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.国際  投稿日:2022/7/4

仏、例年と違うバカンスシーズン


Ulala(著述家)

フランスUlalaの視点」

【まとめ】

・大規模スト、物価高騰などフランスの今年のバカンスシーズンにはいくつかの困難が伴う。

・病院はひっ迫していないが、コロナ新規感染者数も再び増加し始めている。

・どんな障壁があってもフランス人のバカンス熱が冷めることはない。

 

7月に入り、フランスでは本格的なバカンスシーズンがはじまった。しかし、今年のバカンスはいつもよりもいくつかの困難が伴うバカンスとなっている。

■ 空港職員による大規模なストライキ

まず、本格的バカンスシーズンの幕開けとなる7月最初の週末、パリのシャルルドゴール空港では空港職員による大規模なストライキが行われた。この結果、1300便のうち150便が欠航となったのだ。空港のカウンターには、チケットを変更するための長い列ができた。

それだけではない。前日の金曜日には、機器の故障のため荷物を機内に運び入れることができず、乗客の半数が預けた荷物と一緒に離陸できなかった問題もあり、シャルルドゴール空港は大混乱の週末となったのだ。

今回のストの目的は1月1日からの6%の賃上げだ。新型コロナの感染拡大で飛行機の利用者が減ったときに、従業員は5%の減額を受け入れた。しかも、現在、従業員の人数も減っている状態で気が付けば3人分の仕事をしていることもあるという。人員不足で仕事量も増えていることもストの大きな理由であり、今回の要求は減額分を元に戻すことと、物価の高騰に対応した賃金の増額だ。

しかしながら、経営者側や旅行会社などからはこのストに対して非難の声もあがっている。コロナの流行で観光客が減り、航空会社や旅行会社は、経営的に苦しい2年間を送ってきた。その苦難を乗り越えようやく今年は本格的な活動ができるようになった矢先のストだ。一部にはストをやっている従業員を「その時期ではない」と非難する人もいる。しかし、下請け業者も含め、従業員側は現時点では一歩も引く姿勢を見せてはいない。

最終的に土曜日のストは1時間ほどで終了したが、学期が終わる週末の7月8日からのストも現在計画されている。この夏のバカンス期間中は、このまま断続的にストが行われる可能性もあるので注意したいところだ。

■ 物価高騰で費用がかさむバカンス

コロナの影響やウクライナの戦争の影響で、ありとあらゆる物価が高騰しており、今年のバカンスは、費用がかさむバカンスとなっている。

ストが多い飛行機や電車を回避して自動車でバカンス先に行ったとしても、ガソリン代の高騰で費用がかさむ。食事をしようにも、全ての原材料価格が高騰しているため例年より割高だ。また、バカンス客の増大を受けて、宿泊先の料金も場所によっては値がつりあがっている。一つ一つを見ればそこまでインパクトのある額ではないとしても、これらが積もり積もればそれなりの額になる。

INSEEによれば、「9月のインフレ率は7%弱」と予測しており、その後、2022年末までに6.5%から7%の間で安定し、年平均5.5%になるとしている。このバカンス時期が一番、インフレの影響を大きく感じる時期であることも間違いないだろう。

■ コロナ第7波、現時点で病院はひっ迫していない

2年間のコロナの流行で多くのことが禁止となったり自粛させられたりしてきたが、いまだにコロナは収束しておらず、フランスでは現在、新規感染者がまた増加し始めている。

先週は新規感染が8万件だったのに対し、7月1日には24時間で12万5066件の感染が確認された。発生率は6月20日から26日の週に53%増加し、その前の週が29%だったのにもかかわらず急激に増加している。しかし、6月20日から26日の週の新規入院の増加は19%で入院患者数は増えているものの、現時点ではそこまでは病院を圧迫していない。

現在、フランスでは、6月13日以降、オミクロンのBA.5が59%と過半数になり、BA.2に代わり主流になりつつある。BA.5は、伝染性が高く、それが第7波の原因となっていることは間違いなく、今後も新規感染者数が増加していくことになりそうだ。バカンス先でも最低限の警戒をしたいところである。

■ それでも尽きないフランス人のバカンス熱

しかしながら、今年はこれだけバカンスに行くのに障壁があるのにもかかわらず、バカンス客の足が遠のくなどの影響は与えていない。コロナに至っては心配する人はほぼ皆無に近い。フランス人にとってバカンスは何よりの薬。目の前にどんな障壁があっても、バカンス熱が冷めることはなさそうだ。

 

<参考リンク>

BFM.TV:<Covid-19: situation “plutôt calme” dans les services de réanimation, malgré le rebond épidémique:『新型コロナ:再流行も、集中治療室は「もの静か」』>

TF1 INFO:<Aéroports, SNCF… Ces grèves qui menacent les départs en vacances en juillet | TF1 INFO:『空港、SNCF… ストライキにより、7月の休暇出発が危ぶまれる』>

OUEST FRANCE:<Grèves, retour du Covid-19, pénurie d’animateurs… Les vacances d’été commencent mal:『ストライキ、新型コロナの再流行、人員不足…夏休みのスタートは最悪な状況に』>

20 minutes:<Grève à Roissy : Un vol sur cinq annulé samedi matin en raison d’une grève:『ロワシー空港ストライキ:土曜日の朝、5便に1便がストライキで欠航』>

franceinfo:<Grève : un vol sur cinq annulé samedi entre 7 heures et 14 heures à l’aéroport de Roissy-Charles-de-Gaulle:『ストライキ:土曜日午前7時から午後2時の間、ロワシー・シャルル・ド・ゴール空港では5便に1便が欠航』>

La CROIX:<Covid 19, la hausse des contaminations se poursuit:『新型コロナ、感染者の増加は続く』>

トップ写真:バカンスシーズンを迎えた仏・パリ(2022年6月18日) 出典:Photo by Kiran Ridley/Getty Images




この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

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