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.政治  投稿日:2020/6/17

都知事選「町田や八王子にサテライトの都市基盤整備を」小野泰輔候補


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

編集長が聞く!

Japan In-depth編集部(淺沼慶子)

【まとめ】

・人気投票やキャッチフレーズだけで決めるのではなく、東京の将来像をどれくらい丁寧に議論するかが重要。

・コロナ後の東京の構造をどう変えていくのか、給付問題やオリンピック、育児などに関して政策は多岐に渡る。

・現職の争点は業績評価、4年間の総括をすべきだ。

 

コロナやオリンピックなど差し迫った課題が山積みの中、いよいよ7月5日に投開票が迫った東京都知事選挙。今回は日本維新の会推薦の立候補者で、元熊本県副知事の小野泰輔氏に話を聞いた。(6月16日インタビュー実施)

まず、元熊本県副知事という経歴を持ちながらも、出馬の意思を固めた理由を尋ねた。

 

小野氏: まず、生まれ出身は東京というのがベースにある。大学の恩師が知事になったため12年間熊本に手伝いに行ったが、ちょうど今月任期が終わる。次に何をしようかと考えていた時、この無風状態で終わりそうな東京都知事選挙を、しっかりと議論が巻き起こるようにしなければいけないな、と(感じた)。一方で、既存政党が小池氏が強すぎるということで誰も挑戦ができない。このまま終わってしまったら、コロナの後どうするのか一生懸命考えなければならない中、東京にとっても日本にとっても禍根を残すだろうな、と。私が手を挙げるしかないと思い、挑戦した。

安倍: 非常にビッグチャレンジだと思う。東京や大阪などでは、人気投票的な側面も強い。そこに敢えて挑む中で、悩みはなかったのか。

小野氏: 直感的に降りてきた。これは東京都知事だな、と。今まで東京都知事という選択肢はなかったが、ちょうど自分の任期が終わるとき、コロナウイルス対策のために熊本にあと1年残ってくれと知事から言われていたが、色々と考えていた時、突然自分の頭の中に都知事選挙というのが入ってきた。直感的なものだった。

安倍: 政策の4本柱のうち、一番これは変えていきたい、というのはどれか。

小野氏: 東京のコロナを受けての変容、東京の構造をどう変えていくのか、だ。

今回の私のテーマは、東京の将来像を議論する選挙にしたい、という思いがある。キャッチフレーズだけで選択するような選挙にはせず、どれくらい丁寧に議論するかを都民の皆さんに聞いてもらいたい。今までキャッチフレーズで選んで失敗してきた選挙が繰り返されているが、候補者が何を言っているのか、どういうビジョンを持っているのかを聞いて判断して下さい、ということも伝えたい。

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部

安倍: 感染症の脅威がなくならない中、これだけの巨大都市で人の往来も多い。東京はどう備えていくべきか。

小野氏: 都心に毎日電車で流入する構造になっているが、東京にも町田や八王子、立川などそれぞれの地域が存在する。そうしたサテライトの都市基盤を整備し、ある程度近郊のところに働けば、本社と繋がることで仕事ができるようになる。

働いている子育て中の女性においても、都心まで行くのに地元の保育園に預けてから行くのは大変だが、自分の近いところで核となるコアスペースやサテライトの横に子育て施設が併設されれば、働きやすいと思う。介護もそうだ。暮らしやすく、分散できる都市構造を東京が作る、ということを喫緊にやらなければならない。

安倍: 一極集中、首都機能移転に関しては、長年議論されてきた。将来的には一部機能移転なども考えているか。

小野氏: やはり分散化が必要だと思う。私も熊本地震を経験したが、同じ震度7が今の状態の都心で起これば、逃げ場がない。これだけの昼間人口がいて、高層ビルに(人が)入っている。地震になると皆平面に出てくる上、エレベーターも止まる。そうなると逃げ場はない。だから分散化は重要だ。

そして、働き盛りの人が子育てや介護など色々な課題を抱えている。(暮らしの)負担が少ない形で可能になるような街の構造を分散型で実現する、ということを今考えるべきだ。

安倍: 災害対策について。東京は災害時の物流や木密、電柱、歩道橋など様々な課題を抱えている。ひとたび何かが起これば完全に道路は麻痺してしまうが、この現状は変えることができるか。

小野氏: 今まで変えられていなかったと思う。開発も都会を優先し、容積率の緩和や投資の呼び込みをこの十数年やってきたと思うが、その発想も変えて都心部の超高層はやめるなどの誘導策や、周辺の開発を進める。

今までは都心部の開発ばかりやってきた。そこの付加価値を高めるために限られた土地で高層化して高い賃料を稼いできたが、コロナで(オフィスなどに)空きが出るため、それが出来なくなる。今度は大手デベロッパーが町田や八王子など周辺を、生活者が距離的に暮らしやすいスケールで、機能的にも足りる都市作りを行うべきだ。

