仏、マスク反対運動の実態
Ulala(ライター・ブロガー)
【まとめ】
・仏、コロナ感染拡大でマスク着用が義務化。違反者には罰金も。
・マスク反対派には、陰謀論信者とワクチン反対派が多く存在。
・反対集会の中心は自由を呼びかけるコミュニティーと「黄色いベスト運動」。
フランスでは28日(金)、新型コロナウイルスの新規感染者数が7379人という過去最高の人数となり、フランスの保健省の保健総局(DGS)は、「流行の進行の力は指数関数的だ。」とし、止まらない増加に注意を呼びかけた。この状況を受け、28日よりパリを筆頭に海辺の町など人が集まる多くの街の全域で、屋外でもマスク着用が義務となった。違反すれば135ユーロの罰金が科される。
しかし、そのような状況の中、マスク着用義務に反対する人々がいる。29日(土)に向け、SNS上でフランス各地で「マスク反対集会」が呼びかけられた。パリの集会には200人~300人が集まり、「自由を、自由を!」と声をはりあげ強制的にマスク着用が求められていることを非難したのだ。
マスク反対運動はアメリカで生まれ、欧州ではドイツで活発に活動が行われている。現在、スペインでも開催され、フランスでも運動が徐々に成長しつつある状況だ。しかしながら、実際のところは、それなりにフランス人は規則に従ってマスク着用の義務を守っている。では、フランスでマスク着用に反対している人はいったいどういった人物像なのであろうか?人物像をさぐるために、今回グルノーブル政治学院の社会科学のアントワーヌ・ブリスティエル准教授が調査を実施した。
マスク着用を反対する人々の人物像
ブリスティエル准教授が実施した調査によると、マスク着用反対についての回答者の平均年齢は約50歳。63%が女性だ。そして、高い社会的カテゴリーに所属している人が多く、回答者の36%は管理職。そして、主な特徴として、政治的組織、メディアに強い不信感を持っている。例えば、大統領を信頼していると答えた人は6%。政党には2%、労働組合には10%と、政治的組織への信頼度が極端に低い。
また、マスク反対者にイルミナティや、移民によってフランスが乗っ取られるというような代替理論に関することを質問すると、半分以上は同意する。例えば、保険省がワクチン産業の危険性の現実を隠すために製薬業界が交渉していると思うか?と尋ねると、90%が同意する。
この調査結果からは、マスク反対派には、陰謀論信者とワクチン反対派が多く存在していることが見えてくる。
パリの反対集会に集まった人々の人物像
29日のパリで行われた集会についてはどうだろうか。詳しく見ていくと、この集会はfacebook内の2つのコミュニティーの告知により集まったと思われる。一つは、マスク着用を強制されることに反対し、自由という権利を守ろうとする呼びかけるコミュニティー、もう一つは、「黄色いベスト運動」のメンバーによるイベント告知だ。
▲写真 黄色いベスト運動 出典:Flickr; Christophe LEUNG
「マスク着用を強制」されることに反対しているグループでは、自分たちを従わせるために権力を乱用し、自由を奪うことに抵抗しているグループだ。政府を「恐怖で人々を操る」ことや、いくつかの大都市で「科学的根拠なしに」マスク着用義務を課したことを特に非難している。「バクテリアの巣になっているマスクのために多くの人が病気になっている」と主張し、「政府がこの強制という考えを手放すまで行動し続ける」と宣言している。
「黄色いベスト運動」のメンバーによる集会の告知には、「我々の自由という権利を主張するために、独裁に反対し、国家とメディアの嘘に反対する!!!」と主張されている。「黄色いベスト運動」の指導者の一人であるマクシム・二コル氏も、自らの動画などでマスク着用反対の立場をとっていることにも影響を受けているようだ。この集会を、第一回目として黄色いベスト運動のように今後も続けていきたいという意見もあったが、今後はどうなるかは未知数である。
しかしながら、集まった全員が同じ思想の持主かといえば、そうでもなさそうだ。中には、「マスクは、課税しないで国民に金を支払わせるための正当化だ。」とマスク着用の反対をうったえている人もいるが、一定距離を取ればマスクは必要ではないという考えでマスク着用を非難している人もいる。一方、流行は存在していないという考えが前提でマスク着用に反対している人も含まれている。各自それぞれの理由で、マスク着用を反対する人々が集まっていることが理解できるだろう。
現在のところはフランスではマスク反対派は少数派
最終的にはパリのマスク反対集会には200人~300人が集まったが、しかしながら、この集会に駆け付けた警察隊によりマスク不着用のため罰金の135ユーロを徴収されたのは123人に過ぎなかった。集会自体に集まった人数も少数だったが、実際、主催者が最初に呼びかけた「みんな、マスクをはずそう!」という掛け声を受け、マスク反対のためマスク不着用を続けたのはその約半数に過ぎなかったようである。もちろん、警察に声を掛けられる前にその場を去った人もいるだろうが、中には集会中にもマスクを着用し続けていた人もいた。また集会に参加したほとんどの人がマスクを携帯しており、すぐに着用できたのである。
浮かび上がる人物像や、集会での状況をみれば、今のところマスク反対派はかなり少数派でありそこまで強固でもない。メディアでは今後ももちろん反対派の活動を取り上げるだろうが、現時点でのフランスではマスク反対派による影響はそこまで大きくはなさそうだ。
参考資料:
SAMEDI 29 AOÛT : GJ ANTI MASQUES PLACE DE NATION À 13H – 18h
MANIFESTATION pour la PROTECTION de NOS DROITS ET LIBERTÉS
Coronavirus, anti-vaccins, fan de Raoult ? Qui sont les “anti-masques” en France ?
Caen. Une quarantaine d’« anti-masque » manifestent dans le centre-ville
Les anti-masques organisent leur “acte 1” samedi en France
“C’est une masqu-arade” : comment les anti-masque tentent de prendre pied en France
トップ写真:マスクをした子供(イメージ) 出典:heidi.news
あわせて読みたい
この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー
日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。