンドリュー・ジョンソン大統領 出典: Wikimedia Commons;Matthew Brady

2人目は記憶にも新しいビル・クリントン大統領で、いわゆるルインスキー疑惑だ。過去に起こったインターンとの性行為が表沙汰になり、それを隠蔽しようとしたことで(普通浮気がバレたら誰も最初は証拠をつきつけられるまで否定すると思うが)弾劾となった。だが、クリントン大統領は既に2期目の満了を目前にしており、結局罷免とはならず、支持率にもあまり影響がなかった。

トランプ大統領の場合、訴追されているのは現在進行中の汚職の話であり、来年11月に迫った大統領再選に向けて外国の選挙介入を促す行為であり、クリントン大統領の弾劾とは深刻さが違うといえるだろう。

そしてもう1件、弾劾には至らなかったがトランプ大統領の場合と似通っているのが、ニクソン大統領の辞任だ。その原因となったウォーターゲート事件とは、ニクソン大統領の指示で再選委員会がウォーターゲートという建物にあった野党民主党の本部に情報を盗みに入り、その犯人たちに再選委員会の選挙資金からカネが流れていたことが明るみにでて、米議会が弾劾へと動いたものだ。

ニクソン大統領の場合、まだ下院の司法委員会で、弾劾に値する行為かどうかを審議している最中といタイミングで辞任が発表された。ニクソン大統領自ら隠蔽という違法行為を命令する声が録音されたテープが公開され、弾劾裁判を行うはずだった上院の上層部からここまで明確な証拠があっては「かばいきれない」と三行半を突きつけられ、自ら辞任の道を選んだので、弾劾には至っていないが、大統領再選を眼の前にした違法行為とその隠蔽という点で、トランプの弾劾訴追と似ている。

▲写真 ニクソン元大統領 出典: Wikimedia Commons; White House Photo Office

弾劾訴追を発表したナンシー・ペローシ下院議長は、決議はしたものの上院での弾劾裁判の過程がしっかり決められるまでは提出できないと匂わせている。弾劾裁判に当たってはジョン・ロバーツ最高裁首席判事が立会い、上院議員は陪審員として「公平に全ての証拠を鑑み有罪か無罪を決める」と誓約しなければならないのだが、ミッチ・マコーネル上院議長は既に「ホワイトハウスと全面的に協力し、最短の審議で弾劾裁判を終わらせる」と公言しており、公平な陪審員ではないことを認めてしまっている。

トランプは支持者(だけ)が集まる選挙運動集会やツイッターで相変わらず威勢のいい暴言を吐いているが、弾劾裁判にはハンター・バイデンや匿名の告発人など、関係ない人物を召喚して吊るしあげたいようだ。だが、証人を呼ぶとなれば、ウクライナ大統領との取引の場にいた前国家安全保障問題担当補佐官のジョン・ボルトンや、首席補佐官代理のミック・ムルヴェーニー、さらには今もウクライナを飛び回って、トランプのライバルについてのスキャンダルを嗅ぎ回っているルドルフ・ジュリアーニ施設弁護士らを呼ばない理由はないだろう。

年明けには弾劾裁判をどう行うかですったもんだが始まり、どうなろうと弾劾裁判が実際に行われれば、共和党が過半数を握る上院でトランプ大統領が罷免される可能性は薄い。ただ、長引いた場合、支持率にどう影響が出るのかが注目される。

写真:トランプ大統領 出典:The White House


この記事を書いた人
大原ケイ英語版権エージェント

日本の著書を欧米に売り込むべく孤軍奮闘する英語版権エージェント。ニューヨーク大学の学生だった時はタブロイド新聞の見出しを書くコピーライターを目指していた。

大原ケイ

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