そうすると真ん中(都心部)が空く。シンガポールや上海が過密化して家賃も高くなる中、例えばアジアの金融センターやAI、最先端の海外の企業を引っ張りこみ、特区扱いするなどもあり得る。また、非日常で集まる場所として文化や芸術などで空いたスペースを贅沢に使うことも議論している。

安倍: 働くお母さんの仕事や子育てのし辛さがある中、どのように女性有権者の支持を集める考えか。

小野氏: 保育の充実が必要だと思う。シッターわいせつ事件も皆さん気にしているが、イギリスで言う犯罪歴や性犯罪の傾向をチェックする仕組みや、他にも保育士の待遇改善は当然必要だ。園から裁量で渡すのではなく直接給付できちんと渡るようにするなど、働いている人が続けられるようでなければならない。

他には職場と隣接するようなサテライトに(保育園を)併設をするのであれば、働く人の中でも保育士を補助したり、ローテーションでやるなど、物理的に足りないものを補う工夫が必要だ。私の妻も保育園の手伝いに入っているが、そういったこともやればいいのではないか。

都が認める無認可施設も良いと思う。安全性は配慮しなければならないが、国の基準ではなくて都がもう少し柔軟に考えて無認可を応援していくこともあるのではないか。

安倍: 政策によっては国との調整も必要だと思うが。

小野氏: 言いっぱなしでは良くない。私も行政で長くやっていたが、議論をしっかり組み立てていきたい。

安倍: 日本維新の会と国民民主党との間で「新しい国のかたち分権(2.0)協議会」が開かれ、いわゆる第三極の動きも出てきている。日本維新の会との関係をどのように保っていくか。

小野氏: 大阪だと堂々と維新と言えるが、東京だとなんで維新からなんだ、という声もある。このあたりは維新の全国政党に向けての課題だと思うが、私がどう乗り越えるか、維新ともしっかりやっていきたい。支持政党が維新ではないが私を応援して下さる方もいらっしゃる。このバランスをどのように取るか、悩み続けている。

もちろん政策協定において、都知事選に向けて維新としっかり合意ができている。維新の支持者は私は維新でいいじゃないかと仰るし、維新と違う立場の方はなぜ維新なんだと仰る。私はそのどちらの票も獲得しないと勝てないと思う。

安倍: 都知事になった場合、議会との関係性をどのように考えるか。

小野氏: 基本的に1つ1つの政策に対して、各党と等しく話し合いをしていく。自民党はじめ他の政党に対して政策ベースで議論をしかけ、真っ正面から提示し説明していく。

安倍: 小池さんは劇場型が得意な方であり、自分で政党まで作り、都民ファーストの会という小池チルドレンを作った。全くの無名の普通のママさんでトップ当選した人もいる。そういった風も吹いたが、自分の色を持った都議を増やす手法はとらないのか。

小野氏: 例えば無名の主婦の方が長年やってきた方を追い落とすというのは、確かに有権者やメディアから見たら胸がすくようなものかもしれないが、政策単位で政治家と向き合って議論していくというのが本来の議会と首長のあり方だと思う。二元代表制なので。

都合の悪い人を追い落として、自分にとって上手くいくような人を立てるのは王道ではない。基本的には政策ベースで議論をし、相手方がこちらの執行部がやろうとしていることに反対したときも議論のプロセスをオープンにして、一体どこが合意できないのか明らかにすればおのずと妥協点が見つかると思うし、そうでなければ膠着状況を見て都民がどう判断するか、選挙で明らかになる。

安倍: 都議には、反自民で勝ち上がってきた若い都民ファーストの議員もいる。話せば分かるかもしれない。

小野氏: 都民ファーストの中でも小池氏のやり方で良いのか迷っている人や、独立会派もいる。突貫工事で作った政党だから、政治家1人1人としての思いがどこにあるのか考慮されずに勢いでいった政党でもあると思う。その後、4年間政治活動する中で自分のスタイルや考えが出てきているから、その信念に従って行動してもらえれば、何でも反対するのではなく合意点は見つかると思う。

安倍: 弱者の味方と主張をする山本太郎氏が出馬した。一定数のポピュリスト支持層もいるが、そうした支持層にはどう対応するか。

小野氏: 「ばらまき」ではあると思う。(一律)10万円は困窮している方にとってはありがたいことだと思うが、他府県ではそこまでできない。他府県と比べてなぜ東京だけ出来て、なぜ東京にとって優先事項なのか、果たして全日本的に説明できるのだろうか。もしそれをやるのであれば、政府がもう1回10万円給付しようと言うべきだと思う。かなりの都債を発行して行うものであり、砂漠に水まくようなもので終わってしまう可能性もある。

