「検察官の定年延長、問題なし」衆議院議員山下貴司元法務大臣
細川珠生(政治ジャーナリスト)
「細川珠生モーニングトーク」2020年3月7日放送
Japan In-depth 編集部(油井彩姫)
【まとめ】
・一昨年秋頃から、国家公務員法改正で一般の公務員も定年が65歳まで延長されるという法案が検討されることになった。
・検察官も、国家公務員法に定める定年退職の特例の適用があるという解釈を改めて整理した。
・森雅子法務大臣『口頭決裁』発言について、決裁を口頭でやる場合はある。
今週のラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」では、元法務大臣の山下貴司衆議院議員を迎え、検事長の定年延長の問題について、政治ジャーナリストの細川珠生が話を聞いた。
検事長というのは各高等検察庁のトップである。東京高等検察庁の黒川弘務検事長が2月に検事長としての定年63歳を迎えたにもかかわらず、その後も延長しており、法的根拠が国会で取り沙汰されている。
山下氏は、「法律上どうなのかという問題と、個別人事でどうなのかという問題に分けて考える必要がある」と述べ、検察官の身分について説明した。
検察官は一般職の国家公務員にあたる。しかし、国家公務員の一般法である国家公務員法とは別に、戦後まもなく制定された特別法として定められた検察庁法が適用される。
又、元々国家公務員には定年制がなかった。ただ検察官の定年については検察庁法により、検事総長が65歳、検事長などその他の検事は63歳で退職するのはその年齢になった誕生日、と定められていた。
一方、一般の国家公務員は昭和50年代半ばから60年代にかけて定年退職制度が設けられるようになり、条文で、一般の公務員の定年年齢は60歳、退職日については定年になってから最初に迎える年度末、3月31日となった。
検察庁法において定年年齢と退職日がはっきり定められており、それが特例となるので国家公務員法の適用がないのは明白だ。それなのになぜ今回の問題が起きたのか、細川氏は聞いた。
山下氏は、今回の論点は国家公務員法の中の、定年による退職の特例という条文にあったとして、次のように説明した。
「職務の特殊性や職務の遂行上特別な事情がある場合などに、原則1年以内最長3年以内で退職延長ができるという条文が加わっていた。この定年による退職の特例、つまり退職延長については、検察庁法に特段の規定がなく、検察官に適用がないとも書いてないので、条文上でははっきり決められない。」と述べ、この部分に解釈の余地があったとの考えを示した。
また、本来検察官に適用される検察庁法を所管する法務省が明確な解釈を打ち出すべきだったが、これまでそれをしなかった点を、山下氏は付け加えた。
▲写真 ⒸJapan In-depth編集部
この問題はどういう方向にまとまりそうなのか。
山下氏は、「私が法務大臣だった一昨年秋頃から、国家公務員法改正で一般の公務員も定年年齢が65歳まで延長されるという法案が検討されることになった。そこで元々検事総長が65歳と定めていた検察庁との解釈を整理することとして、私も法務大臣として個人的な意見を練っていた。本国会で提出を目指して、内閣法制局や人事院、内閣人事局などの関係部局と改めて法務省が協議し、検察官も一般の公務員と同じように国家公務員法に定める定年退職の特例、つまり退職延長の適用があるという解釈を改めて整理したことになっている。」と述べ、検察官の定年延長は実質的に可能だとの考えを示した。
これに対し細川氏は、「今後も正当な理由があれば、他の高等検察庁などでも定年延長される検事長が出てくると考えていいのか」と聞いた。
山下氏は、「もちろんある。検事の同期の中で、または前後の期で2人優秀な人材がいるときに、誰か1人だけにはじめから限るのはなかなか難しい。だからそういう場合には(定年が)延長されることはあり得る」と述べた。
ここで細川氏が森雅子法務大臣の『口頭決裁』発言が国会の混乱に拍車をかけている点を指摘した。
山下氏は、「決裁という言葉の使い方に問題があった。例えば、法務を確定し閣議を求める時は当然、決裁だ。ただ、法律を作る過程の中で関係省庁と解釈を整理する場合は、行政機関の意思決定だから、そこまで重いものかと言うとそうではない。その場合には、私はこの前の国会では了解、という言い方をしたが、決裁を口頭でやる場合はある」と述べ、森法務大臣の発言は問題ないとの考えを示した。
また、山下氏は自身が法務大臣の時、大臣答弁について関係省庁と考え方を整理する際に、いちいち書面を作るのに睡眠時間を削るようなことはやらないように、と官僚に伝えていたエピソードを明かした。
細川氏は、「森大臣が言う口頭決裁と山下さんが言う了解は同じことか?」と聞いた。
山下氏は、「そこは森大臣に聞いていただきたい」と述べた上で、「法務省は、行政機関の意思決定、例えば法案の確定など、行政行為ではしっかりとした決裁手続きを取っている」と述べるにとどまった。
これを受けて細川氏が、「言葉の使い方ひとつで受け止め方、解釈、理解は変わる。正しい言葉の使い方は非常に重要だ。」と述べ、森法務大臣の資質に疑問を呈した。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2020年3月7日放送の要約です)
「細川珠生のモーニングトーク」
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文中誤りがございましたので、以下の通り訂正させていただきました。大変申し訳ございません。
訂正:2020年3月13日13:55
誤 口頭決済
正 口頭決裁
誤 総務大臣
正 法務大臣
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。