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.国際  投稿日:2020/3/4

トランプ選対、NYT訴える


古森義久ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

 

【まとめ】

・トランプ選対、名誉棄損、報道の偏りでNYTに対し訴訟。

NYTは約60年、大統領選挙で民主党候補支援。

NYTは報道の自由を保障されたジャーナリストの抑圧と反論。

 

アメリカのトランプ大統領の再選を目指す「トランプ再選運動本部」が2月26日、大手紙のニューヨーク・タイムズをトランプ氏に対する名誉棄損の罪で正式に告訴した。同紙が過去の長い年月、一貫して民主党候補を支持してきたこともニュースメディアとしての極端な偏向を示すとして、同本部はその報道や評論の偏りに対しても訴訟を起こした。

 

ニューヨーク・タイムズなどのアメリカの大手メディアは一致して、反トランプ、親民主党の論調を打ちだしており、今回のトランプ陣営による訴訟がその基本構図にどう影響するかが注視される。

 

トランプ再選運動本部がニューヨーク州最高裁判所に提出した民事の訴状は以下の主張から構成されていた。

 

(1)ニューヨーク・タイムズの2019年3月27日付が掲載した同紙元主筆で長老記者のマックス・フランケル氏が書いたコラム記事が事実に反し、トランプ大統領とその再選運動本部に多様な被害を与えた。

 

・現在89歳のフランケル記者が書いたコラム記事は『本当のトランプ・ロシア交換条件』という見出しで、2016年の選挙ではトランプ陣営とロシアのプーチン独裁態勢の間にはロシア側のヒラリー・クリントン候補を不利にする工作と引き換えに新トランプ政権がロシアの好む政策を取るという約束があり、トランプ陣営自身もそのことをよく認識していた』と報じていた。

 

・トランプ再選運動本部のジェナ・エリス弁護士はこの記事に対して「その内容は100%間違いであり、中傷だ」として、ロシア疑惑について調査したモラー特別検察官の報告書が出る1ヵ月前の時点で、ニューヨーク・タイムズ自体がその疑惑に実態がないことを知っており、フランケル記者の記事はトランプ大統領の評判を傷つけ、再選への活動に阻害を与えることを意図していた、と主張した。

写真)ヒラリークリントン氏

出典)Flickr; Gage Skidmore

 

(2)ニューヨーク・タイムズはトランプ氏に対して一貫して極端な偏見と憎悪を抱き、同氏の2020年の大統領選での再選を阻むために事実に反する中傷的な記事類を載せることでその選挙に影響を及ぼそうと試みてきた。

 

・同紙は2016年の選挙でもクリントン候補を公式に支持する一方、トランプ氏に関しては事実に反する報道を続け、一般有権者たちのトランプ評をきわめて悪くすることに全力を投入してきた。

 

・同紙はクリントン候補を単に支持するだけでなく、同候補への投票を一般読者に呼びかけるような実態の報道や論評を2016年の大統領選キャンぺーンの期間、継続することによって、異常に強い党派性の偏向を露呈してきた。

 

(3)ニューヨーク・タイムズは長年にわたり共和党非難、民主党支援の基調を保ち続けてきた結果、トランプ非難で示したような偏向が通常のあり方となってしまっている。

 

・同紙はここ60年ほどの間、大統領選挙ではすべて民主党候補を支援してきた(社説でどの候補を支援するか表明する)。

 

・同紙は同様にここ60年ほど大統領選挙ではすべての共和党候補に批判的なスタンスを取り、客観性をまったく欠いてきた

 

以上の趣旨のこの訴訟は究極的にはニューヨーク・タイムズに対して損害賠償を求めてい

た。

 

同紙はこの訴訟に対して「トランプ選対は米国の報道の自由に保障された個人のジャーナリストの意見表明を抑えこもうとしている」と反論し、法廷で戦う構えをみせている。

 

現職の大統領の選挙母体が有力新聞を名誉棄損にせよ正面から訴訟の対象にすることは珍しく、訴えでの争点もアメリカの政党とメディアのあり方や2大政党制の実態ともからんでおり、今後のこの訴訟の行方が注目される。

 

 

トップ写真)トランプ大統領を取り上げたNYT記事

出典)Flickr:Steam Pipe Trunk Distribution Venue

                  


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