セーフティネットでは10万円配るだけが全てではなく、仕事を失ってしまった人や残念ながらお店を閉めざるを得なかった人にどう再チャレンジの機会を与えるか、というやり方もあると思う。こちらの方が東京が変わっていき、それに合わせて新しい人生の再チャレンジができるという意味で、使った方がいいと思う。

3密を避けるために都心のお店では客の半分しか入らない、東京アラートなどでマインドもすぐには戻らない中、10万円を配っても問題が先延ばしになるのみで根本的な解決には至らない。15兆円あれば何かできるのではないか。都内で商売している人も、元通りの売り上げが戻るのは相当先になる。であれば新しい可能性を求めて再チャレンジできるお金を投資するなどの方がよっぽど将来があると思う。

山本氏の発言はメッセージ力はあるが、そういう政治を今まで続けてきた結果どうなったか、思い出してほしい。

安倍: 小野氏は2024年にオリンピックをもう一度、と述べているが、どういう意図か。

小野氏: 山本氏と宇都宮氏の最大の弱点は五輪をいきなり中止と言っている点だと思う。だが、これでは投資が全て損失になってしまう。1年延期する現状の案も、今の感染状況を鑑みると、ワクチンなど根本的な解決策がなければ来年はかなり厳しいと思う。4年後であれば、ある程度対策が出来ており、一生懸命投資したものも活かせると思う。

先ほどフランスの記者と外国特派員協会で話したが、フランスもコロナ渦で全然準備ができていない。(2024年の五輪はパリでの開催が決定しているが)フランスの記者のアイデアで、共催もあってはいいのでは、と言われた。その方が現実的ではないか。1年後に部分開催しても相当縮小してしまったらあまり意味がない。4年後というのをIOCなどに訴えていくのもおもしろいのではないかと思う。

ラグビーワールドカップが熊本にも来たが、投資額よりも大きな経済効果があった。ワールドカップ同様に、オリンピックも1つの都市だけでやるのではなく、分散型にすれば投資の無駄も防ぐことができ、経済効果も広がり、テロや感染症のリスク抑えられる。

オリンピックの負担は大きく、ロサンゼルスの次の開催地に(どの都市も)手を挙げなくなっている。今後はオリンピックもワールドカップと同様に、持続可能な分散型で、既にスタジアムがあるところで開催することも考えていいのではないか。

安倍: 都政とはさほど関係ないが、安全保障の問題についてどうお考えか。

小野氏: 日米関係は当然重要だと思う。今は米中のつばぜり合いもある。米国に軸を置きつつ、摩擦を上げていくような方向ではなく調整していくという意味合いで、日本の果たす役割も大きい。このような形で現実的にやっていくべきだと思う。

安倍: テロ対策について。東京はテロに脆弱な都市ではいけない、安全安心は非常に重要だ。

小野氏: 脅威にさらされる可能性が増えてきているが、決定のプロセスをきちんと記録しておくことはやるべきだ。危機が起こった際には切り替えられる制度を整備しておく必要がある。

安倍: 都心の混雑緩和についても対策を打っていきたいところだが。

小野氏: 究極的には私が申し上げた分散型が効くと思う。小池氏が仰った二階建て電車で解決するはずがない。鉄道会社にも適正乗車で利益が出るようにできているのか、聞きたい。

安倍: 郊外型のサテライトシティも良いのでは。

小野氏: 大宮からわざわざ東京に仕事に来るのではなく、地元で仕事が済むことは暮らしや混雑緩和、災害リスクにも良い。

そこにおいて、広域に近隣との連携が必要になる。埼玉や千葉と連携し、逆に東京の方から仕組み作りの手伝いをすることもあるかもしれない。他県だけに任せても進まない。小池氏も同様のことを言っているが、本当に実行できているのかどうか。

安倍: 最後にIRについて。IR=カジノとほとんどの人が誤解している現状、IR招致は火中の栗を拾うことになりかねないと思うが?

小野氏: 魅力的な都市にはIRはある。今厳しく追求されているのはプロセスの問題だと思う。プロセスを透明にすることが一番大事だと思う。経済の起爆剤になるということは認識している。世界中ではIRを魅力に旅行をする人もいるから、(IR招致は)街の魅力を高めることにも繋がるのではないか。

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部

安倍: 都知事選挙の争点はやはりコロナ、オリンピック、過密、防災になってくると思う。

小野氏: 小池氏が新しいことを言ってもだめだと思う。現職の争点は業績評価だ。業績としてどこまで出来たのかご自身で説明しないと、都民も納得しないと思う。その点はしっかりやって頂きたい。

トップ写真:ⒸJapan In-depth編集部


この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト、産業能率大学客員教授。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。


1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。


1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。


2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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